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「変革の速度を落とす」という選択

【原文】Incredibly Unpopular Advice for CEOs and Executive Teams Leading Change: Slow Down
「変革の速度を落とす」という選択
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経営幹部の日々は変化、変革の連続

1つの変化に対応したら、明日はまた別の変化に向き合う。

私が会うCEOや経営幹部はみなそのような生活を送っている。

あるクライアントの例を紹介しよう。このクライアントはある世界的な決済代行会社のセールス担当バイスプレジデントを務めており、過去18か月間に2回目の組織再編を経験している。前回の組織再編からわずか4か月後、自分のチームが5州も離れた所にある新設の中央組織に統合されるというニュースを聞いたとき、彼女のメールボックスは「自分たちはこれからどうなるのか」と心配する従業員からのメッセージで溢れかえっていた。当然、彼女は従業員たちと同じくらい驚いた。

長年かなりの変革を経験してきた彼女が唯一発したのは、「まあ、従業員のエンゲージメントスコアには良くない影響が出るでしょうね」というやや皮肉めいた言葉だった。

変革の取り組みの70%が失敗に終わる

変革はうまくいくこともある。多くの場合、変革は必要に迫られて行われるが、大抵は予定よりも大幅に遅れる。問題は変革を行うべきかどうかではなく、どのように、どのくらいの頻度で変革を実行するかだ。変革の取り組みの70%が失敗する。これはよく引用されている統計データであり、これを知らないCEOはいないだろう。

変革を導くことが難しいのは周知の事実であり、その理由はいくつもある。たとえば、人々が現状維持を望んでいるのに変革の必要性が明確に説明されていなかったり、社内外の広報計画が不十分で、変革の魅力を伝えきれなかったりするとうまくいかない。

それにもかかわらず、私たちは頻繁に変革を経験している。この事実をどう考えればよいだろうか。多くの取り組みが目標を達成できないで終わる真の原因は、変革の速度ではないだろうか。チェンジ・マネジメントが専門の学生はこの問いに対して「ノー」と言うかもしれない。

変革に伴う痛みは変わらない

大企業の変革の速度は20~30年前は今よりもずっと遅かったにもかかわらず、変革に伴う痛みは当時から変わっていない。しかも、以前の古傷はまだ癒えていないのだ。それは、大企業には成果の出ない変革を長年にわたり経験してきた従業員が多数存在するからだ。

それに加えて、今日の企業は変革の頻度が昔よりもはるかに高く、長期的な外圧(テクノロジー、破壊的な競合他社、従業員構成の変化)により変革への圧力がさらに強まるだろうと専門家は予測している。

変革の速度を落とすことへの抵抗に備える

ここまで考えてくると、今の変革の速度を見直すのは当然のことに思えるかもしれない。しかし、そうするつもりがあるなら、周囲からの強い抵抗に備えたほうがいい。速度を落とすという発想は受け入れられにくいからだ。

恐らく、次のようなことを言われるだろう。「お客様との約束があります。投資家は反対するでしょう。変革はもう公表済みですし、競合他社に追い抜かれるかもしれません。だから、速度を落としたくてもできないのです。それに、変革は順調に進んでいます。私たちはとても俊敏な組織であり、多大な成果を上げています。それが当社の文化です。」 

速度を落とすことを提案するのであれば、組織にとって次のようなメリットがあることを伝えるとよいだろう。

従業員の信頼性が向上

あまりに多くの変革は逆効果である。これには研究による裏付けがある。

従業員が吸収できる量には限度があり、それを超えると余裕がなくなり、疲弊しきってパフォーマンスが低下する。さらに、変革とそれに伴う負担が大きいほど、変革後に残る懐疑的な言動や不信感も大きくなる。

たとえば、アメリカ心理学会が2017年に行った調査では、調査対象となった全労働者の30%が「経営陣は変革の本当の意図を隠している」と考えていた。だが、速度を落とすことで、情報を収集し、質問し、意見を求め、不信の背景に何があるかを理解するための機会が得られ、従業員の懸念に確実に対処できるようになるのである。

反発に丁寧に対処し、合意を得る

変革の必要性に対する認識は、リーダー間でまったく異なる場合がある。

私のあるクライアントの例を考えてみよう。このクライアントは、大規模な技術改革を主導し、数百万ドル規模のコスト削減を目指していた。しかし、計画開始から1年が経過した頃、組織内の経営幹部たちから強い反発があり、計画の進行が止まってしまった。

企業が新しいテクノロジーの迅速な導入を目指す中、この経営幹部たちは、導入前の意思決定プロセスに自分たちの意見が十分に反映されていなかったと言い、計画を進めることを拒んだのだ。

クライアントは計画を中断し、経営幹部らと話し合い、導入計画を修正することで、必要な合意を得ることができた。この例は、コスト、期限、期待の重圧を受けて、全速力で変革を進めたいという誘惑に駆られても、速度を落としてステークホルダーの懸念に十分に対処する方がよいということを再認識させてくれる。

大規模な変革の取り組みの多くは、正当なビジネスニーズにより推進されるが、そのアイディアがどんなに優れていたとしても、人々を結束させ、何か月も何年も変革を継続するには、本格的な戦略が必要だ。取り組みを開始し、資料を配布したからといって、全員が参加するとは限らない。

変革の成果に対する当事者意識を高める

また、あるクライアントから、大規模なシステム導入プロジェクトが失敗した原因を把握したいという相談があった。予算は100%近く超過し、スケジュールは半年も遅れ、プロジェクトは大失敗と見なされていた。犯人は経営陣が指揮する委員会だった。この委員会はCEOにプロジェクトの監督と指導を任されていたが、プロジェクト期間中、その役割をほとんど実行しなかった。

反省の結果、委員会のメンバーの多くは監督や指導が不十分であったことを認めたが、同じ時期に自分が担当していた別のプロジェクトの課題や重圧にも対処する必要があったと述べた。

彼らはプロジェクトから目を離してしまったのは確かだが、問題が発生したときはプロジェクトチームから報告があるだろうと考えていた。変革の速度を落としていれば、経営幹部らが指揮するチームがプロジェクトの失敗に気づいたり、プロジェクトチームからの支援要請に応えたり、目標への取り組み方を現実的な形で明確に示したりする時間を確保できたかもしれない。しかし、経営幹部のチームは時速100マイルで走っていて、組織の重要な関係者たちが対処や支援を求めていることに気づけなかった。

恐れずに変革に必要なあらゆる方策を講じる

企業が変革に着手する際には、非常に大きなリスクを負うことになる。その変革をうまく導く力があるなら、それは大きな強みだ。

重要なのは、変革を続けるのに必要な方策を恐れず積極的に講じることだ。

場合によっては、変革を中断したり、速度を落としたり、「危機感を持ってもっと急げ」という声高な要求に抵抗することになるかもしれない。

しかしそうすることで、70%という失敗率を恐れることなく、自分を差別化することができる。意味のある長期的な変革により莫大な経済的価値をもたらすことができる優れたリーダーとして。

筆者について

エリザベス・フリードマン(Elizabeth Freedman)氏は米国ベイツ・コミュニケーションズのエグゼクティブコーチ兼プリンシパル。個人で経営している会社では、金融、ライフサイエンス、国防、工業・テクノロジー分野のクライアントを世界中に持つ。執筆や寄稿も多数ある。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Incredibly Unpopular Advice for CEOs and Executive Teams Leading Change: Slow Down
(2019年6月12日にBatesのResearch and Resourcesに掲載された記事の翻訳。Bates Communications Inc.の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated with permission of © Bates Communications 2019


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