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プレッシャーの中でも冷静さを保つための3つのステップ

【原文】Do You Bring Light or Heat? 3 Steps to Ensuring You Display Grace Under Pressure
プレッシャーの中でも冷静さを保つための3つのステップ
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ルーズベルト大統領のたぐいまれな対応

1944年のノルマンディー上陸作戦決行日の数か月前、第二次世界大戦の従軍写真家であった祖父のジム・ベイツは、フランクリン・D・ルーズベルト大統領の写真を撮影する役目を負っていた。大統領はオクラホマ州のキャンプ・グルーバーで、イギリスへの進駐とノルマンディー上陸を控えた歩兵師団を視察していた。

屋外の休憩小屋にいた大統領の周りに、記者や写真家たちが集まっていた。祖父が人々を整列させて写真を撮ろうとしたとき、大統領の目の前でカメラのフラッシュバルブが破裂した。その瞬間、大統領の側近全員が祖父に飛びかかり、小屋の隅の床に押さえつけた。

その後、興味深いことが起きた。しかし、その話を初めて聞いてから約25年経つまで、私はその話の重要性を理解できずにいた。

大統領は、威厳のある落ち着いた口調でこう言った。「君たち、安心したまえ。彼は自分の仕事で写真を撮ろうとしているだけだ。フラッシュバルブは信頼性が低く、破裂するのは珍しくない」と言った。そして、大統領は祖父にどのようなポーズやアングルを希望するかと尋ね、祖父は先ほど集合した兵たちに見せた敬礼のポーズをとって欲しいと言った。祖父は写真を撮り、大統領は視察を続けた。

大統領がフラッシュバルブの破裂を本当に見たことがあったかどうかは疑わしい。ここではそれはさほど重要ではない。その場の感情に流されずに冷静に周囲を落ち着かせたことは、自己認識と自制心に基づく模範的な行動だった。1,600万人のアメリカ人(当時の人口の約11%)を世界史上最大の作戦に派兵しようとしていたとき、大統領は世界中の人々が自分に模範的な対応を求めるだろうということを認識していた。

大統領は恐れや怒りはもちろん、驚いた様子さえ見せずに、穏やかな態度で周囲を安心させた。客観的な態度と視点で緊迫した状況に対処した。それこそアメリカが必要としていたことであり、その日の彼の言動が報道されることも彼は理解していた。大統領は並外れた自制心と自己認識を持っていた。彼は自分の反応が他人にどう受け取られ、影響を与えるかをはっきりと自覚していたのである。

多くのエグゼクティブが求める「自制心」と「落ち着き」

米国ベイツ・コミュニケーションズのBates Executive Presence Index(ExPI™)モデルを用いてコーチングを実施すると、多くのエグゼクティブは「自制心(Restraint)」と「落ち着き(Composure)」の面で課題を抱えていることが分かる。この2つの側面は似ているが、「自制心」はどちらかというと、日々一貫して冷静沈着な態度を示せるかということに関係している。一方、「落ち着き」は状況に関係している。あなたは、プレッシャーの中でも冷静さを保てるだろうか。危機的状況でも落ち着いていられるだろうか。困難なことが起きたときに、感情的にならずに賢明に振る舞えるだろうか。

では、具体的にどうすればそのように振る舞えるのだろうか。

冷静さを保つための3つのステップ

  • プレッシャーの中では冷静さを保つことが難しいということを理解する
    困難な状況に直面していることに気づき、自らそれを認めなければ、前進することはできない。同僚、マネージャー、部下に意見を求めるとよい。彼らはあなたの行動をどのように認識しているだろうか?
  • 感情をあおるような発言を受けたら、それに反応するまでの間をあける
    相手の発言の意図を明確にする質問をすれば、回答するまでに時間を少し稼ぎ、より良い返答することができる。深呼吸をしたり、水を飲んだり、数字を3から10まで数えたりして、状況を整理する時間を取り、慎重かつ適切に対応する。また、もう少し考える時間を確保できるよう回答を保留し、「その件は後でお話しします」と提案するのもよいだろう。
  • 感情的になってしまったら、自分自身に大事な質問を投げる
    「自分が言おうとしていることは、『今、ここで、自分が』言う必要があるだろうか?」と考えるようにする。私は「自制心」と「落ち着き」を取り戻す方法を絶えず考えてきたが、この問いは長年一緒に仕事をしてきた多くのエグゼクティブたちの共感を得た。このように自分に問いかけてみると、ほとんどの場合、この3つの部分(今、ここで、自分が)を肯定することができず、私はその場で口をつぐんだ。その結果、私の他人への影響力は、時間とともに大幅に増大したのである。

反応を和らげたいときに切り出す言葉

もう1つおまけのアドバイスがある。これは私の上司に教えてもらったものだ。卓越した対人スキルを持っていた彼女は、底なし沼のような忍耐力と思いやりを持っていた。彼女は「感情的になりやすい状況では、意見を言う際に『おそらく...』とか『仮にもし...』という言葉で切り出して、発言を和らげるようにしたらどうか」と助言してくれた。このような簡単な言葉を使うだけで驚くほどの効果があり、自分の応答は確実に受け止められた。

私は今日に至るまで、「落ち着き」や「自制心」を失いそうになったとき、「ルーズベルト大統領だったらどのように対応するだろうか?彼だったらどのような表情を周囲の人々に見せるだろうか?」と自問自答してきた。そして、この記事で紹介したテクニックを使い、彼のように感情的にならずに理性的に対応してきた。大統領と祖父が交流を持っていたおかげで、幸運にも私は(25年もかかったが)この教訓を得ることができたのである。

筆者について

デーモン・ベイツ(Damon Bates)氏は米国ベイツ・コミュニケーションズのシニアコンサルタント兼プリンシパル。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Do You Bring Light or Heat? 3 Steps to Ensuring You Display Grace Under Pressure (2019年4月30日にBatesのResearch and Resourcesに掲載された記事の翻訳。Bates Communications Inc.の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated with permission of © Bates Communications 2019


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