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相手の「ベスト」を引き出す

【原文】Bringing Out the Best in Others at Work
相手の「ベスト」を引き出す
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管理職からよく聞かれる質問の一つは、おそらく、「部下のやる気をどう引き出すか」だろう。

その答えは、「そんなことはできない」である。

できることと言えば、部下の「ベスト(いちばんいいところ)」を引き出す方法を知り、彼らの「内発的動機」をうながすことである。「内発的動機」は「外発的動機」よりもはるかに高いパフォーマンスや効果を得られる。人は自分の内面の意欲によって動機づけられるときは、満足感や目的意識を持つ傾向にある。

人間の感情的・心理的欲求を表現した「マズローの欲求5段階説」では、「内発的動機」は、高次の階層に位置する。エドワード・L.デシ(Edward L. Deci)氏とリチャード・M. ライアン(Richard M. Ryan)氏が1980年代半ばに提唱した自己決定理論によれば、「内発的動機」をうながすには次の3つの欲求を満たす必要がある。

  1. 自立性:自らの人生を方向づけ、選択、管理する能力。
  2. 熟達:学習欲求、何か新しいものを創る欲求、そして、自分にとって価値あることを上達させる欲求。
  3. 目的:行動の背後にある意味を理解することと、より大きなことや永続的なことに貢献している実感。

職場での行動と欲求

相手や自分自身の「ベスト」を引き出すには、行動の裏にある欲求や、相手がどんな欲求を満たそうとしているのかを考えることが有効である。その反応、対応、行動を引き起こしているのは何かを考えるのである。

このような動機や欲求は複雑かつ多様で、いろいろな側面があり、絶えず変化する。しかし、動機要因として以下の5つのグループに分けることができる。

  1. コントロールする:特定の考えにあまりにも固執しすぎて他者を疎外してしまうケース。この場合、状況をコントロールしたい欲求が強すぎるため、周囲との関係を壊すのもいとわない。
  2. プライド:職場で感情を表に出すのは恥ずべきことと考える人のことを考えてみよう。プライドを守る欲求が強すぎて、「冷たい人」「感情がない人」と思われるリスクの方をとろうとしている。
  3. 自己防衛:周囲と会話しない、チーム活動に参加しない、また「おはよう」や「こんにちは」の挨拶さえしない同僚に出会ったことがあるかもしれない。この場合の欲求は、自分のほうから先に相手を拒むことで相手から拒まれることから自身を守っているのかもしれない。
  4. 恐怖:新しいアイディアや提案を受け入れず、他者のアイディアを横取りする上司について考えみよう。この場合、上司は自分の地位や役職を失うことを恐れているのかもしれない。
  5. 迎合:みんながそうしているからという理由で、その人らしくない振る舞いをしている人について考えてみよう。この場合、迎合したいという欲求は善悪の判断より重要だったのかもしれない。

相手の「ベスト」を引き出すための6つのヒント

行動だけに惑わされず、その裏に欲求や動機があるかもしれないことに気づくことができれば、相手の「ベスト」を引き出す最高の方法を考えることができる。それはつまり、相手を新しい視点で見なければならないということである。表面上の行動の先にあるものに目を向け、相手の行動について憶測を立てるのはやめるべきである。そのためのいくつかのヒントを以下に紹介する。

1.相手に自身について話してもらう

たいていの人は自分のことを話したがる。デール・カーネギー(Dale Carnegie)氏はこのスキルをマスターし、それは彼のベストセラー、『How to Win Friends and Influence People』(邦題:『人を動かす』)の前提になった。相手の「ベスト」を引き出す効果的な方法は、自分が話すのを控え、もっと相手の話に耳を傾けることである。これは簡単なように聞こえるが、聞く力が問われる。

たとえば、同僚の一人が自分たちは他の誰よりも一生懸命に働いているのに、誰も評価してくれないと延々と話し続けたとしよう。まず、あなたはどう反応するだろうか。いらいらして迷惑に感じるだろうか、腹を立てるだろうか。これからは、このような行動に駆り立てる欲求は何かを考えてほしい(ヒント:迎合への欲求、評価されたい、影響力があると思われたい)。

