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神経科学がコーチングを促進し、コーチングが神経科学を促進する

【原文】The Science of Coaching | by Patricia Riddell and Ian McDermott
神経科学がコーチングを促進し、コーチングが神経科学を促進する
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過去6年間、私たちはコーチングと神経科学を組み合わせたワークショップを提供してきた。私たちのコラボレーションにより、結論としてコーチングと神経科学はよきパートナーであり、それぞれの分野が互いに大きく貢献できることが証明された。本記事では、これら2つの分野において相互に価値を高めていくいくつかの方法について、その概略を解説する。

私たちのあらゆる行動、感情および思考は、私たちの脳内の活動によるものだとすると、コーチングがもたらすいかなる変化も、脳内の変化に基づいているということができる。全ての効果的なコーチングは脳がベースとなって行われている。しかしながら、神経科学を理解すれば、なぜ特定のテクニックが効果的かを示すことができるし、またそのテクニックを実際の脳の働きに合わせ、テクニックを進化させることで、さらに価値を高められるのである。

神経科学がコーチングを促進する

神経科学がどのようにコーチングを促進するか、その一例は、神経可塑性とエピジェネティクスを深く理解することによって把握できる。脳が一生を通して変化することは一般的に知られている。しかし、それはたった一部の話である。そこには、具体的にそうなるような仕組みがあるという確固たる証拠が存在しており、単に私たちがラッキーだということではない。これを実証するメカニズムに関して基本的な理解が少しあれば、学習や変化における大人の可能性には限界があるとする定説を塗り替えることができる。年齢を30歳、40歳、50歳...と重ねていくことは坂道を下る一途、というわけでは全くないのである。

さらに、神経科学の研究では、新しい学びが起こる際の、経験の役割について具体的に示している。変化を起こすために何が最善の方法かを示しているのである。ある種の経験をしようとするときに、行動は変化する。私たちの脳は、何か違う行動を起こすときに新しい配線が繋がる。つまり、私たちが、新しい行動、思考パターンまたは学習スキルを繰り返すことを通じて自分自身の脳が形成されるのである。

神経科学はまた、新しいツールを作成し、既存のツールを改良することを通じて、別の方法でコーチングに貢献することができる。これは、私たちが脳の働きを理解することで可能になる。私たちが既存の役割、スキルまたは能力を利用している段階から、新たな選択肢を探求するようになる際に何が脳内で起きるのか。そのことを理解することが、人生の大きな変化に直面している人をサポートするために効果的な新しいコーチングツールの開発につながったのである。

同様に、脳が報酬や罰をどのように処理するのか、またそれがどのように意思決定に取り込まれるのかを理解することで、既存のツールをより効果的に改良することが可能となった。具体的に言えば、私たちは何が自分が幸せにするのかについて、明確には理解していないということを知っている。これを明確にすれば、周囲の人が自分の脳を最善の方法で働かせられるように、目標を再定義することが可能だ。

コーチングが神経科学を促進する

神経科学がコーチングの分野に貢献しているのと同様に、コーチングもまた神経科学に貢献することが明らかになっている。これを示す明白なケースがある。神経科学研究者と仕事をした経験から分かったことだが、彼らは脳の働きとその仕組みは理解する一方で、彼らが理解していることの意味合いについては全く無自覚である。そのため、自分たちの発見を人々の日常の生活を助けるための効果的なツールへと転化させることができないのだ。従って、コーチングスキルを理解することによって、現在の神経科学分野が、既存の「どうやって(how)」というメソッドに「なぜ(why)」というアプローチをどういうときにもたらせればいいのかが明らかになったのだ。

神経科学研究の「なぜ(why)」をコーチングの「どうやって(how)」に転化させることは、2つの分野のコラボレーションにとって重要なこととなった。それは、飛躍的に広がりをみせている神経科学のある分野において、探求する方向を決定づけるということにつながるからである。これにより、私たちは、「神経可塑性」「意思決定」「自己調整」「習慣の形成」といった、神経科学研究のより明白な分野に目を向けるようになった。また、このことによって、私たちが神経科学で扱っている「誇り」「敬愛」「同情」そして「マインドフルネス」に関する自分たちの理解について改めて考えるようになった。私たちは(神経)心理学のプラス面だけを考慮するのではなく、臨床神経学とストレスに関する神経科学も考慮することによって、現在の脳構造で、個人が最善の状態で働ける方法について理解を深めた。

コーチングスキルを知ることを通じて、私たちはコーチングに関する私たちの理解を興味深い方法で深める新たな文献を見つけることができた。たとえば、最近の神経科学研究では「共感」に関する人間の能力を探求しており、脳の側頭頭頂接合部(TPJ)が「共感」するために重要な部分であることが証明された。具体的には、脳のこの部分は、私たち自身の経験に関わる感情と、他人の経験の結果から得られる感情とを区別する。これらを区別できることで、私たちは他人に共感すべきときがわかるのだ。

この結果のひとつとしていえるのは、共感は外に向けられるものであるため、私たちは自分自身に対して共感しにくいということだ。これはコーチングと非常に関係深い。なぜなら、自分自身の問題を鏡のように映して見せることが、コーチングにおいて非常に効果的であるからだ。これは自分自身に共感するスキルを養う基礎となり、また内なる声のバランスを保つ助けとなる。

コーチ達も、これがコーチングからの恩恵であると理解していたかも知れないが、私たちの経験上、コーチそしてクライアントの両者に対してなぜ自分自身に共感することが難しいのかを伝えられること―またそこから自分自身に対してより共感できる方法を示すこと―それによって、自己共感のレベルに劇的な変化が表れるのだ。

筆者について

パトリシア・リデル氏は、応用神経科学の教授で、共著に『リーダーシップコーチングにおける神経科学(原題:The Neuroscience of Leadership Coaching: Why the Tools and Techniques of Leadership Coaching Work, 2015)』がある。

イアン・マクダーモット氏は長年コーチのトレーニングに従事しており、インターナショナル・ティーチング・セミナー(ITS)の創業者。コーチング、NLP、リーダー開発に関する著書多数。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】The Science of Coaching
(2018年1月2日にICFのCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。筆者の許可を得て翻訳・掲載しています。) 


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