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10年後のリーダーシップとは

原文:Leading into the Future
10年後のリーダーシップとは
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私たちの世界と仕事の性質が根本から変化する中、リーダーは新しく必要になるスキルとそれに伴うマインドセットの変化について考える必要がある。

世界と労働環境の変化により、従来型のリーダーシップからデジタル・トランスフォーメーションを中心としたリーダーシップへの移行が求められている。デジタル世界において効果的なリーダーシップを発揮するには、リーダーはテクノロジー、人口構成、文化的規範などが要因となって生じている重大な変化を受け入れつつ、リーダーに求められる「不変的資質」と「状況に即した資質」を身につけなければならない。そのために、これから先のリーダーはマインドセットを変えていく必要がある。

自分は2025年のリーダーになることができるだろうか?

皆さんのうち、このような問いを抱いている方はどれだけいるだろうか。2025年まであと10年足らずだが、私と同じような考えの方ならば、リーダーシップを生み出す方法や効果的なリーダーの定義について、自分自身や他の人の経験をもとに、長年考えてきたことだろう。このような考察、経験、意見は、現在の世界でリーダーシップを発揮する方法を理解するうえで、ある程度は役に立っているはずである。

しかし、将来のリーダーシップはどうだろうか?5年後、10年後に優れたリーダーとなるには、何が必要だろうか?この問いについて考えたとき、私は「自分がついていけないほど物事が大きく変わることはないだろう」と思った。「リーダーシップは基本的に変わることがないものだ」と考えたのである。結局のところ、リーダーシップとは、ビジョンと戦略を策定し、顧客のためにその戦略を実行する動機づけを従業員に与え、投資家に優れた価値を提供することである。

しかし、本当にそうだろうか?カナダの金融サービス大手のRBC (The Royal Bank of Canada) の例を考えてみよう。RBCは5年前からクライアントと顧客に対するサービスの提供方法の包括的なデジタル・トランスフォーメーションに取り組んでいる。しかし、「デジタル・トランスフォーメーションを完全な形で実行するには、新しい経済において競争し企業をリードする方法を十分に理解して受け入れる必要がある」ということに、RBCの経営陣が気づいたのは、ごく最近のことであった。そこで、RBCではリーダーシップモデルと人材戦略を根本から変革した。今後は、未来を喜んで受け入れることができる人材がRBCの経営を担うことになる。

また、米国のフォードやボーイング・コマーシャル・エアプレーンでCEOを務めた、アラン・ムラーリー(Alan Mulally)氏の意見も紹介したい。彼は以前、自分のリーダーシップ・スタイルについて私に教えてくれた。

キャリアを積み始めた頃のムラーリー氏は、効果的なリーダーとは「責任を取り、組織の課題を十分に理解し、必要に応じて明確に指示を出すことのできる人物」であると考えていた。だが、ムラーリー氏の細かい指示が原因でトップマネージャーのひとりが会社を去るという出来事があった。そのとき初めて彼は、優れたリーダーは従業員を管理しようとするのではなく、その才能を発揮させる人物であるということを理解したのである。

次の10年間のリーダーシップ

リーダーをどう変えるべきかという問題は、100年以上の歴史を持つ大企業だけの問題ではない。ハブスポット社(ソーシャルメディア・マーケティングとウェブ・アナリティクスを提供する企業)のCEO兼共同創業者であるブライアン・ハリガン(Brian Halligan)氏は、一日の半分くらいの時間を使って「次の10年間に企業をリードするのはどのような人物だろうか」と考えている、とあちこちで発言している。この会社は設立からまだ10年そこそこしか経っていないというのにである。

ハリガン氏によると、ハブスポット社の従業員の平均年齢は20代半ばである。そのため、会社のリーダーとして、この世代を動機づけるものが何か、どのようなリーダーシップ・スタイルが最も効果的かを理解する必要があるのである。

これらの例を見ると、将来のリーダーシップ、課題に対する個人としての心構え、次世代のリーダーの育成に向けた組織としての準備体制に関して、次のようなさまざまな重要な疑問が生じてくる。

  • 私たちを取り巻く環境(デジタル化、AIと機械学習、グローバル化、人口構成、社会的・文化的規範など)の重大な変化のうち、優れたリーダーの定義に影響を及ぼすものはどれか?
  • 将来の優れたリーダーの特徵は何か?
    他と違う点、秀でた点は何か?
    優れたリーダーが行わないことは何か?
    行動はどのように違うか?
    リーダーシップ手法について異なる考え方を持っているか?
  • 次世代のリーダーの見極めや育成を促す組織的な方針や慣行はどのようなものか?
    このような新しいリーダーを組織的に生み出すには、方針や慣行以外にどのような組織文化や組織風土が必要になるだろうか?
  • 企業活動の性質が変わり、仕事や働き方の性質が変わる中、リーダーに求められるのは技能よりも才能になるのだろうか?

