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AIはコーチを絶滅させるのか?

【原文】Is Coaching Going Extinct? | by Matt Barney, Ph.D.
AIはコーチを絶滅させるのか?
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私たちの祖先の多くは、自動車の発明により馬のムチの製造業者が消滅すると考えていた。モトローラはモバイルで電話市場を革新した。それに続き、ノキア、アップル、サムスンが次々と電話市場を革新していった。私の10代の息子たちは、モトローラという名前を一度も聞いたことがない。モトローラのモバイル事業部門は10年近く前に解体されたからだ。今日、多くのコーチは次のような疑問を抱えている。「人工知能(AI)の進歩によってコーチも必要なくなってしまうのだろうか?」

「コーチングAI」を活用する場面

組織心理学者として、私は科学的見地から、クライアントの態度、信条、行動の変化に影響を与えるためには、コーチとクライアントの関係がきわめて重要であると確信している。従来のコーチングの大きな問題は、クライアントがセッションの合間に実践することをよく忘れたり、クライアントがセッション外でコーチの支援を求めなかったりすることである。新たに登場したいくつかの「コーチングAI」は、コーチとクライアントの関係を強めることはできるものの、コーチに取って代わるものではないし、脅威でもない。

能力開発を強化するツールとして「コーチングAI」を活用することで、クライアントが目標を達成する可能性を高めることができる。これは、ひとつにはAIならば的確なタイミングでクライアントを支援できるからである。また、AIにより作り出された安全な模擬的環境や実際の生活の中で、クライアントに行動の記録を残してもらえば、コーチはその記録を容易に確認することができる。このようにスムーズに確認する手段があれば、コーチングセッションの合間、あるいはビデオや対面セッション中に計画の改善を検討する際に、クライアントに行動を促したり、クライアントを褒めたり支援したりすることができるだろう。

「ルールベースAI」

従来のコーチングを補完するAIは、「ルールベースAI」と「機械学習AI」という2つのカテゴリに大別される。

「ルールベースAI」は、コーチの暗黙的なルールを明瞭化し、それに基づいて、コーチの行動を模倣するAIである。この種の「コーチングAI」の中には、熟練したコーチにより作成され、アセスメントのようなものに設定されたものもある。クライアントは、ちょうどよい難易度で現在の習熟度に合ったアセスメントの、モバイルプッシュ通知を受け取るタイミングを指定できる。

また、クライアントの能力開発を助けるための具体的な行動に関する提案を、サポーターや関係者に合わせて提供するルールベースのAIシステムもある。2014年に、私はチームと一緒に、従来のコーチングをこのような「eコーチング」で補完する取り組みを始めた。それ以来、クライアントの自己評価と360度評価の結果が目に見えて改善している。

「機械学習AI」

私のチームでは、「ディープラーニング」や「機械学習」技術をベースにした、また別の種類の「コーチングAI」の開発を続けている。私が大学院生だった頃は、これらは「ニューラル・ネットワーク(神経回路網)」と呼ばれていた。その頃(30年近く前)は、コンピューターの処理速度が遅すぎて、データセットが小さすぎたために、ニューラル・ネットワークは機能しなかったが、それ以来、ハードウェアとソフトウェアは飛躍的な進歩を遂げた。

このような「コーチングAI」のひとつに、「説得力のある文章」」といった、特定領域にトレーニングされたものがある。Siriなどのチャットボット・インターフェイスを使い、フライトシミュレーターのようにAIコーチを利用すれば、実際の仕事や生活で新しい行動を試す前に、安全な場所でその行動を練習して改善することができる。

AIがコーチングに置き換わる可能性

Googleのデイビッド・ピーターソン博士は、「AIの急速な進歩により、コーチングは今大きく変わりつつあり、すぐに時代遅れのものになる可能性がある」と主張している。その可能性があるのは確かにそのとおりだが、AIがコーチに置き換わることは、おそらく当分ないだろう。経営幹部レベルのコーチングに関しては、なおさらその可能性は低い。経営幹部を含め、私たちはみな高度に社会的な存在であり、まだしばらくの間は、AIよりもコーチのほうがはるかに優れた状況理解力、共感力、判断力を持っているという状況が続くだろう。コーチをAIで完全に置き換えることができるどうかは、議論の余地がある。

近い将来、クライアントとの関係を改善するために、セッション外でAIを活用することを検討してみてはどうだろうか。ただ、それよりも重要なのは、これまでコーチングを利用できなかった世界中の圧倒的多数の人々に、AIを活用してコーチングを広めることである。トレーニング市場はコーチング市場より100倍も規模が大きい。トレーニングは人がいなくても提供でき、規模を拡張しやすいからである。AIという新しいツールを活用すれば、より収益性の高い新しいビジネスモデルを確実に生み出せるだろう。またそうすることで、クライアントと接する時間を減らし、より低価格で多くの人々にコーチングを提供できるのである。

「コーチングAIは、トレーニング業界に流れている顧客を獲得し、コーチング業界を飛躍的に成長させるだろう。私はその可能性は高いと考えている。多くのトレーナーは、トレーニングで学んだ内容を仕事で活用させる方法をほとんど知らないからである。一方、コーチングのアプローチは、常にクライアントが目標を達成できるように支援することを基本としており、セッションの進捗に合わせてさまざま調整が行われる。「コーチングAI」を利用すれば、ごく普通のコーチでも、テクノロジー主導ではない現在のコーチング関係を損なうことなく、影響力を拡大してビジネスを成長させることができる。

筆者について

マット・バーニー(Matt Barney)博士は、受賞経験のあるハイテクのプラットフォームで、専門家やAIコーチングを測定するLeaderAmp社の創業者兼CEO。20年間にわたり、多国籍企業で上級管理職を務める。これまでに6冊の書籍を著わした内5冊が、2018年に技術系の特許を取得している。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Is Coaching Going Extinct?(2018年7月31日にICFCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。)


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