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小規模のチームが組織の生産性を高める10の理由 -後編
2018年11月02日
企業を変革するための大規模なプロジェクトを進めていくときに、それが失敗する「根本原因のひとつとして、プロジェクトが大きすぎる」ことが考えられる。
前回に引き続き、小規模なチームが生産性を高める10の理由の後編をお届けします。
6.透明性と責任感を高める
大規模なチームでは、かなり簡単に責任を逃れることができる。電話会議に参加だけして、何も発言しなくても問題はない。成果物は複数の人々によって管理されているため、手間のかかる仕事を他の人に簡単に任せることができる。忙しいことを理由にして、準備が必要とされる重要な会議への参加を避けることもできる。チームで働いているにもかかわらず、各メンバーが何をしているかをすべて把握している人は、一人もいない。
一方、小規模のチームの場合、責任逃れはまず不可能だ。発言がなければ即座に気づかれるし、プロジェクトの進行に貢献しない人は、付加価値をもたらさないという明白な根拠があるため、すぐにチームから外すことができる。
7.不要な情報共有会議を減らす
電話会議を完全になくすことはもちろん不可能だが、Slack、インスタント・メッセージ、オンラインのビデオ会議など、時間や場所を問わず使えるプラットフォームを利用すれば、さまざまな方法で連絡を取ることができる。そのため、電話会議を中心にする必要がなくなり、電話会議に特有の問題に煩わされることもない。
小規模のチームなら、電話会議を利用せずに済む。デジタル・チャネルや対面コミュニケーションなど、さまざまな方法で頻繁に連絡を取り合うことが可能だからだ。大規模なチームでは、そこまで頻繫に連絡を取ることはできないため、定期的に補足連絡を行い、目的を再共有し、情報がしっかりと共有されているかどうかを確認する必要がある。ただし、情報を共有する場合でも、電話会議はそれほど有効な手段ではない。
8.プロジェクトの進捗の把握にあまり重点を置かない
プロジェクトマネージャーの仕事は進捗を把握することである。タスクの一覧を作成し、その進捗を確認する。依存関係を確認し、進捗のずれを把握する。有能なプロジェクト・マネージャーは、大規模なプロジェクトチームの潤滑油としての役割を果たし、プロジェクトの完了に影響する摩擦を減らすことができる。しかし、あまり有能でないプロジェクト・マネージャーは、近況を聞くためにチームを邪魔したり、集めた情報をまとめたプレゼンテーションを作成したりするのに何日も費やしている。
SlackやJiraなどのツールが普及する中、進捗情報をまとめる担当者を置く必要性は、急速に失われつつある。進捗はツールによって自動的に追跡されるからである。チームが小規模な場合は、コミュニケーションが非常にスムーズであり、遅れているタスクや遅れを取り戻すためにすべきことを全員が把握しているため、なおさら不要である。
プロダクト・マネージャーは欠かせないが、チームの規模が小さく専門性が高い場合は、プロジェクト・マネージャーの有用性について再考する余地がある。
9.他のチームとの連携をスムーズに行う
小規模のチームで対処できるよう、プロジェクトを分割する際には、互いに依存しあうチーム間をつなぐことが極めて重要になってくる。チーム間の摩擦が連携の失敗や予定の遅れにつながることも少なくない。
それぞれの任務、連携方法、お互いに提供できるものと提供する時期を明確に定めた「契約」をチームの間で結ぶことが重要である。チーム間の依存関係を明確かつ簡潔に管理することに意識を向けることで、透明性が向上するだけでなく、それぞれのチームが割り当てられた目標の達成に集中できるようになる。
10.テクノロジーの導入をより迅速かつ効果的に行う
大きな裁量を持つ小規模の事業チームが、自分たちを支えるITチームを直接監督する権限を持っている場合、テクノロジーを活用して、自ら管理している環境を早急に改善することができる。
これを実現するには、どのようなIT人材を集約する必要があるか、また、どのようなIT人材を顧客や同僚に近い立場で働く各チームに分散配置する必要があるかを検討しなければならない。また、革新的なテクノロジーの導入に関する評価および承認プロセスも改善する必要がある。大規模な組織では、多くの場合、そこから摩擦が生じるからである。
近年、重要なビジネスツールとして機械学習(machine learning)が注目を集めている。各企業のITチームは、機械学習などのツールを利用して、高度なアナリティクス機能を小規模なビジネスユーザーのチームに提供している。実現は難しいが、事業チームを支えるテクノロジー人材を適切なバランスで配置することで、イノベーションを増やし、ビジネス目標の達成を加速することができるだろう。
テクノロジーがモジュール化し、さらに柔軟になるにつれて、また、組織が機敏なデリバリー手法を採用するにつれて、前述のような考え方はますます主流になることが予想される。実行リスクを軽減し、イノベーションの速度を加速して、プロジェクト期間を短縮するには、大きなプロジェクトを小さなプロジェクトに分けて、複数のチームに担当させるとよいだろう。
<筆者について>
クリス・デブラスク(Chris DeBrusk)氏は、世界的な経営コンサルティング会社、オリバー・ワイマン(Oliver Wyman)社における金融業務およびデジタル分野のパートナーを務める。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Get Things Done With Smaller Teams (2018年9月7日にMITのManagement Reviewに掲載された記事の翻訳。同機関の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Used with permission from MIT Sloan Management Review. All rights reserved.
https://sloanreview.mit.edu/
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