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クライアントのニーズを知るためにコーチがやってしまうこと、やりたいこと
2019年03月15日
私たちはコーチとしてクライアントと会話するとき、さまざまな役割を担うことになる。たとえば、チアリーダー、思考パートナー、扇動家、客観的な観察者、フィードバックの伝え手、ブラインド・スポットの指摘役などである。私たちコーチの役割は、コーチング・セッションの回数を重ねるうちに変わっていくこともあるが、1回のセッションの中で変わることも珍しくない。クライアントが話す言葉とクライアントが語っていないことに注意することで、私たちは直観的に自分の役割を切り替えることができる。
クライアントとの会話中、ほとんどの場合、役割の切り替えはスムーズに行われている(会話をリードするのはクライアントである)。切り替えのきっかけとなるのは、クライアントとの関係性、クライアントが出す明白な合図、クライアントとコーチの関係に関する新たな理解、直観、豊富な経験、またはこれらの組み合わせであると考えられる。
しかし、その場で役割をスムーズに切り替えることが困難なこともある。
陥りがちな悪循環
私の場合、クライアントのニーズを直観ですぐに予想できないとき、次のような悪循環に陥ってしまう。
クライアントが話の焦点を変えるとき、役割を変えてほしいという合図をさりげなく出すことがある。私はその合図を見逃したり、誤解したり、次にどこに進めばよいのかわからなくなることがある。クライアントはそのまま話を続けるが、私の意識はあらぬ方向に向かい、次の完璧な質問を必死に考え始める。目の前のクライアントではなく、その1歩か2歩先に注意を向けようする。現在の会話に集中しようと努力する一方で、頭の中では次に打つ手を考えるために、索引カードをごそごそと探し回っているような状態になる。目の前の人をコーチングすることに専念していたはずが、頭の中でのコーチングに変わってしまうのである。皆さんも身に覚えはないだろうか。
頭を駆使していては有益なコーチングを始められない、と言っているわけではない。本当の意味での変化を促す会話は、コーチングが何か深遠なことに基づいているときに始まる、と私は考えている。
悪循環に陥ったとき、選択肢は2つある。1つは、タイヤが空回りして泥にはまって動けなくなるまで、このままアクセルを踏み続けることだ。ただ、そうしたところで、行き詰まって疲弊するだけである。
あるいは、悪循環に陥っていることを知らせる警告灯が点灯していないか注意して、アクセルから足を離して停止することもできる。
本質を問う質問
ここで試してもらいたいのは、深呼吸し、少し落ち着いて、運転手は自分ではないことを思い出すことである。そして、クライアントに「本当に必要なことは何ですか」という質問を投げかける。そして、クライアントの話に集中して耳を傾け、本質的でないニーズの下に隠れた本当のニーズを聞き取り、その流れに沿って会話を進めていく。
私たちコーチができる最も効果的なことは、クライアントが必要としているものを予想するのに時間をかけるのではなく、クライアントのニーズについて質問することではないだろうか。クライアントにハンドルを握らせ、運転をすべてクライアントに任せるとよい。つまり、頭の中の声を鎮め、自分は会話に貢献しているだろうかという疑いを払拭し、自我を抑えてクライアントのために尽くすのである。
1つ課題を出そう。コーチングの最中や誰かと話しているときに、相手のニーズを探るのが難しいと感じたら、「今、本当に必要なことは何ですか」と質問してみてほしい。意外な答えが返って来るかもしれない。そのあとは、そのニーズについて話すことに注力していけばいい。
<筆者について>
ローザ・エディンガ(Rosa Edinga)氏は、リーダーシップ・コーチ、およびファシリテーターであり、ソートパートナー(先進的な考えを主導するパートナー)であると自らを評す。コーチング/コンサルティングを提供するFiamma Coaching and Consultingの代表を務める。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】What Do They Really Need? The Most Powerful Way to Assess Your Role as a Coach(2018年11月26日にICFのCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。)
"First published in Coaching World in November 2018, published by the International Coach Federation. Copyright Fiamma Coaching and Consulting/Rosa Edinga."
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