Global Coaching Watch では、海外コーチのブログ記事の翻訳を中心に、世界のコーチング業界のトレンドやトピックスをお届けします。
コーチングを成功に導く「7つのギア」
2019年07月19日
コーチングの会話を自動車の運転にたとえて考えてみてほしい。まず、クライアントが目的地をあなたに告げる。あなたは、質問をしたり相手を観察したりしながら、クライアントが選んだルートで目的地まで車を走らせる。この会話を運ぶ車は標準的なマニュアル車だ。車にはギアがいくつかあるのと同様に、コーチングの会話にもさまざまな段階がある。
しかし、ローギア、セカンドギア、サードギア、トップギアの順に次々とシフトチェンジできるとは限らない。車の運転と同じように、「エンジン」の回転数、つまりクライアントのモチベーションの強さに応じて、ギアを上げたり、下げたり、そしてまた上げたりしなければならないからだ。
ローギア - 合意をとる
この段階ではエンジンはまだ冷えていて、低速状態であるが、必ずこのギアから始めなければならない。ここでは、「はい/いいえ」で答えられる簡単な質問をする。例えば次のような質問だ。
- 今日のコーチングは45分間の予定でしたね。予定どおりに進めていいですか?
- 緊張していませんか?始めても大丈夫ですか?
- 始める前に何か気がかりなことはありますか?
新しいクライアントと初めて話すときは、コーチング契約について説明し、クライアントの疑問にすべて答える必要がある。
セカンドギア - 踏み込んだ話に入る
簡単な質問をしたら、次はクライアントが心から正直に話せるよう後押しするとよい。つまり、頭で考えた単に論理的な話をしてもらうのではなく、心が感じることを話してもらうのである。次のような質問を投げかけ、会話のエンジンをさらに温めよう。
- 前回のセッション以後、一番話したいことは何ですか?
- 今日はどんなことを話したいですか?
- 先週決めた目標の達成状況はどうですか?
サードギア - クライアントを駆り立てるものを探す
スピードが出てエンジンが温まったら、次はクライアントの人生にとって今日は何が最も重要かを注意深く検討する。クライアントを駆り立てるものを明らかにする質問をして、キーとなるモチベーションや大切にしていることを見つけ出そう。
- ここまでに話したことの中で、今日のあなたにとって最も重要なことは何ですか?
- 今、何を変えれば最も大きな変化を生み出せるでしょうか?
- それを達成できたら、どのような気持ちになると思いますか。
フォースギア - 言葉を書き留める
この段階では、クライアントの目標をクライアント自身の言葉で語ってもらい、それをメモする必要がある(記憶力に絶対的自信があるなら話は別だが)。ここでのポイントは、クライアント自身の言葉をそのまま的確に書き留めることだ。次のような質問をするとよいだろう。
- 今日の会話の目標は、簡単に言うと何でしょうか?
- キーワードは「XXX」だと思いますが、これはあなたの目標をどれだけをよく表していますか?
トップギア - 行動を考える
ここまでの質問はどれも考えを明確にすることが目的だったが、次は先ほどメモしたことに基づいて行動を考える段階である。次のような質問をするとよいだろう。
- 目標に向かって前進するために、今週取り組める最も簡単で、最も現実的なステップは何ですか?
- この目標を達成する自信はどれくらいありますか?
- 達成するためには、どのようなサポートが必要ですか?
ニュートラルギア - 確認する
マニュアル車を運転する場合、厳密にはニュートラルギアを経由して他のギアに切り替えなければならない。同様に、コーチングの会話では、ギアをシフトするときには必ずクライアントに、次の段階にシフトする為にエンジンの準備ができているかを確認する。これは次のような簡単な質問でできる。
- 今、どんなことを感じていますか?
- ここまでの話で必要なものは得られていますか?
- 今のやる気レベルは、どれくらいですか?
バックギア - 進路を変える
会話中、クライアントは、自分自身、話の方向、自分の目標について疑念を口にすることがある。その場合は「バックギア」に切り替えて、クライアントがネガティブな状態から脱却できるようサポートしよう。次のように端的かつ穏やかに質問するとよいだろう。
- 実際のところ、それはどの程度正しいのでしょうか?
- この状況に対して、別の見方はできるのでしょうか?
- 今、何を変えたらあなたの気持ちがもっと楽になるでしょうか?
以上、「7つのギア」について簡単に説明してきた。これはあらゆるコーチングの会話において再現可能な手法である。またこの手法を使うことによって、自由度があり効果的なコーチングを実践できる。会話をする際にはこの7つのギアを意識することで、セッションの進行とクライアントの前進を妨げることなく、「ギアを上げる」タイミングを常に正確につかむことができるだろう。
【筆者について】
シンディ マッコイ(Cyndi McCoy)氏は『The Science of Personal Coaching』の著者で24:7 Friendの創設者。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Shifting through the Seven Gears of a Coaching Conversation
(2019年4月22日にICFのCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。)
この記事を周りの方へシェアしませんか?
※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。