リーダーシップの「不変的資質」と「状況に即した資質」

ここまで述べてきた変化や例を考えれば、「リーダーシップは変わることのないものだ」という考えが完全に古い考え方であり、耳を貸す必要のないものであることがすぐにわかるだろう。しかし、次のことを少し考えてほしい。テクノロジー、人口構成、社会、地政学、文化的規範の変化など、どのような変化が起ころうとも、リーダーは日々企業を導いている。一部の特徴、特質、行動は、今後も優れたリーダーとなるためには欠かせないものである。たとえば、誠実さ、性格、勇気、実行力、顧客への熱意に対する重要さが低下することはないだろう。私はこれらをリーダーに求められる「不変的資質」と呼んでいる。

一方で、私たちの世界は急速かつ根本的に変化しつつあり、10年後にどのようになっているかは想像することしかできない。そのため、これらの「不変的な資質」に加えて、次世代の企業と従業員を導くリーダーには新しい資質が求められるだろう。さらに、先ほどあげた重要な影響要因の変化に応じて、リーダーに求められるものが変化する可能性がある。たとえば、企業がグローバル化するにつれて、率いるチームは世界各地に散らばる多文化の組織になっていくだろう。

ミレニアル世代の従業員や経営者が増えるに従い、働く場所、働く時間、働き方は変わり続けるだろう。アナリティクスとアルゴリズムを利用するデジタル化されたビジネスモデルがますます増えるにつれて、リーダーは人材戦略を根本から考え直し、最も価値のある人材を活用し連携させて、その力を引き出せているかどうかを見直さなければならない。

このような新しい要件を、私は「状況に即した資質」と呼んでいる。ビジョンや戦略を策定する能力はリーダーの「不変的資質」であるが、新しい従業員の期待を考慮しながら、包括的、協調的かつ透明な方法で戦略を策定する能力は「状況に即した資質」である。未来の世界で成功を収めるには、優れたリーダーはこの2つの資質をうまく統合しなければならないだろう。

デジタル・エコノミーにおける将来のリーダーシップ

この記事を皮切りに、私たちは今後1年間、優れたリーダーに必要なものを検討していくつもりである。『MITスローン・マネジメント・レビュー)(MIT Sloan Management Review』という誌面を活用し、包括的、対話的でグローバルな取り組みとして、この記事で提起した多くの問題の検討を行いたいと考えており、本誌は重要な研究パートナーでもある。本プロジェクトのコラボレーション・パートナーは、ニューエコノミーと変化の激しい労働環境においてデジタル・トランスフォーメーションや企業の繁栄を主導するコグニザント社である。私は主席研究員兼客員編集者を担当する。デジタル・エコノミーにおけるリーダーシップの未来を追求する本プロジェクトは、各方面に大きな影響を及ぼすプロジェクトになるだろう。

本記事は世界中の何千人もの方々の目に触れることになるだろう。私は「目まぐるしく変化する世界において優れたリーダーとなるには、『「不変的資質」と「状況に即した資質」の両方が必要である』という考えを検証するために、現在と将来の数多くのリーダーにインタビューしたいと考えている。皆さんにも私たちの取り組みに参加してもらいたい。私が最初に問いかけたのは「自分は2025年のリーダーになることができるだろうか」というシンプルな問いだった。皆さんもぜひこの問いを考えて、一緒に未来のリーダーシップを追求してほしい。

<筆者について>

ダグラス・A. レディ(Douglas A. Ready)氏は、MITスローン経営大学院における組織論の上級講師であり、国際エグゼクティブ開発研究協会(ICEDR)の創設者兼CEO、そして、『MITスローン・マネジメント・レビュー』の客員編集者を務める。

【原文】Leading into the Future (2018年10月15日に『MITスローン・マネジメント・レビュー』に掲載された記事の翻訳。同機関の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Used with permission from MIT Sloan Management Review. All rights reserved.
https://sloanreview.mit.edu/


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