Global Coaching Watch

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内なる声に耳をすませば

【原文】Power of the Mind and the Little Voices Inside Our Heads
内なる声に耳をすませば
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ウェイ・レオン氏によるコラムを読んで、私も自分の話を共有しようと思った。これは私たちコーチの役割に直接関係する話である。

危機的な状況で起こったこと

2018年7月29日、私はある湖の遠泳イベント(Traversée du Lac)に参加した。それはスイス・レマン湖の一方の岸から反対側の岸まで、1.8 kmを泳ぐイベントだ。このイベントは競争でも競技でもない。ヨットやモーターボートがない美しい湖を無事に泳ぐだけのイベントである。

私は普段、トライアスロンなどのスポーツイベントに、いつも夫と一緒に参加する。競争はせず、お互いのペースに合わせて、一緒に楽しむためにやっている。

その日は夫が怪我をしていたため、私と一緒に泳ぐことができなかった。今回に限り、私は早めのペースで一人で泳ごうと思った。以前にも同様の経験があったので、今回も自分一人でできるだろうと考えたのである。

100メートル泳いだところで、私は過呼吸になった。呼吸が非常に苦しくなったのである。私は喘息持ちなので、この状況を少し深刻に受け止める必要があった。何とかして回復しなればならないので、深呼吸をして、背泳ぎをすることにした。このとき、次のような声が頭の中で響き始めた。

私ならできる。
絶対に無理だ。
少しずつ進もう。
止まるな。次の大きな黄色のブイまでたどり着けるかどうかやってみよう。
焦らずにゆっくり呼吸しよう。
フレデリックが一緒だったなら、もっと楽で面白かっただろうに。
何も問題はない。
自分の動きならコントロールできる。
状況を受け入れよ。
くだらないことを考えていないで、今を楽しもう......

私は泳ぐのをやめるか続けるか迷っていた。結局、予想よりも長くかかったが、クロールではなく平泳ぎに切り替えることで、何とか最後まで泳ぎきることができた。状況に適応する方法を見つけて、即応力を発揮したのである。

みなさんも頭の中で、先ほどのような小さな声を聞くことがよくあると思う。

では、このような声はコーチングといったいどのような関係があるのだろうか。

自分の物語を変える

その週の後半に、私は国際コーチング連盟(ICF)の「エグゼクティブとリーダーシップ・コーチングのイベント(ICF Executive and Leadership Coaching Community of Practice)」に参加した。このイベントでは、ロン・カルッチ(Ron Carucci)氏がコーチとクライアントの間で健全な関係を築く方法について、自分の考えを紹介していた。カルッチ氏は「物語(narratives)」という概念に注目していた。カルッチ氏によると、私たちはみな自分の物語を持っているという。そして、誰もがいくつもの物語を持っている。私たちはまず、自己認識を深め、自分の物語を受け入れ、それをいつでも変えられるようになる必要がある。重要なのは、柔軟性を発揮して状況に適応することだ。成功をつかむためには、結局のところ、私たちは自分の行動を変え、能力を磨き、状況に適応しなければならないのである。

この考え方は私の心に大きく響いた。これは私が湖で経験したことと重なる部分がある。つまり、湖の向こう側にたどり着くには、私は自分の物語を変えなければならなかったのである。

頭の中の小さな声に気づく

コーチの役割は、クライアントの自己認識を助け、声がいつどのような状況で聞こえてくるのか感じ取るよう促して、その声と向き合うよう勧めることであると、私は考えている。自分のポテンシャルを十分に発揮できるように、心の葛藤の解消を助けることがコーチの仕事である。

コーチング・セッションの後、クライアントは自分の目標を達成するために実行計画を立てる。そして、日常生活に戻り、一人で自分の課題に直面する。

私たちの役割は、自分の物語から発生するこのような小さな声に対処できるように、自分の行動を適応させて心の雑音を消す力を、クライアント自身が見つけられるようにすることである。

次回のコーチング・セッションで、クライアントと一緒に頭の中で響く小さな声について話し合い、クライアントに自分自身の物語を再構成するよう促すとよいだろう。それが成功への大きなステップになるかもしれない。うまくいけば、私が一人で泳いでいたときにそうしたように、あの小さな声をコントロールして、今まさにいる状況へ適応するための物語を見つけられるだろう。重要なのは、自己認識と即応力である。

<筆者について>

ヴァレリー・ロバート(Valerie Robert)氏は、事業変革を専門としたコンサルタント。米国およびヨーロッパの大手企業にてHRの要職を歴任している。フランスのEDHECビジネススクールでMBAを修得したほか、ハーバード・ビジネスクールで女性役員プログラムを修了している。ICFの2018年の理事。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Power of the Mind and the Little Voices Inside Our Heads (2018年9月18日にICFCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。) 


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