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小規模のチームが組織の生産性を高める10の理由 -前編

【原文】Get Things Done With Smaller Teams
小規模のチームが組織の生産性を高める10の理由 -前編
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大企業の多くは、より効率と成果をあげることを重要な経営目標に掲げている。ほとんどの市場で売上が伸びにくくなっているため、株主に還元する利益を増やすには、最終収益を増やすこと、つまり、生産性を高めることが重要になっている。生産性を高めるには、会社を運営するプロセスはもちろん、企業を変革するプロセスも改善する必要がある。

残念ながら、変革の推進を担当するプロジェクトチームが生産性を向上することは、困難な可能性がある。新しいテクノロジーが関係する場合はなおさら難しい。どの企業も、プロジェクトの予算や期間が倍増したり、プロジェクトの目標を達成できなかったり、最終的にプロジェクトを打ち切ったりした経験があるだろう。

小規模チームがプロジェクトを成功に導く

こうした大規模なプロジェクトが失敗する背景には、さまざまな原因がある。その根本原因のひとつとして、プロジェクトが大きすぎるため、その重さに押しつぶされてしまうことが考えられる。そこで、プロジェクトの効力を改善する方法のひとつに、プロジェクトに取り組むチームの規模を縮小するという方法がある。あなたのプロジェクトチームも小規模化すべき時かもしれない。

小規模のチームは機敏で、開発サイクルの回転が速く、より多くのイノベーションを会社にもたらす。優れた成果をあげた小規模チームの例は無数にある。

フェイスブックがWhatsAppを190億ドルで買収したとき、WhatsAppは4億5千万人のユーザーを抱えていたが、そのプラットフォームを開発したエンジニアは32人であった。フォルクスワーゲン ゴルフ GTIは、歴史上最も有名なハッチバック車であるが、それを開発したのは8人のチームである。テクノロジー最大手企業の多くは、10人以下のチームで初のヒット商品を開発している。

ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏はAmazonの草創期に「ピザ2枚のルール」を定めたことで有名である。これは「2枚のピザでまかなえないチームは大きすぎるため、小さくすべし」という命令である。小さなチームがなぜ効果的なのかは、簡単にに理解できるだろう。コミュニケーションが円滑になり、意思決定をより迅速に行えるようになるからである。

しかし、大規模な組織のマネージャーは、この手法をどのように活かすことができるのだろうか?

1.大きな課題を小さな課題に分ける

大規模な組織は時間とともに大きくなる傾向があり、プロジェクトの進行中にピザ2枚でまかなえるチームを作ることは、極めて難しい。大規模な変革プロジェクトの目標を追跡してみると、プロジェクトの完了時の目標が、当初合意したものとはかけ離れたものになっていることも少なくない。プロジェクトがこのように発展していく傾向は、プロジェクトと担当チームの規模が大きくなればなるほど、ますます強くなる。チームメンバーが増えれば、プロジェクトに新たに組み込む必要のある目標も増える(もちろん、何かが減らされることはない)。

このようにプロジェクトが自然と大規模化する現象に対処する方法として、初めからプロジェクトを分割し、小さなチームで解決できる別々の課題に分ける方法がある。リーダーシップに重点を置きつつ、大規模で複雑な課題を達成可能な個別の課題に分割して小規模のチームに割り当てれば、期待以上の結果を出すことができる。

組織の規模を縮小することなく小規模チームを活用するもうひとつの方法として、ビジネス機能を各専門組織に分け、明確に定義された各種サービスを提供する任務をそれぞれに割り当てる方法がある。そのうえで、各組織に責任者を置き、任務を遂行する責任と権限を与え、成果を評価するとよいだろう。

2.「不可欠」なチームメンバーをなくす

多くの大企業では、ひとつの課題だけに集中して対処できる人材はほとんどいない。課題の数と課題の解決を担当するチームが増えるに従い、中核メンバーが数多くのタスクを担当することになるため、スケジュールが細切れになり、時間の管理が難しくなる。チームの中核メンバーが、6つの別のチームで同時に仕事をしている場合、重要な中間目標の達成に必ず影響が生じる。その人と予定を合わせることさえ困難になる。

