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ときにリーダーが立ち止まるべき理由

【原文】Step Back to Leap Forward: Why Leaders Need to Pause Often to Take Stock
ときにリーダーが立ち止まるべき理由
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ある大手テクノロジー企業の営業部門は、大きな問題を抱えていた。離職率が高く、チームの勢いが低下していたのだ。新しい営業担当者を常に探して育成し、活躍させようと努力していたが、結局辞めてしまい、士気も業績も上がらなかった。

営業部門の責任者は、問題はリーダーシップにあると考え、事業を好転させるために、販売管理とリーダーシップ開発の強化に多額の投資を行うことにした。具体的には、定着率向上計画の柱として、組織内のトップレベルの営業部長らを対象とした「エグゼクティブ・ コーチング ・プログラム」を開始した。同社によると、この投資の利益率は900%だったという。

忙殺されている状況から脱却する

私がコーチングを担当した営業部長の1人は、精力的で几帳面な人物であり、毎日の自分の業務やチームの業務の管理に没頭していた。それゆえ、彼にとって難しかったのは、次回の会議の計画や、前回の会議の分析から一旦離れて、立ち止まって自分の行動を見直し、ビジネスを成長させるためのより広い視野をもつことだった。しかし、コーチングを通じて対話の相手を得た結果、彼はより広い視野でじっくり考えることができるようになった。

私たちのコーチングの取り組みで重要なことは、彼がじっくりと考える時間を確保し、その時間を落ち着いて物事を探索するために有効に使う方法を学習できるようになったことだ。彼が日々忙殺されている仕事のパターンを打開するために、私たちは業務を可視化する取り組みを始めた。

ある日のこと、彼はこの取り組みの途中で突然あるひらめきが起こり、その体験は5分間も続いたと言った。

「変に聞こえるかもしれませんが、取り組みの最中に『この箱を開けてください』というあなたの声が聞こえました。その箱を開けると、私は、既存の顧客基盤の中にこれまで見逃していた大きなビジネスのチャンスがあることにはっきりと気づきました。」彼はさらに続けて、これは会社の基準からすると大きなチャンスではないものの、そこには5,000万ドルの未開拓の収益が眠っていると言い、「ここ数か月の間にそれが私の目の前に来たチャンスは7回もありましたが、すべて見逃していました」と語った。

彼は後から考えればすぐにわかる大事なことを、日常に忙殺されて見落としていたことに、ショックを受けていた。

一歩下がった別の視点から見てくるもの

この経験を通じて、私のクライアントは一歩下がって自分の状況を別の視点から見ることができた。そうすることで、以前から目の前にあったチャンスに気づいたのである。営業部長の仕事は日々の業務の運営とチームの管理に専念することだと彼は考えていたが、実際には系統立てた振り返りを行わないと自分の職務を果たせないことを悟ったのである。

忙殺されている現状をじっくりと見直すことで、彼自身にも会社にも大きな影響があった。彼は発見したこの新しいビジネスに乗り出し、5,000万ドルの新たな収益をもたらすとともに、市場の新たなニーズを満すことに成功した。また、コーチングの役割に対する彼の考え方も変化した。それは、小さな行動の変化がもたらすことがどのようなものかを理解し、それらを明らかにし、実現するための客観的な視点を獲得したからである。

一歩離れて自分を見直すための3つの方法

一歩離れて自分を見直すことを、あなたのチームや組織の運営に取り入れるにはどうすればよいだろうか。ここではその方法を3つ紹介しよう。

  1. 「ゆっくり急ぎ」、内省の時間を習慣化する
    ラテン語の「(あせらずに)ゆっくり急げ(フェスティナ・レンテ-Festina Lente)」という古い格言を肝に銘じよう。最も重要なビジネス上の課題やチャンスについて創造的に考える時間を定期的にとる。この行動はビジネス上重要なことであり、単なるタイムマネジメントの練習ではないと捉え直す。他の会議予定と同じ比重で、じっくりと内省したり洞察したりするための時間をカレンダー上に確保する。一度これを習慣化すれば、私のクライアントがそうであったように、内省する時間を容易に確保できるようになり、日々の仕事に忙殺される中で忘れてしまうことはなくなる。
  2. 自分のための創造的な時間を確保する
    周囲の人に協力してもらうことで、自分のための時間を作る。つまり、最も優秀な人物に仕事をする機会をより多く与える。タスクや責任を部下に任せると、自分の時間を確保できるだけでなく、成長するチャンスや、会社への影響力を強めるチャンスを部下に与えることにもなる。創造的な時間を確保するために、自分の上司の協力を仰ぐのもよいだろう。
  3. 新しいことを試す
    時間を捻出してそれを最大限に有効活用するために、相談役や他者の意見を求めるようにする。多くのリーダーは日々の業務から距離を取ることが難しいと感じており、自由な思考に意識を向けることは、それが得意でない限り難しい。新しい習慣を作り出したり、時間の使い方や組織運営上の優先課題を変えたりするには、まったく新しいことを試す必要があるかもしれない。

筆者について

ケビン・カスバート(Kevin Cuthbert)氏は、人材開発の領域で30年以上の経験を有し、エグゼクティブ・チームと共に生産性を高めるコーチングを実践している。また、リーダーシップ学習プロセスや組織変革プログラムの設計と実践を手掛けている。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Step Back to Leap Forward: Why Leaders Need to Pause Often to Take Stock
(2019年8月15日にBatesのResearch and Resourcesに掲載された記事の翻訳。Bates Communications Inc.の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated with permission of © Bates Communications 2019


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