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「失敗から学ぶ」、そのリスクと価値とは?

【原文】Learning from Failure: Why Risk It? | by Jane Brotchie
「失敗から学ぶ」、そのリスクと価値とは?
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私のソーシャルメディアにはモチベーションを高めるスローガンがひっきり無しに入ってくる。それは、「失敗を受け入れろ」とか、「失敗に感謝しろ」と、しきりに私を急き立ててくる。「失敗は最高の学習方法だ」「失敗から学ぶことができれば、その失敗は成功だ」「失敗は人格を形成する」――どれも理論上はとても素晴らしいのだが、失敗する勇気と自信をクライアントに与え、そこから学習して前進するようにサポートするには、どうしたらよいだろうか?

マインドセット理論:誤解を一掃する

心理学者のキャロル・ドゥエック(Carol Dweck)博士は、「固定型マインドセット(Fixed Mindset)」と「成長型マインドセット(Growth Mindset)」に関する著書やスピーチで、「失敗から学ぶ」という表現を用いている。ドゥエック博士は、学校に通う子どもたちを対象に調査を行ったところ、賢さを褒められ、自分には生まれながらにして「固定された」才能があると思った子どもは、何としてでも失敗を避けようとしてより簡単な課題を選ぶことが分かった。一方、努力と忍耐力を褒められた子どもは、失敗を向上と「成長の」機会だととらえて、難しい課題に取り組むということが明らかになった。

「成長型マインドセット」は、多くの職業能力開発プログラムで採用されている。このコンセプトの魅力は、教育理論、ビジネス、リーダーシップ開発、コーチングなど、さまざまな分野で認められている。私自身もコーチングの場面で、クライアントにガチガチな考えから抜け出すように指導し、もっと成長できると思いこませるため、このようなマインドセットを採り入れている。私が興味を持って注目したのは、ドゥエック博士の調査結果に対して反発する意見があることと、「誤ったマインドセット」に対してドゥエック博士が誤解を解こうとしていることだった。マインドセット理論をコーチングに採用するには、以下のような、よくある2つの誤解を理解する必要がある。

マインドセットの誤解1:成果ではなく努力を褒める

「成長型マインドセット」の支持者の多くは、このマインドセットを育むうえで最も重要なのは成果ではなく努力を褒めることだととらえた。ところがドゥエック博士は、それは違うと述べている。2016年の『アトランティック』誌のインタビューで、彼女は次のように語っている。「成果や学習の向上に結び付いた努力を褒めなければなりません。しかし、努力だけでなく、解決策を練るための戦略も重要です。さらに、別の戦略を見つけられるように、子どもたちをサポートしなければなりません。」

子どもたちは、努力を認められても成果につながっていないと、そのことに目ざとく気づく。このことは、コーチングのクライアントも同じである。コーチングの場面では、失敗に直面しても立ち直れるようにサポートするには、ただ励ますだけでは不十分だ。かつて問題に直面したときにどのような戦略がうまくいったかを明らかにして、実践に役立つ新たな解決策を試すことができるように、クライアントをサポートする。使い古した戦略を繰り返しても、同じ結果しか得られない。

さらにドゥエック博士は、子どもたちは、サポートを求めるタイミングと、問題解決のためのさまざまな手段を利用する方法を知る必要があると述べている。コーチングの場面では、内的なリソースも外的なリソースもあり得る。私の経験から言うと、サポートを求めてそれを受け入れるタイミングを知ることは、コーチングのプロセスの重要なポイントとなることが多い。

マインドセットの誤解2:「固定型マインドセット」か「成長型マインドセット」のどちらか一方に分類される

人(または自分自身)を「固定型マインドセット」か「成長型マインドセット」のどちらかに分類したいところだが、実際には簡単に二分できるものではない。能力を伸ばすことができる(「成長型マインドセット」を備えている)と信じている人でも、状況によっては、「固定型マインドセット」に陥る可能性がある。ドゥエック博士によると、重要なのは、「固定型マインドセット」に陥ってしまう誘因を理解することである。ここでは、コーチングが非常に重要な役割を果たす。コーチは、硬直した考え方から抜け出せるようにクライアントをサポートするだけでなく、「固定型マインドセット」に陥ろうとする誘因を認識できるようにサポートする。ドゥエック博士は、自分自身の誘因を認識する知るために、「完璧マダム(Madame Perfect)」という人格を創造した。

なぜあえて失敗するのか?

さらなる疑問が生じる。「人はなぜ、ミスを犯して欠点をさらけ出すような状況に自ら身を置いてしまうのか?」そのヒントは、専門知識に関する研究で見つけることができる。「超一流」研究の第一人者、K・アンダース・エリクソン(K. Anders Ericsson)博士は、特定の分野で超一流になりたいと思ったら「限界的練習」を積む必要があると述べている。「限界的練習」とは、自分の能力レベルとコンフォート・ゾーンを上回る課題(現時点ではうまくできていない課題)に集中して取り組む練習だ。超一流になるには、困難な分野で持続的な努力と練習を重ね、専門的な知識や技術を持つコーチからのフィードバックを参考にして、自分がとっている行動について真剣に考えることが大切だ。

私は多くのクライアントに対して、大切なのは個人のパフォーマンスだけではないと伝えている。個人だけではなく、より多くの人々の利益に貢献することが重要だ。このような考えは、成長と成功の新しい定義から生まれている。研究者のアシュレー・ブキャナン(Ashley Buchanan)氏とマーガレット・L・カーン(Margaret L. Kern)氏は「利益型マインドセット(Benefit Mindset)」を新たに提唱した。これは、個人の成功とパフォーマンスを目指すだけではなく、目的を持つ集団の環境で個人の成長を目指すというコンセプトだ。ブキャナン氏とカーン氏は、「『利益型マインドセット』は、目的主導型・リーダーシップ主義のマインドセットであり、成功を再定義している。つまり成功とは、世界で一番になるだけでなく、世界にとって一番になることだ」と述べている。

これこそが、失敗のリスクをおかす価値のあるテーマではないか?

筆者について

ジェーン・ブロッチー(Jane Brotchie)は、英国をベースとして、全世界にオンラインでパーソナル・コーチングや能力開発のコーチングを提供している。リーダーシップ・プログラムの開発を手掛けるなど、学習と開発に関するコンサルタント業もおこなっている。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】 Learning from Failure: Why Risk It? 
(2018年8月23日にICFCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。)


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