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もし、上司からかなり低い評価をもらったら
2019年08月30日
たとえ経験豊富な上級管理職でさえ、上司から低い評価をされて衝撃を受けることがある。輝かしいキャリアを持ち、周囲からの評判が高い人ならば、なおさら驚くだろう。そのときの対応に仕方によって、出世コースから外れるか、成功に向けてさらに加速できるかどうかが決まる。
360度評価で、同僚、部下、さらには自分自身よりも低い評価を上司から受けた場合、どのように対処すれば前進の勢いを保てるだろうか?その方法は容易には見つからないかもしれない。私たちは、そのような場合に挫折する人を見てきたし、自ら前進のチャンスをつかむ人も見てきた。その中でわかったのは、リーダーが再び将来に向けて前進していくためには、状況把握と会話が最善の方法であるということだ。
2人のリーダーの異なる反応
非常に優秀なITエグゼクティブのショーンは、ベイツ・コミュニケーションズのフィードバックレポート、ExPI™を見て、上司の評価に驚いた。彼は、業績において高い評価を受け、最近昇進したばかりであったため、自分のリーダーとしての振る舞いに対する上司の認識が、同僚や部下の評価や自己評価よりも著しく低いことにショックを受けた。
「あの人(上司)に何があったのだろうか?」
というのが彼の最初の反応だった。
会社の期待の星であるメアリーは、非常に優秀な役員だった。メアリーの上司は最近、彼女の責任範囲を大幅に拡大し、彼女が引き継いだばかりの部署の業績を改善するよう指示した。その部署は機能不全に陥っていた。メアリーも、上司の評価が他の人よりもかなり低いのを見て驚いた。
「私のどこが悪かったのだろうか?」
というのが彼女の最初の反応だった。
ある点では2人の反応はまったく違っていた。ショーンは自分に過剰な自信を持っており、上司を含め、自分は誰よりも物事をよく知っていると思う傾向があった。上司が間違っているに違いないと考え、自分が厄介事に巻き込まれることはないと思っていた。
一方、メアリーは謙虚すぎて、自分を力不足と思っていた。彼女はほとんどの面で自分を高く評価していたが、上司がつけた低い点数を見ると、自分は失敗しているに違いない、自分が悪いのだと考えた。
だが、2人の反応には共通点もあった。2人ともすぐに、上司の低い評価を問題のサインと解釈した。おそらく自分の仕事には何か重大な問題があり、それを自分に伝える手段として、上司は評価を使ったのだろうと考えた。
まず状況を把握する
上司からの低い評価に動揺するのは理解できる。昇進したばかりの優秀なリーダーならなおさらだ。しかし、その評価をもっと客観的に見ることで、上司からの低い評価の原因が、評価を受けた本人以外のところから、いくつも見つかる場合がある。低い評価を見直すことで、役に立つ知見が新たに得られる可能性がある。
愛の鞭
ショーンとメアリーに「あなたの上司はとても協力的であり、善意で厳しく評価することによって、あなたの成功を助けたいのではないでしょうか」と聞くと、2人はともに笑顔で「そう思います」と答えた。
この問いかけにより、二人は上司の評価を「別の仕事を探すべきだ」という意味ではなく、「あなたに成功してもらいたいから、改善点を指摘した。私はあなたの力になりたいと思っている」という意味で捉えられるようになった。
上司は部下の優れている点と変えるべき点をはっきりと伝えたいと思っていることが多い。そのため、5段階評価では、1~5までのスコアをわざとすべて使ってみたり、1と5だけを使用したりする。
これは上司が自分のメッセージを伝えるためだ。
強みと成長課題を細かく明らかにするのが目的ではない。そうではなく、成功するリーダーになり、重要な調整をすばやく出来るようになってほしいと考えている。上司は部下がさらなる成功に向けて奮起すると信じ、「愛の鞭」を振るうべきだと考えているのである。
他人の不満に対する反応
上司による低い評価には、本人が直接観察したことだけではなく、他の人が上司に話したことが反映されていることも多い。
多くの組織では、人に対する不満は、本人に直接伝えず、第三者に伝える形が取られている。一方、部下は上司のところへ直接話しに行くことが多い。そのため、上司は誰かの行動についての説明を間接的に聞いていたり、嫉妬や競争などのネガティブな力の影響を受けている可能性がある。また、多くの場合、上司は不満の矛先をそらしたり、不満が本当かどうかを確認したりするための手段を講じていないため、その人の評価に悪影響が及ぶのを防げていない。
上司から低い評価を受けて驚いているリーダーをクライアントに持った場合、私たちはよく
「その評価には、上司が実際に見たことがどれだけ反映されていると思いますか?あなたに対する他の人の不満がどれだけ反映されていると思いますか」
と質問している。もし上司の認識が他人の不満の影響を受けている場合、行動を起こす前にその事実を知る必要があるからだ。上司にも同じ質問をするとよいだろう。
具体的にどう質問するか?
