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CEOは何も言えないときに何を言うべきか

【原文】CEO Communication: What to Say, When You Really Can’t Say
CEOは何も言えないときに何を言うべきか
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CEOや経営幹部にとっての「よくあるジレンマ」のようなものがあるとすれば、それはある時点で公表することになる機密情報の扱い方を決めることだろう。組織のトップに近い者ほど、何も情報を開示できないときに、何を言うべきかを知っておくことが重要だ。

多くの場合、少人数のチームでその対処ができるし、それが適切な対処方法だ。CEOは、案件について落ち着いて慎重かつ内密に検討し、解決の手助けをしてくれる信頼できる仲間を持つべきである。

信頼できるアドバイザーと呼べるのは、機密性を保てるだけでなく、人々を不安にさせたり憶測を招いたりすることなくコミュニケーションを取る方法を理解している人物のことである。機密性を要する難しい問題に組織内で対処する際には、機密性の確保と情報へのニーズとの間でバランスを取る必要がある。

何も言わないのは戦略的とは言えない

機密情報は組織の変革に関係するものが多い。変革は絶えず行われている。計画を策定して展開するとき、CEOは関係者に情報を与え、激励し、組織の連携を図る必要がある。合併、買収、株式上場、製品発売などの前は「沈黙期間」を設け、一部の関係者にのみ情報を共有する。機密事項の協議内容が漏洩するのを防ぎ、意思決定のための機会を確保しながら、案件の公表方法を策定する。

新たな変革を実行するときには、変革の準備ができていて、率先して透明性を確保する姿勢を見せる必要がある。そして、その変革が組織の将来のために必要であることを人々に理解させ、計画ができていることを伝えて安心させることが求められている。

「守るべきルールは、情報の機密性を損なうことなく、適切に透明性を確保することだ」

組織で起きていることについては、たいていの場合、噂が広まる。何も言わなければ、人々は情報の不足を自身の憶測で埋めるだろう。そして、多くの人は、これから状況が良くなることは想像しないのである。

リストラ、再編、採用と退職は、それぞれ少しずつ意味が違うが、どれも変革である。これらの変革は予想できるものであるが、従業員には恐ろしいものに見えることが多い。そこで、CEOはいくつかの原則に従う必要がある。

レイオフや退職など、従業員に関する微妙な問題を伝える際は、敬意を持って必要なことだけを簡潔に共有することが重要だ。合併など重大な発表を行う場合は、将来について明るい見通しを示し、なぜそれを実施するのかを説明し、できるだけ多くの情報を提供することを約束するべきである。

「何も言わないのは戦略的とは言えない」

もしあなたがCEOなら、精緻なコミュニケーション計画を立てるようチームに求めるべきである。そしてこれらの原則を理解したうえで、全力で取り組むべきだ。

誰が、何を、いつ、どのようにして新しい情報をそれぞれのオーディエンスと共有すべきかを必ず考えるとともに、それに反応したり対応したりする機会を相手に与える必要がある。

このような手順を、あらゆるチェンジ・マネジメントの標準的な業務手順にしなければならない。意思決定は始まりにすぎない。計画をうまく実行できるかどうかすべては、コミュニケーションの質にかかっている。

危機的状況において言うべきこと

危機的状況においては、それよりもはるかに厳しいハードルをクリアする必要がある。そのような状況における失敗は、企業の評判や、多くの場合はその将来も台無しにしてしまうおそれがある。評判の失墜、醜聞、従業員の違法行為、刑事事件は、企業を破滅させる可能性がある。

リーマン・ブラザーズを見れば、「大きすぎて潰せない」企業などないことが分かる。危機が生じたときにその対処法を考えるのでは遅すぎる。自分自身とチームを教育し、高度な危機管理計画を立て、準備体制を整える必要がある。

「危機が生じたときにその対処法を考えるのでは遅すぎる」

とはいえ、会社が破綻するような事件はそう頻繁にはない。それが起こったとしても、一般の人々や従業員には許容の余地がある。彼らが許さないのは、他人への配慮の欠如や傲慢な態度だ。危機が発生してから24時間~72時間の間に行ったことで、その後の展開が決まる。

事件が公になってからでは、どのように対応するかを考える時間はほとんどなく、また従業員、顧客、ベンダー、投資家、取締役会にどのように情報を提供して安心させるかを考える時間もほとんどない。

これらはすべて、危機対応計画で準備しておくべきことであり、計画を実施する経営陣と主な関係者は、その計画を理解して確認しなければならない。

多くの企業は危機対応に関して準備不足

驚くことに、多くの巨大グローバル企業は、悪いニュースに対する準備ができていない。準備不足は組織の規模とはほとんど関係がない。重要なのは意識を持つことだ。企業の評判を守り長期的な生存力を維持するためには、望むと望まざるとにかかわらず、悪いことは起こりうるものだという認識を持ち、直感に頼らずに行動する必要がある。

