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組織とは対話のネットワークである

【原文】Your Organization Is a Network of Conversations | by Steve Zaffron and Gregory Unruh
組織とは対話のネットワークである
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企業は根本的には言葉によって組織されていることをリーダーは理解する必要がある。

2004年、ブラッド・ミルズ(Brad Mills)氏は、南アフリカで操業するイギリスの鉱山会社、ロンミン(Lonmin)のCEOに就任した。その当時、同社の先行きは暗いものであった。経営陣、労働者、地域コミュニティの間で絶えず衝突が起きていたばかりでなく、組織の各部門はサイロ状態で機能不全に陥っており、企業全体で1つのビジョンを決めることなど到底不可能な状態だった。そこで、まずミルズ氏は、会社、組合、部族、地域コミュニティを代表する100人のリーダーを1か所に集め、2日間にわたって対話を行うことにした。その目的は、ロンミンとそのステークホルダーにとって魅力的な未来を新たに構想することである。

ミルズ氏は、集まった代表者たちが共通して持っているもの、つまり「人間性」に訴えかけ、「人間は共に働くことで何か素晴らしいものを生み出すことができる」という考えを伝えた。2日間にわたる対話は、初めは敵対的なものであったが、次第に「一緒に何ができるか」という話し合いへと変わっていった。ステークホルダーたちは、自分自身を見直し、自分の利益だけでなくロンミンの未来に向けて何ができるかということを考え始めたのである。

ミルズ氏のアプローチは、経営者にはまれであり、独自の力強い考え方に基づいている。すなわち、組織は根本的には言葉で成り立っているという考え方だ。このような考え方においては、対話こそが組織マネジメント上で重要な基礎となる。「対話」とは、話す、聞く、書く、イメージすることなど、各種の言語的なコミュニケーション手段を意味する。簡単に言えば、企業とは、企業に関するあらゆる対話の集合体であり、「対話のネットワーク」であると言うことができる。

企業経営における対話

今日のグローバルで多元的なビジネスネットワークにおいては、商業的な成功は、取引先や顧客とどのように共同して価値を創出するかに左右される。そのような状況では、コンプライアンス・ベースの指揮管理型組織の有効性は失われつつあると、専門家たちは指摘している。「対話のネットワーク」という枠組みは、このような考え方の論理的な延長線上にある。この枠組みは、「対話」という、企業の根本的な現実を指し示している。意識的なものであれ無意識的なものであれ、対話は常に行われている。無意識的な対話とは、管理も誘導もされていない対話のことだ。メモ、指令、方針の伝達も「対話」と見なされることがあるが、このような伝達は、大きなネットワーク内で既に行われているインフォーマルな会話の単なる「話題」にすぎないことが多い。対話のネットワークを把握し管理することで、私たちは多様な情報の流れを強化し加速することができる。

対話がいたる所で行われているというこの事実は、「対話のネットワーク」というとらえ方を裏付けているだけではない。「対話のネットワーク」は、マネジャーやリーダーにとって不可欠なものである。対話の分類方法には様々なものがある(部門間の対話、法律に関する対話、噂など)が、ここでは、リーダーシップ、マネジメント、個人という、3つの基本的な対話の次元を取り上げ、それらを連携させることで組織のパフォーマンスをどのように向上できるかということを示したいと思う。

未来と現在をつなぐ対話

リーダーシップに関わる対話は、ロンミンのブラッド・ミルズ氏の対話のように、組織の魅力的な将来像を作ることに関係している。経営幹部は企業の長期的な経営見通しを立てる責任を負っている。通常、それは全社レベルの戦略、ビジョン、目的といった形で表現される。このような対話は経営幹部が主導する場合もあるが、最終的な成功は、将来像の実現に向けて行動しなければならないステークホルダーのエンゲージメントとエネルギーにかかっている。コンサルティングや経営者教育を行う中、私たちはあることに気づいた。それは、エンゲージメントを促進するには、自己表現の機会と将来に対する重要な貢献を果たすチャンスを、ステークホルダーに与えなければならないということである。これに加えて、企業のビジョンを追求することで、自分の望みを果たすことができるとステークホルダーが思えるようにする必要もある。

マネジメントに関わる対話は、長期的な将来像ではなく、短期的な目標に狙いを定めた対話である。短期的な目標は、成果を得るための各種のプロジェクトや取り組みの中でまとめられる。このようなプロジェクトや取り組みは、経営層のニーズではなく、長期的な将来像のニーズに基づくものである。そのため、未来から逆算して、思い描いた将来像を実現するために行うべき活動を考える。そのうえで、短期的な目標を実現するために必要な対話を促すのである。

