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なぜイエスマンはすぐれたリーダーになれないのか

【原文】The Danger of Saying Yes: How Doing It All Minimizes Your Leadership
なぜイエスマンはすぐれたリーダーになれないのか
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リーダーはなぜ「はい」と答えてしまうのか

私のクライアントである経営幹部たちは、大変な重責を負うことを期待されている。組織の生命線に関わる大きな任務をいくつもこなし、さまざまな業務を率先して遂行しなければならない。優れたリーダーはより大きな成果を挙げることを常に求められている。

内的な動機、周囲の期待に応えなければならないという重圧、そして人に好かれたいという欲望によって、私たちはつい「はい(イエス)」と答えたくなる。その結果、もし全ての業務を完璧に遂行できて、周りから信頼され、一目置かれるリーダーになれたら、さぞ気分がいいだろう。

しかし、先日ある経営幹部とこのような傾向について話していたときに、彼は「何にでも『はい』と答えるのは、利己的な行為であると気付いた」と私に話した。

経営幹部があらゆる仕事を自分で引き受けてしまった場合、すべてをうまく処理し、重要な課題に十分注力することはできない。本当に重要なことを成し遂げるためのスタミナを維持することは容易ではない。 

一方で、組織全体が仕事を請け負いすぎても、重要な戦略を進めることは不可能である。多くの場合、緊急の問題解決や日常業務への対処が優先されるためだ。

では、なぜ多くのリーダーは第一声ですぐに「はい」と答えてしまうことが多いのだろうか?

チームプレーが好きだと言うリーダーもいる。しかし、多くのリーダーは「はい」と答えたほうが「いいえ」と答えるよりも楽だと考えているし、「いいえ」と答えた場合、好感度や、会社のトップ層への昇進に響くと考えている。このような動機は、結局のところ、どれも利己的なものであり、ビジネス上の決定を正しく行うことよりも、個人の地位や承認に関係している。

何に対しても「はい」と答えると、組織やリーダーシップに悪影響が及び、ビジネスの目標達成が難しくなる。その理由を以下に説明しよう。

問題点1:売上高の減少

ハーバード・ビジネス・レビューの記事「Stop Chasing Too Many Priorities(優先課題を増やしすぎるな)」では、組織の優先リストの項目の量と売上高成長率の低下の間に相関関係があることを明らかにしている。優先課題を1~3個程の重要なものに絞ってリストの項目を少なくすることで、売上高は増加する。つまり、組織の重要な戦略に集中すればするほど、ビジネスは健全になるのである。

問題点2:活動の焦点が定まらない組織になる

優先課題が多すぎると、リーダーとそのチームの注意が散漫になり、焦点が定まらなくなる。何もうまくいかず、不要な活動が優先されることも少なくない。組織の重要な戦略的取り組みが進んでいない場合に、私たちは組織に対するコーチングを依頼されることが多い。これは組織が設定している優先課題が多すぎるためである。難しい決断ではあるが、リーダーシップチームが活動の焦点を定めれば、組織全体で戦略が進展し始めるはずだ。

問題点3:リーダーシップが損なわれる

一人であらゆる仕事を引き受けながら、組織を成功に導くことは不可能だ。リーダーは会議から会議へと駆け回り、仕事に押しつぶされそうになりながら、自分を頼りにしている人にストレスを与える結果になってしまう。

そうなると何もうまくいかず、忙しくて、自分を必要としている人たちに注意を向けることができない。疲れ果ててしまい、状況をコントロールできない。周囲の信用を失い、あなたの自信が大きく損なわれるかもしれない。いつの間にか悪循環に陥り、軌道修正するのも難しくなる。

イエスマンから脱却するために

要望の背景を理解する

要望の背景を明らかにする質問をすることで、その要望についてよりよく理解できるようになる。それだけでなく、多くの場合、要望した人自身の理解も深まる。そうすることで、要望の内容が変わり、自身が関与する必要がなくなったり、その件について最適な他の人が明確になったり、新しい解決策が見つかって求められていることが解決したりする。

デフォルトの答えを変える

私のクライアントが、デフォルトの回答を「はい」から「考えさせてください」に変えたところ、周囲の人々はその変化に気付いたという。締め切りに間に合わず、いつも疲れ果てていて感情的だったリーダーが、冷静で思慮深く信頼できるリーダーに変わった。

ルールを作る

「はい」と答えるべき案件かどうかを常に厳しく見極め、会社の最も重要な戦略に沿った新しいアイディアや要望だけを実行する。そのようなルールを徹底しなければ、優先課題の数が何倍にも膨れ上がり、知らないうちに不要な活動に労力をつぎ込むことになる。

そして、経営幹部、CEO、取締役会を含め、組織の全レベルのリーダーは、自分の上司や部下と足並みが揃っているかどうかを常に意識しなければならない。


最近、ある政府系保険会社のバイスプレジデントから次のような話を聞いた。「以前は何にでも『はい』と答えていたが、今は重要なことだけに『はい』と答えている。本当に重要なことにだけ集中しているため、より優れたリーダーになることができた。」

新しい計画の実施に同意する前に、その計画が最も重要な優先課題に沿っているかどうかを確認するルールを作ることで、リーダーと組織は大きく変化する。成果を挙げるために重要なことを全員が知っていれば、リーダー、チーム、組織は落ち着いて大切なことに集中し、より大きな成功を収められるだろう。

【筆者について】

ジャクリーン・ブロドニツキ(Jacqueline Brodnitzki)氏は、Leadership Coachingのディレクターとして、経営層を対象に事業展開の加速化をサポートしている。前職はエグゼクティブ・コーチングとコンサルタントを提供する Conscious Successの代表取締役。『Conscious Success: The 5 Step Process To Dissolve Stress, Increase Productivity and Find Your Flow At Work』の著者。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】The Danger of Saying Yes: How Doing It All Minimizes Your Leadership(2018年11月20日にBatesのResearch and Resourcesに掲載された記事の翻訳。Bates Communications Inc.の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated with permission of © Bates Communications 2019


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