変革や改革を進めていくようなプロジェクトでは、「不可欠」なメンバーに頼らなくても、積極的に管理できる体制を作ることが重要である。重要な決定を1人の人物にすべて委ねると、チームに致命的な弱点ができてしまう。その結果、プロジェクトやイノベーションの速度が低下し、事業リスクが高まることになる。小規模のチームなら、このようなリスクをコントロールするために、容易にメンバーを補完しあうことができる。

3.迅速に意思決定を行う

ご存知のとおり、チームが大規模だと、意思決定にいくつものステップを踏む必要がある。まず多くの場合、予定の調整に時間がかかる。部屋(または電話会議)に全員集めたら、最初に事情を説明する必要がある。参加者の中には、必要な資料を読んでいない者もいれば、時間を作ることができなかった重要な意思決定者の代理人として参加している者もいる(このような代理人は上司と相談せずに重要な決定を行うことができない)。

皆さんもこのような会議に参加したことがあるだろう。何かが決まることはまずなく、再度会議を行わなくてはいけないことも多い。チームが小規模なら、このような問題をもっと簡単に排除できる。意思決定に必要な人が少なく、メンバーは通常、事情を詳しく把握しているため、何かを決める前に、会議を開いて準備する必要はない。

チームを編成したら、各メンバーがどのような決定を自分で行えるか、チーム全体でどのような決定を行えるか、上層部の意見を仰ぐ必要があることは何か、最初に時間をかけて確認するとよいだろう。さらに、明確な指針を定めてチームに責任感と説明責任を与え、できる限り多くの意思決定をチームで行うよう後押しするべきである。

4.信頼を築く

信頼以上にチームを強化するものはない。信頼は、進捗を加速し、品質を改善し、実行リスクを軽減する。しかし、信頼はひとりでに生まれるものではないし、多くの場合は意図的に生み出す必要がある。チームが小規模ならば、マネージャーは各メンバーにより多くの時間を割くことができるため、それぞれの強み、弱み、キャリア目標を知ることができる。チームが元から持っている力を強化するようにタスクを構成することが可能なため、チームメンバーに各自の能力を発揮させ、信頼関係を築くことができる。また、課題の解決に協力して取り組む中で、メンバーは絶えず交流することになるため、信頼関係が生まれる。

仕事外での交流イベントをうまく活用することも大事だ。信頼関係は、ボウリング場、ペイントボールの競技場、バスケットボールのコートで生まれることもあれば、おいしい食事を楽しんでいるときに生まれることもある。

5.情報共有の方法を簡素化する

プレゼンテーションは複雜なアイデアを伝えるのにとても効果的なツールである。ただし、チームの時間を大量に奪うものでもある。小規模の専門チームに移行することで、プレゼンテーションのような構造化された情報伝達の必要性を(なくすとまではいかなくとも)減らすことができる。

小規模の専門チームなら、作成に何時間もかかる正式なプレゼンテーションやスライド資料を使う代わりに、ホワイトボードを使ってディスカッションをし、問題や解決策をその場で図を用いて説明することができる。チームメンバーが全員同じ場所にいない場合は、Slack、Microsoft Teams、Symphonyなど、オンラインのコラボレーションツールをホワイトボードの代わりに利用し、ブレインストーミングを行うとよいだろう。どちらを利用しても効果は同じだ。解決策を迅速に導き出し、チームの連携を強化することができる。


筆者について

クリス・デブラスク(Chris DeBrusk)氏は、世界的な経営コンサルティング会社、オリバー・ワイマン(Oliver Wyman)社における金融業務およびデジタル分野のパートナーを務める。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Get Things Done With Smaller Teams (2018年9月7日にMITのManagement Reviewに掲載された記事の翻訳。同機関の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Used with permission from MIT Sloan Management Review. All rights reserved.
https://sloanreview.mit.edu/


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