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自律したチームのリーダーになったら?覚えておきたい3つの役割 (後編)

【原文】How to Succeed Without Being the Smartest Person in the Room
自律したチームのリーダーになったら?覚えておきたい3つの役割 (後編)
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意思決定を加速する

退職者向けの金融サービスを提供する米国プリンシパル・ファイナンシャル・グループの子会社、チリのプリンシパル・インターナショナル社のダニエル・ラングドン(Daniel Langdon)所長(デジタル・エクスペリエンス・ラボ所属)は、強力なチームが存在するならば、従来の階層的な意思決定プロセスは無駄であると主張する。階層的な意思決定では多くの時間が無駄になると所長は言う。

「(従来のプロセスでは、)まず、チームメンバーがすべての物事をいくつかの要点に整理して、私が管理職としての判断を下せるようにする。続いて、チームメンバーが数週間かけて検証してきたことについて、状況をよく理解していない私が尋ねる。そして、私は提案を始める。しかしその提案は、既にチームが考案して調査し、代替案と比べて評価したうえで放棄したものだ。私たちはこのような会話を何度も繰り返している。なぜそうなるかと言えば、本当の意味での信頼と信用の委譲がないからだ。」

だが、このような方法を取る必要はない。チームに裁量権を与えられれば、メンバーは社会に提供されるものやそれに付随する要素に対してアカウンタビリティ(責任)を持つ。どのような行動や活動が成功につながるのかを最もよく理解しており、誰よりも適切に活動を決定できるのは、そのようなチームだ。

鍵はCEOのように振舞うこと

米国のニューヨーク・メロン銀行(BNY Mellon)の元CIOであるスレッシュ・クマール(Suresh Kumar)氏は、商品チームのリーダーたちに、「自分はチームの商品の成功に全責任を持つ『ミニCEO』だ」と考えるように勧めたという。各チームは機能、コスト、顧客とパートナーの関係、ライフサイクル管理を担当しており、チームはそのミッションを達成する責任を負っていた。そこには自分たちで意思決定を行うことも含まれていた。

当然のことながら、多くのチームリーダーは判断力と自信を養うためのトレーニングとサポートを必要としている。シンガポールを拠点とする金融サービス、DBS銀行(DBS Bank)では、リーダー職に求められる新しい「CEO的」な要素の習得を支援するために、同社の変革推進オフィスに所属するパートナーを自律型チームのリーダーに割り当てている。パートナーは「シェルパ」と呼ばれ、チームリーダーが絶えず変化する役割に適応できるように彼らをサポートする。「シェルパ」は、チームが着実に意思決定力を向上できるように、枠組み、方法論、ガイダンスを提供している。

障害を排除する

過去のコラムで、従来の階層構造は技術や競争の急速な変化に適応する企業の能力を制限すると論じた。スポティファイ(Spotify)などの企業は、リソースに関する要求をチームが決定できるようにすることで、迅速性を高めている。デジタル音楽サービス部門のチームは、大きな目標に取り組む中で自然と成長する。チームが大きくなりすぎて2つに分ける必要が生じたら、そのタイミングをメンバーが決定する。2つの異なるミッションを1つに統一するような決定もメンバーが行う。チームに要求されている要件の明確化を、自律したチームに任せる企業が増える中で、管理職たちはチームへのリソース配分よりも障害の排除に大きな関心を持つようになっている。

チリのプリンシパル・インターナショナルに勤務するラングドン氏は、自分の役割を、チームが目標を達成できるように「摩擦を解消すること」であると説明している。これには、現在の組織的連携や意思決定プロセスの運営支援も含まれる。一部の企業の経営幹部は、チームメンバー同士の責任が重複し始めたときに発生する問題を見つけ、解決しようとしている。そのような経営幹部は、ミッションを再設定して自律したチームを再編成する支援を行うことができる。

管理職の役割を「障害を取り除くこと」と定めた場合、経営幹部と製品チームの関係が変化する。2016年にトヨタが設立したモビリティサービス会社、トヨタ・コネクテッド・ノースアメリカ(Toyota Connected North America)では、製品チームの取り組みをサポートするために、経営チームが毎日ミーティングを開いている。CEOのザック・ヒックス(Zack Hicks)氏は次のように説明する。「私たちの仕事は何をすべきかを伝えることではなく、仕事の障害となっている物を取り除くことだ。」ヒックス氏は1on1のセッションでフィードバックはするが、「それはチームの日々の活動を管理するためではない」。製品担当のマネージャーは、採用と利益の再投資に関する意思決定を自分で行っている。「そうすることで、業界と顧客が求めていることに集中し続けている。」

社内で最も優れたアイディアを見つける

これまでは、社内で最も優秀な人物が経営者の地位を獲得してきた。チームが裁量権を与えられていれば、それはもはや必要ではなく、その流れはもはや成り立たないとも言える。経営者は、製品、顧客、状況を最もよく知る人々に責任を持ってもらうようにうながす必要がある。なぜなら、最も優れたアイディアを見つけるのは、そのような人々だからである。

DBS銀行の経営陣は、従業員に責任を与えるように努めてきたことが現在の成功につながったと考えている。同行のデータおよび変革最高責任者であるポール・コバン(Paul Cobban)氏は次のように語った。「明確な成果を設定し、従業員に境界線を示す必要がある。私たちはこの境界線を電気フェンス(electric fence:プログラム上のメモリー破壊などを検知するシステム)と呼んでいる。」経営陣は多くの労力を費やして会社の価値観を伝えている。「そのため、従業員は電気フェンスがどこにあるかを知っている。フェンス内のどこにいても、目標に向かって進んでさえいれば、自分が望むことをする裁量権は与えられる。私たちは従業員をコーチングし、彼らが自分のチームメンバーにどのように裁量権を与えるかについて話すことに力を注いでいる」。

時代とともに変化する経営者の役割と責任

デジタル技術と自動化の進展により、人々の働き方や、組織の成功に人々が貢献できることは変わりつつある。しかし、このような変化を実現するためには、経営者は自らの役割と責任を考え直す必要がある。今後、優れたリーダーが負う責任は、チームのミッションを明確化し、チームリーダーの意思決定スキルの習得を支援し、チームの成功を妨げる障害を取り除くことにシフトしていくだろう。

筆者について

ジーン・ロス(Jeanne Ross)は"Designed for Digital: How to Architect Your Business for Sustained Success" (MIT Press, 2019)の共同著者であり、MIT情報システム研究センター(MIT's Center for Information Systems Research (@mit_cisr)の首席研究員。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部

【原文】How to Succeed Without Being the Smartest Person in the Room
(2020年1月6日に『MITスローン・マネジメント・レビュー』に掲載された記事の翻訳。同機関の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Used with permission from MIT Sloan Management Review. All rights reserved.


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