あなたは最初、同僚の話を無視するか、自分も一生懸命働いていると言い返そうとしたかもしれない。だが、同僚がこの欲求にうまく対応できるように彼をサポートしてみて欲しい。たとえば、「それだけ打ち込めるほど、あなたの仕事はあなたにとってとても重要なのですね。どのようにやっているのか教えてもらえませんか。」と話してみるとよい。

2. 相手が間違っているとは言わない

あなたは誰かから「あなたは間違っている」と言われたらどう感じるだろうか。それは、あなたの「ベスト」を引き出すことになるだろうか。それとも、自分を守ろうとしたり、気持ちが傷つけられたり、落ち込んだりするだろうか。ほとんどの場合、後者になるだろう。たとえ相手と意見が異なっても「あなたは間違っている」とは言わずに相手に反論することができるのだ。

この場合、次のように言うとよいだろう。「私は少し違う見方をしています」「そんなふうに思う理由を詳しく話してくれますか」。私たちは、全てにおいて相手に同意する必要はないのだ。人と違う見方をすることは悪いことではない。

3. 間違っていたら認める

誰でも間違いはおかす。間違いを認めることに対する抵抗をなくすべきである。おそらく相手はあなたのその姿勢に敬意を払い、理解を示して、あなたが間違いをおかした時に許してくれるだろう。

4. ポジティブな動機づけを推察する

既に述べたように、相手の「ベスト」を引き出すことは、推察と期待に大いに関係している。その行為が悪意に動機づけられているものだと推察すれば、相手とはそれなりに距離をおいて関わる。その行為が善意または欲求に動機づけられていると推察すれば、相手とはそれに基づいて関わるといい。

たとえば、同僚が『Tasty Recipes for Weight Loss(おいしく痩せる)』という題名の本をくれたとしよう。この贈り物の意図をどう推察するだろうか。さらに、その推察がその同僚との今後の関わり方にどう影響するだろうか。

5. ポテンシャルに目を向ける

私たちは、普段、相手の良い面より悪い面に目がいきがちである。相手にあるものを見つけるよりは、欠けているものを探したり、うまくいっていることより、うまくいっていないことに目を向けがちである。しかし、幸いにも私たちは相手のポテンシャルに目を向けるスキルを後天的に身につけることができる。そして、人々を輝かせ、成功へ導く方法を提供することにより、相手の潜在的な可能性を育てるといい。ポテンシャルを見つけることがとても難しいと思われる人にも長所はある。あなたに意欲があれば、その人のポテンを追及し、育てるために周囲に協力を求めることができるだろう。

6. 感情的な強い反応があればその背景を知ること

非常に感情的な反応は、恐れの現れであることが多い。見かけの反応の背景にあるものに目を向け、相手の恐怖に対応するよう努めるといい。こうすることによって、あなたは相手に反応する前に準備する時間を得ることになる。外に現れた感情的な反応だけに対応することは、表面的な話し合いが永遠に続くだけで問題の解決にはいたらないことが多い。

関わり方の秘訣

相手の「ベスト」を引き出すことは双方にとってプラスになるWin-Winの状況である。しかし、そこには新しい考え方、見方、関わり方が必要になってくる。上記の提案をいくつか試して、あなたと同僚にとってうまくいく方法が見つかるまであきらめないでほしい。

筆者について

メルシー・ミグリノ(Merci Miglino、MCC)氏は20年にわたるコーチング経験を持つ国際コーチ連盟(ICF)MCCの認定資格をもつコーチ。彼女の経験と生まれながらの感情知能(EQ)は、ビジネスの成果につながるエグゼクティブのリーダーシップスキルの維持向上をサポートしている。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Bringing Out the Best in Others at Work
(2019年8月19日にコーチ・エィのE-Newsletter(英語版メールマガジン)に掲載された記事の翻訳。筆者の許可を得て翻訳・掲載しています。)


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