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ストレスを減らすには

【原文】How to Stress Less
ストレスを減らすには
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ストレスに関する統計には実に驚かされる。アメリカ心理学会(APA)による2017年の調査によると、10人中8人近くがストレス性の身体症状を日常的に感じており、半数近くがストレスのせいで夜中に目が覚めるという。また、米国企業はストレスが原因で年間3,000億ドル近くもの損失を被っている。それらの損失は、欠勤、医療費などストレス関連の出費によるものである。

コーチである私たちは、人生の重要な時期にあるクライアントをコーチすることがある。そのようなクライアントは、ストレスに向き合いながら更なる成功や満足を求めており、ストレスを管理する新しい有効な方法を積極的に学ぼうとしている。

そのため、ストレスの定義、ストレスの仕組みや管理方法など、ストレスに関する理解を持ち、ストレスについて積極的にクライアントと話をすることができれば、コーチングの効果をすぐに高めることができるだろう。

ストレスに対する考え方を変える

ストレスといえば、私たちはこのような言葉を口癖のように言っている。

  • みんな目が回るほど忙しい。
  • ストレスが多いのは避けられない。
  • ストレスをコントロールすることはできない。
  • ヒントやテクニックをいくつか学んだら、あとは幸運を祈ってなんとか対処するしかない。

クライアントと会話を始めて間もない頃は、ストレスを表すこのような言葉や、ストレスに関する無用な考え方に注意して、もっと前向きな考え方を持てるようクライアントをサポートするとよいだろう。

たとえば、ストレスは、「あなたはもっと自己認識を高め、自分自身に関心を向けた方がいいですよ」と警告する、いわば「早期警告システム」だととらえて直してみるといいかもしれない。この2つの警告はコーチング・セッションの中で取り上げることができる。そのように考えると、自分に無理な負荷をかけたり、スピードを上げたり、必要以上に頑張ったりするなど、ストレスを感じたときに反射的にとってしまいがちな行動を避けることができる。そうした反射的な行動は、年に1、2回であれば問題ないが、それが日常的なものになってしまうと、悲惨な事態を招きかねない。

ストレスに対する弱さ

ストレスの影響を受けやすいことは弱点ではないということを、クライアントに気づいてもらうことが有益な場合もある。ストレスに弱いということは人間であるということだ。私たちの神経系(特に、厄介な大脳辺縁系)が、その本来の役割どおり、環境の変化に反応しているのである。毎日の生活に忙殺される中で、クライアントはこのような視点を見失いがちである。

1967年に精神科医のホームズとレイが考案したストレスの評価手法「社会的再適応尺度(Holmes-Rahe Life Stress Inventory)」には、最もストレスの多い生活体験が43項目あげられている。離婚、別居、結婚、失業、退職は、どれもトップ10に入っている。これを念頭に置いて、たとえば、うまくいかない結婚生活と部下たちに対するいら立ちには関係がないかどうかを考えてもらう質問を、クライアントに投げかけることもできるだろう。

また、残りの人生を考えたときに不安に感じることがないか、クライアントに考えてもらってもよいだろう。そうすることで、自分をケアする新しい方法を発見したり、ストレスに打ち勝つ力を身につけられるようになるかもしれない。

ストレスを自覚する

自分がストレスに弱い理由を知ることは確かに有益であるが、本当の意味でストレスに打ち勝つ力を身につけたいと思っている人は、それだけでは満足しないだろう。ストレスに打ち勝つ力を高めるには、ストレスの蓄積によって問題が起こる前に、そのサインに早い段階で気づく必要がある。

そのためには、クライアントが将来や過去のことを心配して思い悩んでいるときに、その事実を自覚して心の中を整理する練習をしてもらうとよいだろう。心の反射的な習慣に気づくことができれば、心配するのをやめて深呼吸し、その時に最も重要なことに意識を向けやすくなる。

同様に、つらい感情や体の緊張に注意を払うエクササイズを考え、それをクライアントに実践してもらってもよいだろう。感情も緊張も、長期的なストレスの蓄積を防ぐためには適切な対応が欠かせない。

ストレスを軽減するエクササイズ

多くの人にとって、その場その場で自分の状態に意識を向けるスキルを身につけることは、容易なことではない。身体をリラックスさせるスキルは、1日16時間働くことよりも難しく感じられるかもしれない。そのため、意識的に時間を確保して練習するようクライアントを促すことが重要である。

忙しいクライアントにとっては、時間をかけて意識的なエクササイズを行うことは、最初は面倒なことに思えるかもしれない。しかし、長い目で見れば、このようなエクササイズをすることは、困難な状況で自分の力を発揮したり、ストレスの長期的な影響を防ぐことができることを、ほとんどのクライアントは理解してくれる。

ここで、ストレスを減らし、将来のストレスの蓄積を防ぐのに役立つ、効果のあるエクササイズを3つ紹介しよう。それは、段階的筋弛緩法、腹式呼吸、マインドフルネス瞑想である。

コーチングの分野にかかわらず、どのコーチも強いストレスを感じているクライアントに出会うことがあるだろう。効果的な質問や聞くスキルを使うだけでなく、ストレスに関する知識を共有し、クライアントの考え方に対応しながら、気づきを促す。そして、相手の許可を取ったうえで簡単なエクササイズを行う提案をすることで、クライアントの生活に大きなプラスの影響を与えることができるだろう。

<筆者について>

エリック・ラーソン(Eric Larson)氏は、米国ミネソタ州ミネアポリス在住のウェルネスコーチ。これまでにフォーチュン500のエグゼクティブをはじめとする2000人を越えるクライアントに向けて、ストレス、ワークライフバランス、マインドフルネスにフォーカスしたコーチングを実施している。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】How to Stress Less (2018年11月13日にICFCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。)


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