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信頼関係が組織にもたらすインパクトとは?

原文:Creating A High-Trust, High-Performance Culture 
信頼関係が組織にもたらすインパクトとは?
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組織の業績向上のために「信頼を醸成する文化」を築くことは効果的なことである。ある神経科学の調査によると、信頼は社会的な摩擦を減らし、同僚間の協力的な行動を促進するという結果がでた。また、そのような組織のマネージャーは強い信頼で結ばれた業績の高いチームを作ることができるという。

企業文化は測定できる

あなたはこれまで、サプライチェーンを最適化し、生産プロセスを合理化し、あなたのマーケティング戦略は効果的であることを実証したりしてきただろう。ビジネスの各要素は、継続的な測定、テスト、改善によって効率を高めることができる。しかし、多くの企業は、利益の大幅な向上に寄与する重要な要素を最適化できていない。その要素とは、文化である。企業の文化は従業員の行動や連携に影響を与える。そして、従業員の行動は、彼らがいかに効率的に組織のために価値を生み出せるかどうかに影響を与える。文化は固定的なものではない。それは他の業務プロセスと同じように、測定したり改善することが可能であり、何を測定し、どこを変えるべきかを把握することもできる。

信頼関係は組織における重要な文化的要素

私はどの文化的要素がパフォーマンスに最も大きな影響を与えているかを明らかにするために、仕事中の人の脳の活動を8年間にわたり測定してきた。調査の結果、「組織内の信頼関係」が重要な文化的要素であり、従業員が期待を上回る働きをするかどうかに直接影響することがわかった。人が集まれば、自然と摩擦が生じる。しかし、その一方で、私たちの脳は他の人とチームを組んで働くことを前提として作られている。そのため、チームの一員になりたいと思う欲求と、他人を遠ざけることで摩擦を避けようとする欲求との間で葛藤が生じる。

私が実施した信頼に関する神経科学の調査では、信頼は人間関係の「潤滑油」として機能し、他人との摩擦を減らす効果があることが判明した。信頼があることにより、他の人と仕事をすることがより容易になり、効率的に、かつ楽しく仕事ができることが分かった。つまり、従業員が今よりも連携することができれば、生産性とイノベーションの水準が高くなるのである。

信頼に反応する脳内物質とは

耳寄りな話がある。信頼は測定することができるのである。他人から信頼されると、私たちの脳はオキシトシン(Oxytocin)というホルモンを分泌する。オキシトシンで脳のネットワークが活性化されると、「協力してこの仕事を終わらせよう」と考えるようになる。しかし、オキシトシンを直接測定するには、採血する必要がある。この目的のために従業員の採血を希望する企業は、まず存在しない。(とはいえ、勇敢にも私に採血を許可してくれた企業は何社かあった。)

企業には信頼をもっと簡単に定量化できる方法が必要である。研究室で脳の協調ネットワークの活動をさまざまな方法で測定したり、パプア・ニューギニアの熱帯雨林でフィールド実験を実施したりする中で、私はある調査方法を開発した。それは、組織内の信頼関係を築き、従業員の脳にオキシトシンを分泌させる8つの要素を測定する方法である。この8つの要素は、OXYTOCINという頭字語を使うことで、簡単に覚えることができる。

【組織内の信頼関係を築く8つの要素(OXYTOCIN)】

喝采(Ovation) 優れている人を認める
期待(eXpectation) 期待し、挑戦させる
委任(Yield) 広い心を持ち他の人に任せる
委譲(Transfer) 仕事を自己管理できるようにする
オープン化(Openness) 情報を広く共有する
思いやり(Caring) 意識的に関係を構築する
投資(Invest) 全人的な成長を促す
自然体(Natural) ありのままの自分をさらす

信頼関係が組織にもたらすインパクト

この8つの要素をうまく行動に移すことで、相手の信頼とパフォーマンスを高めることができる。私はチームとともにアメリカ全土の1,000人以上の労働者を対象とした調査を実施し、OXYTOCINファクターと、健康、幸福、仕事に関係するパフォーマンス指標を測定した。

その結果、信頼関係が強い上位25%の企業の従業員は、下位25%の企業の従業員よりも、仕事に対するエネルギーが106%、仕事へのエンゲージメントが76%、生産性が50%それぞれ高く、「燃え尽き」が40%少ないことがわかった。また、信頼関係が強い企業で働く人は、次の年も同じ企業にとどまる可能性が50%高く、88%が家族や友人に自分の会社を職場として勧めてもよいと思っていることが判明した。

また当然ながら、仕事に対する満足度は56%高かった。そして、信頼関係が強い企業の従業員は、信頼関係が弱い企業の従業員よりも60%より仕事を楽しんでいる。さらに、仕事を楽しんでいる人は、仕事以外の生活の満足度も高いという。そして、信頼関係が強い企業で働くという幸運に恵まれた人々は、仕事以外の生活の満足度が29%高い。(出典:Zak, Paul J., Trust Factor: The Science of Creating High-Performance Companies, 2017)

つまり、信頼関係を築くことで、あらゆる指標が改善されるのである。

まとめると、強い信頼関係が構築されている企業で働く従業員は、エンゲージメント、生産性、定着率がより高いことが明らかになった。

信頼関係を高める方法とは

ひとつ以上の信頼を高める要素に重点的に取り組むことで、組織内の信頼を改善することができる。まずは組織内の信頼関係を測定し、スコアが最も低いOXYTOCINファクターを中心に施策を練るとよいだろう。そうすることで、最高の効果が期待できるからである。

私がサポートした企業のほとんどは、従業員の育成に向けた「投資」に関して課題を抱えていた。「投資」とは、例えば、職業能力を開発したり従業員一人ひとりの興味関心を育てていくプロセスである。「投資」に関する施策としては、従業員が近隣の大学で講義を受けたり、専門分野の会議に出席できるように、経済的な支援を行うことも例として挙げられる。クロッグダンスなど、何か楽しめることを従業員に教えることも、「投資」のひとつの例である。

「自然体」(ありのままの自分をさらす)のスコアが最も低かった企業もあった。私たちは「自然体」のスコアを改善するため、3か月の対策プロジェクトを立ち上げた。最初の10日間は短い学習ビデオをメールで送信した。次の10週間は短い調査を頻繁に実施し、「自然体」に関するデータを収集するとともに、職場で本当の自分を見せることを意識するように促した。プロジェクトが終了してから6か月後に組織内の信頼を測定したところ、自然体でいられる好ましい環境があると答えた従業員の割合が53%増加し、信頼に対して好意的な見方を持っている従業員も17%増加した。

要点をまとめよう。信頼はビジネスの一要素であり、改善の余地がないかどうかを検討すべきものである。企業の文化を積極的に測定して管理し、強い信頼関係を築くことで、パフォーマンスを効果的に改善できることが科学的に明らかになっている。信頼関係を築けば、最終的に、従業員のパフォーマンス向上、KPIの改善、コミュニティの強化という3つの利益が得られるだろう。

この記事について

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Creating A High-Trust, High-Performance Culture

re:Work*に掲載された記事の翻訳。re:Workの許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated and reproduced with permission of re:Work

*re:Workとは:「職場をもっと良くしよう」をテーマに、Googleが実施した人事やマネジメントに関する調査結果やケーススタディ、ブログなどを公開している、Googleのre:Workチームが運営するウェブサイト。データに基づいた人事のあり方を模索している。


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