個人に関わる対話は、「今日」という将来に関する対話である。高い業績を上げている組織に属する人は、自社のプロジェクトや取り組みに基づいて、今日実行する必要があることを計画している。同様に、プロジェクトや取り組みは、長期的な将来像のニーズに基づいて決められている。今日に関する対話と長期的な将来像に関する対話を一貫したものにすることは、リーダーの重要な課題である。

リーダーの課題

リーダーの課題は、組織の全レベルで行われる対話の基盤となる、刺激的な将来像を明確化し、共に作り出すことである。将来像を作ることは、企業ビジョンの声明に対する「賛同」を得ることではない。私たちの経験上、「賛同」を得ることは従業員に服従を強いることとたいして変わらない場合が多い。それに対して、自分がその一部を成していると感じることのできる魅力的な将来像は、従業員のコミットメントと強い関心を引き出す。この違いを具体的に示しているのが、アップルのCEOであるティム・クック(Tim Cook)氏の事例である。

現在、クック氏は世界で最も価値の高い企業のリーダーを務めている。アップルの共同創業者兼元CEOのスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏は、1998年にコンパック・コンピューター(Compaq Computer)に在籍していたクック氏を引き抜こうとした。しかし、20年前のアップルは倒産寸前で、クック氏の同僚はアップルへの転職を考えるのはばかげたことだと言った。ジョブズ氏は、アップルに移れば将来自分のパートナーとしてその類いまれな才能を活かすことができると言ってクック氏を説得し、沈みかけている船に乗せた。

クック氏は次のように回想している。「彼は突然、自分の戦略やビジョンについて話し始めた。私は常に、大勢の人がやっていることに従うのは良いことではないと考えていたのだが、彼の話を聞いて、彼がまったく新しいことをやろうとしているのがわかった。アップルが抱えている問題を調べたところ、自分に貢献できることがあると思った。そこで私はアップルに移ることにした。」1998年、クック氏はアップルのワールドワイドオペレーション担当シニアバイスプレジデントに就任。そして2011年、亡くなったジョブズ氏の後を継いでついにCEOに就任した。

将来に向けた揺るぎない信念

リーダーの将来に関する対話に対して、懐疑的な見方をする人も必ず現れるだろう。幸い、組織に変革を引き起こすためには、中核的な従業員が少数いるだけで十分であることに私たちは気づいた。レンセラー工科大学(Rensselaer Polytechnic Institute)が最近実施した調査も、私たちのこの読みを裏付けている。その調査によると、コミュニティの中に揺るぎない信念を持つ人々が10%いるだけで、大半の人々がそれを受け入れていくということがわかっている。

ミルズ氏がCEOに就任したとき、ロンミンの先行きは暗澹たる状態であったが、同社とそのステークホルダーは、そこからより良い将来像を作り出した。数年のうちにロンミンはプラチナ生産量、採掘の安全性、組合との関係、コミュニティのサポートなど、重要な指標で目標を上回る成果を上げ、株価は3倍以上に上昇した。豊かな未来が到来したのである。

だが、それからまた新たな展開が起こった。景気の後退に伴い、プラチナの価格が57%下落、労使関係が悪化し、競合企業が敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けてきたのである。そして、ミルズ氏はCEOを解任された。

幸いにも、ミルズ氏は将来と将来のキャリアという再生可能なリソースを持っていた。解任後、ミルズ氏はプリニアン・キャピタル(Plinian Capital)を設立し、同社の役員に就任した。プリニアン・キャピタルは、鉱山業のバリューチェーン全体を対象に、過小評価されているチャンスを拾い上げてそれに投資することにより、新しい未来を育てる企業である。

ショッピングモール、炭鉱、ディーゼル車、タクシーなど、私たちの身の回りの様々なビジネスの将来性が、いま加速度的に失われつつある。組織の対話をリードすることは、今日の企業経営において、最も重要で価値のあるスキルの1つである。

筆者について

スティーブ・ザフロン(Steve Zaffron)氏は、Vanto Groupの創業者であり、 『The Three Laws of Performance: Rewriting the Future of Your Organization and Your Life 』(Jossey-Bass, 2009)の共同執筆者。グレゴリー・アンラー(Gregory Unruh)氏は、米国ジョージ・メイソン大学(George Mason University)におけるバリュー・リーダーシップの教授である。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Your Organization Is a Network of Conversations
(2018年7月10日にMITのManagement Reviewに掲載された記事の翻訳。同機関の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Used with permission from MIT Sloan Management Review. All rights reserved. Sloanreview.mit.edu


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