危機対応計画の策定で重要なのは、最悪のシナリオを想定し、会社の評判と信用を回復する方法への理解を深めることだ。ウェルズ・ファーゴ社、ブリティッシュ・ペトロリアム社、フォルクスワーゲン社など、この分野の対応能力がまだまだ不十分であることが露見した企業は、近年だけでも枚挙にいとまがない。

これらの例では、経営陣と取締役会は明らかに危機管理計画を用意していなかった。また、企業の評判が失墜した場合の最悪なシナリオを真剣に考えてもいなかった。どの企業もこの事例から教訓を得るべきであり、自社は違うと考えてはならない。

危機的状況への準備が整っていることが分かっていれば、危機に直面していないときも安心していられる。危機が発生しても、取るべき行動について社内で意見を戦わせつつ、会社が守るべき文化をめぐる言い争いをしなくて済む。

直感は正しくない可能性がある

危機的な状況に陥ったとき、私たちは直感的に何も言わないことが多い。何もしないのは、何かをするとそれがかえって害になるのではないかと恐れるからだ。これは人間の正常な反応かもしれないが、戦略的とは言えない。

危機管理の計画を用意していないと、あなたの行動は利己的なものだと思われてしまう。自分と自分の会社を何よりも心配していると思われるだろう。そのような疑いは、情報の開示をできるだけ抑えることでリスクを管理しようとする法務部の行動により、すぐに深まることになるだろう。

また、発言や行動が少なすぎると、何かを発言した場合よりも、事件の影響がはるかに深刻化、長期化することが多い。重要なのはCEOであるあなたの発言であり、あまり多くを明かさなくても意味のあることを言うことは可能なはずだ。

適切な人材を確保する

問題が既に公になっているならば、その問題に自社の広報チームとPR会社を必ず関与させるべきである。危機的状況におけるコミュニケーションの最もシンプルなルールは、問題を認識し、謝罪を行い、今後の行動ではなく、問題解決プロセスについて話し合うことだ。この3つのステップを覚えておき、問題を解決するためのプロセスがあることを周知して人々を安心させることが常にできれば、組織やリーダーを悩ませる二次的危機の95%は回避することができる。

私は以前、ある金融サービス企業のグローバル・セールスチームと一緒に、ワシントンDCの規制機関による本格的な調査についてどのように説明すべきか検討した経験がある。

このチームでは、懸案となっている規制機関による調査について、顧客が大きな懸念を抱いていることを認識していた。私たちは何時間も費やし、社内外にそれぞれどのように伝えるかを細かく検討した。このニュースによる影響は小さくなかったが、慎重に準備を進めていたため、同社はこの危機に対処することができた。

準備ができていないときに行うべき3つの「P」

タイムリーな対応のための以下の3つの「P」を覚えておけば、問題にうまく対処できるだろう。

Plan(計画) - 何をするのか、なぜそれをするのかを人々に伝える
Process(方法) - どのようにして不正を正したり問題に対処するのかを説明する
Progress(進捗) - 目標や成功に向けた取り組みを続ける一方で、常に人々に最新情報を伝える

どの企業でも起こりうる

何も情報を開示できないときに何を言うべきかを知っていることは、組織にとってますます緊急の課題となりつつある。これはひとつには、今日の情報の速度と被害の規模のためである。企業は巨大化し、事件の影響力は増加し、メディアはより敵対的で批判的になった。これに加えて、今日の企業に対して強い影響力を持つソーシャルメディアがある。そこから生じた噂は急速に広まり、いつまでも事実と見なされる。これらの要因が生み出す力は、企業を破滅させうるものだ。

経営の難しさは、情報を収集し、事実を考慮し、慎重に問題を検討し、影響を調査し、適切な決定を下すことが求められる一方で、十分な情報の提供が求められることにある。人々が求めるのは正確かつ最新の情報であり、情報がなければその不足を憶測で埋めようとする。適切なタイミングで的確なメッセージを然るべき対象に伝えることで、経営者は人々をリードする力を獲得しなければならないのである。

筆者について

スザーン・ベイツ(Suzanne Bates)氏はグローバル経営コンサルタント企業Bates CommunicationsのCEO。同社は世界トップ企業の上級経営者を顧客に持ち、戦略の実行を推進するためのコミュニケーションを支援している。著書に『All the Leader You Can Be: The Science of Achieving Extraordinary Executive Presence』などがある。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】CEO Communication: What to Say, When You Really Can’t Say
(2019年4月22日にBatesのResearch and Resourcesに掲載された記事の翻訳。Bates Communications Inc.の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated with permission of © Bates Communications 2019


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