Global Coaching Watch

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移行期にある世界のコーチング業界

移行期にある世界のコーチング業界

2018年4月、株式会社コーチ・エィの平野圭子が、国際コーチ連盟(以下ICF:International Coach Federation)よりコーチング業界の発展に貢献した人に与えられる Circle of Distinciton を受賞しました。Circle of Distinction の選出は、ICFが2017年に始めた新しい取組みです。

Hello, Coaching!編集部は、今回の受賞にちなんで平野にインタビューを実施。コーチ・エィの設立に携わり、ICFをはじめ世界のコーチたちと交流をもってきた平野ならではの視点で、ICFや現在の世界のコーチングの潮流について語ってもらいました。

ICFのコーチング資格

現在、世界のコーチの団体には、ICF以外にもいくつか大きな団体があります。平野さんはICFの理事を務めた経験もありますが、ICFの特徴はどんな点にあるのか教えてください。

平野 ICFは、世界のコーチング団体の中でもっとも歴史が古く(1995年設立)、「コーチ」というプロフェッショナル領域をつくった人たちが設立した組織です。したがって、ICFは「コーチングとは何か」「コーチとは何をする人か」ということを最初に明確に定義した団体だと言えます。また、コーチの認定制度を初めて設けたのもICFです。

現在はICF以外にもコーチの資格を認定している団体がありますが、それぞれの団体の資格に違いはあるのでしょうか。

平野 資格の「違い」と言えるかどうかわかりませんが、個人的には、ICFの認定制度は「コーチ・スペシフィック」という考え方に基づいていることに大きな意味があると思っています。ICFが定めた「コーチのコア・コンピテンシー」には、コンサルティングでもカウンセリングでもなく、コーチングに特化した行動様式とはどのようなものかが明確に示されています。ICFの資格は、そこに定義された「コーチ」としての行動様式を理解し、ふさわしいトレーニングを受けているかどうかを大事にしています。また、資格取得に際してはコーチングの実践に重きを置いており、100時間、500時間、2500時間など、資格のレベルに応じて一定のコーチング時間数を課していることも特徴かもしれません。

最近は、ビジネスをはじめ、医療業界、教育業界など、さまざまな分野でコーチングスキルを活かす人たちが増えています。コーチングが身近なものになってきているからこそ、ICFが「コーチのコア・コンピテンシー」に基づいて資格を認定していることや、コーチングの実践に重きを置いていることは重要だと考えています。

もう少し詳しく教えてください。

平野 人と人とのコミュニケーションは、ほとんどの仕事において欠かすことができません。中には、いわゆる「コーチングスキル」を自然に使っている人もいますが、だからといって、そういう人たちがコーチなのかというとそうではありません。コーチングは専門的な技術です。ティーチングでも、コンサルティングでも、カウンセリングでもありません。それが、「コーチ・スペシフィック」ということです。

このことは「コーチ」という専門領域を守っていくためにも必要なことです。日常のいろいろな場面でコーチングが活用されるようになればなるほど、「コーチングとは何か」を理解しているどうかは重要な意味をもちます。なぜなら、理解が不十分であれば、誤った使い方をして機能するものをうまく機能させられないということが起こり得るからです。それを「コーチング」と考えられてしまうことはリスクがありますよね。

Circle of Distinction とは

Circle of Distinction はICFの新しい取組みとのことでした。この取組みには、どういった意味があるのでしょうか。

平野 ICFを含め、欧米のコーチング業界全体がトランジション(移行期)を迎えていることが背景にあると考えています。

ICFが設立された当時は、「コーチ」という職業の黎明期だったので、ICFの活動の目的も「コーチたちがお互いに学び合う」「コーチングの概念を広く普及する」というものでした。それから20年以上を経て、コーチたちが直面する課題は確実に変化しています。

創設時は個人的なゴールの達成や取組みを支援する「パーソナルコーチ」を仕事として営む人がコーチ業界では主流でした。しかし、今ではビジネスをはじめさまざまな場面でコーチングが活用されるようになってきて、「互いに学び合う」というよりは、「コーチングにどのように付加価値をつけていくことができるか」ということに焦点が移ってきました。

「我々はこれからどこへ向かうのか」ということを考えるにあたり、自分たちがやってきたことを紐解き、この業界がどのように発展してきたかという軌跡を残していこうという試みなのではないでしょうか。

コーチ業界の変化については、いつ頃から感じていましたか。

平野 2012年まで、ICFは毎年コーチたちがお互いに学び合う場として年次総会を開催し、そこには世界中からコーチたちが集まってきました。2000年の初頭の総会には約1500人のコーチが参加していました。2012年に初めて米国外のロンドンで総会が開かれたのですが、あのあたりが一つの転機だったように思います。

個人的な印象ですが、全体で集まって学ぶということに、それほど価値がなくなってきたのではないでしょうか。コーチという仕事の揺籃期に学び始めた人たちと、新たに学び始めた人たちと経験の差が大きくなることで、求められるものが多様化したのかもしれません。

ただ、2017年には、また総会というスタイルが復活しました。ICFの会員、世界中にいるコーチやコーチングに関わる人たちにとってどのような場を提供することが意味をもつのか、ICF自体が試行錯誤しているのだと思います。「コーチ」や「コーチング」が社会的に広く認知されるものとなってきたからこそ、ICFはその存在の社会的意義を模索していると見ています。

日本におけるコーチング

Circle of Distinction 受賞の理由はどのようなものだと考えていますか。

平野 私個人ではなく、私が設立からずっと携わってきたコーチ・エィの取組みが認められたのだと思います。日本でのコーチングの発展に貢献してきたことに加え、コーチングに関する調査や研究に取り組んできたことが評価されたのではないでしょうか。選考時のインタビューでもその部分について深く聞かれました。

コーチングの機能や、どうすればそれを再現できるかといったことについて大量のデータに基づいて分析し、継続的に研究しているという点は、世界的な観点からも先進的な取り組みです。「コーチ」という専門領域の確立はアメリカが先ですが、最近では、学会などの発表の場に行くと、日本のコーチングのほうが進んでいると感じることがよくあります。

最後に、平野さんが「コーチ」という仕事をどのように捉えているかを聞かせてください。

平野 「クライアントとコーチ」というと、二人の違う役割をもった人が相対している印象を受けるかもしれません。たとえば「質問する人(コーチ)」と「考えて答える人(クライアント)」というように。しかし、コーチングで重要なのはコミュニケーションを交わす二人の関係性の中であらたに生まれる意味や解釈の発見です。そして、二人の間で起こることは、コーチ自身の関心事や学習レベル、能力に比例しています。

つまり、コーチは常に学習し、成長し続けていることが大前提の仕事です。

また、コーチには時代の先読みも必要です。現代は、世界中でテクノロジー企業が台頭し、ビジネスのあり方や考え方も非常に速いスピードで変化しています。生まれたときからインターネットが身近にあった人たちが社会に出て、リーダーとしてどんどん活躍するようになってきています。そういう人たちをコーチするには、これまでの自分のもってきた考え方や枠を取り払い、更新していかなければなりません。そういう意味で、非常に刺激的な仕事だと思っています。


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