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良い聞き手は何を聞いているのか
2019年09月13日
スピーチに関する教材はいくらでもあるし、話し上手になるためのコツもすぐ見つかる。だが、良い聞き手になるにはどうすればよいのだろうか?また、なぜ良い聞き手になるべきなのだろうか?
良い聞き手になるには?
スティーブン・コヴィー(Stephen Covey)氏は、著書の『7つの習慣』の習慣5で「まず理解に徹し、そして理解されることに徹する」と述べている。それは、まず聞いてから話す、と言うこともできる。コヴィー氏によると、人は相手の話を聞くのもそこそこに、自分の視点から助言したり、意見を述べたりしがちである。その理由は、私たちはえてして、相手の話に自分の過去の経験を重ね合わせてしまい、相手を意識的に理解しようとしていないからである。
だが、ビジネスでも私生活でも、効果的にコミュニケーションを行うには、相手の言葉に積極的に耳を傾け理解することが欠かせない。『Co-Active Coaching(コーアクティブ・コーチング)』で、ヘンリー・キムジーハウス(Henry Kimsey-House)氏とカレン・キムジーハウス(Karen Kimsey-House)氏は、聞き取りの3つのレベルと聞くスキルを育てる方法について説明している。
リスニングの3つのレベル
レベル1
レベル1は、聞き手の関心が自分自身の考え、意見、判断、感情に向いている聞き方である。人は自分が聞いた言葉を自分の経験や欲求と関連付ける。このタイプの聞き取りは、意思決定に直面している場合や、情報を収集する必要がある場合に適している。
たとえば、車を購入するときは、このレベル1の聞き取りで販売員の話を聞き、車の特長がニーズと予算にどれだけ合っているかを確認する。
レベル2
レベル2は、コミュニケーションを大きく発展させる聞き方である。聞き手は話し手と会話に完全に注意を向ける。話の内容を聞くだけでなく、話し方にも注意を向ける。声の調子やボディランゲージ、表情などに気を配る。これはコヴィー氏が言うところの共感的傾聴(Empathic Listening)であり、聞き手が話し手の言葉を言い換えたり、話し手の言葉を繰り返すことをを含む。
このレベルの聞き手は、頭の中の雑音を取り除き、周囲の雑音を払いのけることができるため、相手の言葉に耳を傾け、反応の仕方を選び、自分の反応が話し手に及ぼす影響を評価することができる。レベル2の聞き方は、プロのコーチがコミュニケーションに使うスキルであるが、両氏はさらに上のレベルの聞き取りがあると主張する。
レベル3
レベル3の聞き方は、まったく新しい認識を会話にもたらす。レベル2の聞き方を完全に実行するだけでなく、直感を使い、開かれた態度で、種類を問わずより多くの情報を受け取る。これは会話だけでなく周囲の状況にも注意を向けることを意味する。
直感は確かな事実に基づいていないため、直感を使った返答は誤解を招くおそれがある。しかし、直感の概念は実際には単純であり、コミュニケーションに役立つ資産となり得るものである。たとえば、相手の話を聞いているときに直感が働いたら、感じたことを相手に伝えるべきかどうかを考えるとよいだろう。ただし、それにこだわりすぎるのは禁物である。
自分の直感が正しいと主張するのではなく、話し手に与える影響を考え、会話の次の行き先を意識する。
たとえば、「結果に満足されていることはわかりました。しかし、何か別のことでお悩みなのではないでしょうか」と言ってみるとよいだろう。すると、「いや、それはちょっと違います」とか「ええ、実は私たちの計画についてお話ししたかったのです」といった返事が来るかもしれない。直感が正しいかどうかは問題ではない。重要なのは、会話への影響だ。
聞くスキルは育てられる
聞くスキルを伸ばすのには時間がかかるが、練習は毎日できる。このスキルは他人と交渉したり相手を説得したりするときに特に役立つ。聞くスキルは信頼と理解を生み出すからである。理解することと合意することは同じではない。相手と同じ意見ではなくても、考え方を理解することは可能だ。良い聞き手になるメリットの一つは、それを通じて相手に関する情報と理解し合う時間を得ることができ、それにより、相手の助けになるような対応をすることができる。そして、会話をさらに展開していけるのである。
筆者について
クラシミール・カシノブ(Krasimir Kashinov)氏はビジネス・ストラテジーやビジネスの運用を得意分野とする経営コンサルタントであり、ICF認定コーチ。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】The Art of Listening(2019年7月22日にICFのCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。)
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