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コーチング文化は組織を変容させ命を救う

【原文】Building a Coaching Culture that Changes—and Saves—Lives
コーチング文化は組織を変容させ命を救う
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コーチングの導入がもたらした受賞

アイルランドのヘルスサービス・エグゼクティブ(Health Service Executive:HSE)社は、12万人以上の従業員を擁し、国全体に医療を提供している。その人事部門では、独自の人材開発アプローチを採用しなければならない局面にあった。同部門は2011年にコーチングを導入し、それ以降、さまざまな形で変革的な成長を遂げてきた。

HSE社は、当初コーチングの導入を検討しているだけにすぎなかったが、次第にコーチングを最も重視する組織へと変化していった。その結果、HSE社は2018年にICF国際プリズムアワード(ICF International Prism Award)を受賞した。この賞は、国際コーチング連盟(ICF)が強いコーチング文化を持つ組織に与える最高の賞である。ICFのプリズムアワードは、目に見える大きな成果をあげ、厳しい職業的基準を満たし、重要な戦略的目標を達成し、組織文化を形成した最高レベルのコーチング・プログラムを実践した組織を表彰するものである。

ICF認定コーチング・プログラムの開発

2011年、HSE社の人事部門のディレクターであるロザリー・マニオン(Rosarii Mannion)氏は、HSE社が業界固有の課題に直面していることに言及した。その課題とは、「医療業界など、必ずしもクリエイティブではない労働環境において、どのようにして従業員に創造性を発揮させることができるか」というものである。HSE社は、従業員が自ら潜在能力の枠を解放し、創造力と知力を活かして問題を解決することにより患者の対応を改善する取り組みを開始した。マニオン氏と彼女のチームの情熱に支えられ、コーチングはHSE社にとって欠かせないものとなった。それはHSE社が現在実施している3年間の人事戦略計画にも表れている。

HSE社ではICFの基準と「倫理規定(Code of Ethics)」に基づき、コーチング活動を管理し主導するための運営プログラムを策定した。このプログラムには以下のものが盛り込まれている。コーチングポリシー、戦略に関する文書、申込書、合意書、進行表、コーチ・トレーニング時間の規定、継続的な能力開発セッション、コーチのメンタリング、コーチングのスーパービジョン、エバリュエーション、ICFのメンバーシップである。HSE社のすべてのコーチは、同社独自のICF認定コーチ・トレーニングを修了しなければならない。

コーチング文化による能力開発と死亡率の低下

マニオン氏は次のように語っている。「コーチングへの投資は、私たちのリーダーシップ戦略の重要な要素であり、従業員はこの投資から多大な恩恵を得ている。そしてこのことは、国民と患者により優れた体験をもたらしている。」

HSE社の人事戦略は、これまでに8,200人以上の従業員に対して変革的なコーチングに取り組む機会を提供してきた。すべての従業員は、プロフェッショナルなコーチングを受ける機会があり、チームや組織にとって重要なタイミングでサービスを見直したり(チェンジマネジメントの取り組みなど)、個人や職業上の能力に磨きをかけることが奨励されている。その能力には、例えば、停滞からの脱却、人との対立への対処、人やチームの管理、ワークライフバランスの追求、ストレス・マネジメントなどがあげられる。各組織のリーダーは、打ち合わせ、状況報告、戦略会議でコーチングを利用している。コーチングは管理職レベルで、採用から退職にいたるまで利用されているのである。

ある従業員は次のように語っている。「私は労働衛生部門に配属されたときにコーチングを受けた。仕事でショッキングな出来事を経験した後のことだった。コーチングのおかげで、自分にとって大切なことは何かを考え、前向きに問題を解決していけるようになった。コーチングがなかったら、今もまだ体調不良で休職していたと思う。」

HSE社がコーチングを導入して以来、従業員の体調不良による休暇の取得率は大幅に減少した。3分の2の従業員が、コーチングによりチームワークが強化されたと答えている。また、患者にケアを提供する最前線の従業員は、ストレスの多い状況に余裕を持って対処できるようになったと答えている。これは医療業界における大きな貢献である。一方で患者の死亡率も低下したという。これはまさに、HSE社の強いコーチング文化が人命救助につながっていることを示している。

ニーズの変化に対応する

HSE社では、リーダーシップ・アカデミー(Leadership Academy)にも力を入れている。これは従業員に求められる技能と行動様式を調査し検討する取り組みであり、アカデミーでは一貫してコーチングが利用されている。リーダーシップ・アカデミーを通じて醸成されるコーチング文化が、組織のあらゆるレベルを支えている。

プリズムアワードにノミネートされたHSE社のコーチ、アイリーン・ハリス(Irene Harris)氏(ICF ACC資格)は、「コーチとして自分が高く評価されていることを感じる」と語っている。

HSE社は、今後も引き続き従業員のニーズに合わせたコーチングに取り組んでいくとともに、コーチたちに効果的な能力開発の機会を提供し、それをサポートしたいと考えている。HSE社のリーダーたちは、組織内で変わり続けるニーズに確実に対応できるように、絶えずコーチとの信頼関係を築いている。

筆者について

サバンナ・パットン(Savannah Patton)氏は、国際コーチング連盟(ICF)の広報担当であり、ケンタッキー・スポーツ・ラジオのフリーライターを務める。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Building a Coaching Culture that Changes--and Saves--Lives(2019年1月28日にICFCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。)


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