質問は具体的なものにすることをお勧めする。たとえば、リーダーに次のように質問することを勧めている。
「『正直で約束を守ることを大切に考えている』という項目で『2』と評価されていますが、これは私が正直に接していなかったり、約束を守らなかったからでしょうか? もしそうであれば、いくつか例を挙げていただけますか?私自身はこの項目はかなり高く評価したので。」
上司が例を挙げることができないのであれば、「約束を守らない人物だ」という認識をなぜ上司が持っているのかを尋ねるとよい。リーダーと上司の関係によっては、上司が他人の影響を受けていないか直接尋ねたり、誰かの名前を挙げたりすることは、危険すぎる可能性があるため、状況に応じて行ってほしい。
上司の上司に対する反応
上司の評価は、その上司の上司からのプレッシャーにも大きく左右される。つまり、ショックを受けるほど低い評価は、上司の上司が突然、上司に新たな要求をした結果かもしれない。利益が急に下がったり、大口顧客が競合他社に乗り換えたりしたら、上司は優先課題を変えなければならないだろう。このような場合、評価される本人の行動やパフォーマンスよりも、本人がよく知らない新しい優先課題のほうに重点が置かれる。もちろん、メッセージを伝える方法として、このようなやり方は最善ではないが、上司は評価を記入するときになって初めて、部下の改善点に気付いたのかもしれない。
昇進に向けた準備
また、昇進に向けた準備のために、上司が通常よりも厳しい評価を与えるという例もよく見られた。上司は、現在の仕事のためのスキルや行動には十分満足していても、次の仕事のために別の行動を身に着ける必要があると思っているかもしれない。360度評価を実施する前に、上司はそのことを本人に明確にしていなかった可能性がある。もしかしたら、上司は昇進候補に挙がっていることを本人に言うことさえ許されていないのかもしれない。いずれの場合も、結果は予想された評価よりも低くなる。
評価基準の違い
最後に、評価基準が非常に厳しい上司もいる。誰にでも改善点はあるし、完璧な人はいないと思っているため、「5」をあまり与えない人もいる。自分に対して厳しかった昔の自分の上司に感謝し、真似をしているのかもしれない。5段階評価で「3」の評価を受けてもまったく問題視されない文化の中で育ったのかもしれない。あなたは「3」を低い評価だと思っていても、上司は期待どおりの成果を出していると考えている場合もある。
上司と話す
評価が低い理由が何であれ、それを利用して成功を目指すには、上司と話して次に何をするべきかを知る必要がある。
- 否定的な評価を受けた直後に上司と話そうとしないこと。
時間をかけて考えをまとめ、会話の焦点を絞って建設的な計画を立てよう。 - 上司の評価に感謝する。
時間を使って評価をしてくれたことに対して、まずお礼を伝える。 - 会話をコントロールする。
上司と会話する目的は、さらに情報を入手して状況を把握し、評価を理解することだ。他の人が自分をどの面で高く評価しているかに注目するのではなく、まず評価からわかったこと(2~3の主な長所と伸ばすべき分野)を共有しよう。
具体例を聞いたり、行動を変える方法についてアドバイスを求めたりして、上司からの評価が2~3となった対処したい項目について、具体的な意見を求めるとよい。上司にフィードバックレポート全体を見せたいと思うかもしれないが、相手を身構えさせてしまい、逆効果になる可能性があるため、それは我慢してほしい。 - 今後の計画を立てる。
自分の強みを生かして能力開発に取り組むために、今後数週間で何をするか、具体的にいくつか例を挙げ、それを現在のプロジェクト、会議、プレゼンテーションと関連付ける。最後に、作成した計画に対する意見を求める。
このようなアプローチを取ると、多くの場合、リーダーは非常に生産的な議論ができる。上司は「ああ、心配することはない。仕事の優先順位を決めやすいように、少し厳しく評価を付けただけだよ」と笑って話したり、「責任の範囲が広くなったから、これまでとは違うスキルや行動に注意してほしい。あなたが少し苦労しているのを見て、学習速度をもう少し上げられるように、取り組むべきことを念押ししたかっただけだ」と言ったりするだろう。
「私の期待に応えてほしい。そのためには状況を変える必要がある」と言われた場合、あなたは、非常に具体的な評価をもらえたことになり、行動をすぐに起こすことができるだろう。
前向きな取り組みを
上司の低い評価には、多くの要因が関係している可能性がある。低い評価を受けるのは辛いことだが、多くの場合、その評価は好意的な意図によるものであるか、他人の意見に大きく影響されたものである。いずれにしても、改善すべき点について上司と建設的な話し合いをする機会だと考えるのがベストである。上司があなたを傷つけるのではなく、助けたいと思っていると想定して、受けた評価を自分のために活用するとよいだろう。
【筆者について】
マイケル・セイチック(Michael Seitchik)氏は、米国ベイツ・コミュニケーションズの研究・評価部門のディレクターとして、定評のある評価や重役のプレゼンスを高めるガイダンスを提供している。前職ではRHR Internationalの上級役員教育部門の取締役社長を歴任。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】How to Respond to Surprising Negative Feedback: What To Do When Your Boss Rates You Lower Than Everyone Else(2018年12月11日にBatesのResearch and Resourcesに掲載された記事の翻訳。Bates Communications Inc.の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated with permission of © Bates Communications 2019
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