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世界のコーチングはここから始まった【後編】~コーチング業界の今と未来~
2020年07月07日
1992年に世界初のコーチ養成機関、コーチ・ユー(Coach U, Inc.)が設立されました。パメラ・リシャード(Pamela Richarde:以下パム)氏はコーチ・ユーの立ち上げメンバーの一人であり、その後米国や世界におけるコーチングの発展に寄与したコーチング業界の第一人者です。コーチ・エィは、1997年にコーチ・ユーとライセンス契約を結び、日本でコーチングの事業を開始。そして、2019年、両社の強みを最大化する目的でコーチ・ユーを買収しました。コーチングというビジネスの誕生から業界を支えてきたリシャード氏に、コーチングの過去、現在、未来、そしてコーチ・エィとのコラボレーションについて書面インタビューを行いました。
前編 | コーチング業界の第一人者がコーチングの歴史を語る |
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後編 | コーチング業界の今と未来 |
本記事は2020年5月の書面インタビューに基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
ICFの設立について
コーチ・ユーはICF (International Coaching Federation) の設立にも深くかかわっています。ICF設立にはどのような意図があったのでしょうか?
パム ICFはコーチ養成プログラムの卒業生を支援するために設立されました。卒業生同士の会話する機会が継続してつくり出されること、また、コーチングという職業を確立するための強力な基盤を創造することが目的でした。
コーチ・ユーはICFの設立においてどのような役割を担ったのでしょうか?
パム 上記でお答えしたとおり、ICFは本来、卒業生を支援するためにコーチ・ユーが作った組織でした。しかし、他の組織が台頭してくると、当時の米国における2大コーチング組織であったコーチ・ユーがつくったICF、そしてコーチ・トレーニング・インスティテュート(以下CTI)がつくったパーソナル/プロフェッショナル・コーチ連盟の理事たちは、コーチングのさらなる発展のために包括的な協力関係を結ぶために立ち上がることにしました。
コーチ・ユーとCTIは、それぞれがつくった組織の理事会を合併させ、ICFという名前を存続させて、トレーニング機関であるコーチ・ユーとCTIからは完全に独立した組織を設立しました。こうして、どのコーチ養成機関を卒業したコーチにも公平な機会を提供する組織が誕生しました。
ICFが発展していく過程ではコーチ・ユーはどのような役割を果たしてきたのでしょうか?
パム コーチ・ユーの受講生や卒業生は、ボランティアとして積極的にICFの活動を支え続けています。組織のリーダーを務めた経験のある人の多くが、ICFの会長に就任しています。私自身も2006年に会長を務めました。コーチ・ユーは、受講者にコーチ・トレーニングのスタンダードとともに、ICFと完全に歩調を合わせたコーチングスキルを提供しています。そして、それらを通じて日々、ICFの発展をサポートし続けています。
コーチ・ユーの現状を知る
コーチ・ユーの卒業生は何人いるのですか?
パム 複数のプログラムを卒業している人もいるのですが、現時点では約6,000人の卒業生を輩出し、約14,000人が何らかのプログラムを受講しています。
世界の何カ国にサービスを届けていますか?それぞれの地域にどのようなサービスを提供しているのでしょうか?
パム これまで113ヵ国からの受講生がコーチ・ユーのプログラムを受けています。提供しているサービスは、コーチングスキルやそれに付随するトレーニング、コーチング型リーダーシップのトレーニング、コーチング型マネジャーに向けたプログラムを提供する資格取得を目指す2日間のプログラム、エグゼクティブ・コーチングです。
コーチ・ユーのトレーニングを求めているのはどのような人で、それにどのように応えているのでしょうか?
パム 様々な人が受講しています。コーチ・ユーでは、コーチング、個人の成長、世界を変えることに興味があるあらゆる人のニーズに応える、さまざまなコースを提供しています。個人、チーム、組織、経営者など、さまざまな人、がさまざまな単位で受講しています。
コーチ・ユーのファシリテーターは何人いますか?
パム 現在、40人以上のスタッフ/ファシリテーターを擁しており、全員がICFのPCC*またはMCC**の資格を保持しています。
*PCC: Professional Certified Coach(プロフェッショナル認定コーチ)
**MCC: Master Certified Coach(マスター認定コーチ)
この20年余りの間にコーチ・ユーの優位性・競争力にどのような変化がありますか?
パム 私たちは、コーチという職業の発展に合わせて、私たちが提供するサービスやカリキュラムを進化させています。私を含むコーチ・ユーのたくさんのスタッフは、コーチングの専門組織(ICF、AC*、EMCC**、ACTO***など)とつながり続け、この進化を支えるために時間をかけ、リソースを提供しています。
*AC: Association for Coaching
**EMCC: European Mentoring and Coaching Council
***ACTO: Association of Coach Training Organization
コーチ・エィとのコラボレーションについて
コーチ・エィとはいつ、どのように関係が始まり、現在はどのように関わっているのですか?
パム コーチ・エィのファウンダーである伊藤さんとは20年以上の付き合いです。伊藤さんがコーチ・トゥエンティワン(コーチ・エィの前身)を設立し、コーチ・ユーとライセンス契約を結んだ際に、私はコーチ・ユーでリーダーシップチームの一員として働いていました。私たちはお互いに尊敬し合える仲間であり、共通の楽しみをたくさんもっています。
コーチ・ユーの強みとコーチ・エィの強みの違いはどのように見えていますか?
パム コーチ・ユーは、様々な市場で幅広い学習機会を提供しています。パーソナル、またはビジネスの目的で、あるいは組織で仕事をするためにコーチングを学びたい個人を対象としています。
コーチ・エィは、コーチングとリーダーシップ・トレーニングを取り入れる組織のさまざまな階層に対して一連のサービスを提供しており、それらのサービスは組織文化にインパクトを与えています。コーチ・エィとコーチ・ユーが一つになったことは、最高の組み合わせです。なぜなら、コーチングで世界を変えることに向けて、より広範囲にサービスを提供していけるからです。
コーチ・エィの取り組みのどのようなところが新鮮で革新的に見えますか?
パム 私は、コーチ・エィが継続して行っている、組織におけるコーチングとトレーニングの成果に関するリサーチに大きな価値をおいています。私は、これらのリサーチが今後も発展し続けると確信しています。そして、組織だけではなく、コーチングスキルを学ぶすべての人の生活の中で、コーチング文化が醸成されることをこれらのリサーチは証明しています。組織が発展し、そこで働く人が可能性を広げていくことにおいて、常に最先端であることをこのリサーチが可能しています。
コーチ・エィと連携することにより、どのような可能性が広がりますか?コーチ・ユー、コーチ・エィ双方にとってどのようなメリットがあるでしょうか?
パム このパートナーシップは、人材、商品、サービスの見事な融合を可能にしました。私たちは、より広い対象に我々のリソースを提供できるようになるとともに、ほぼすべての市場に対して対応可能になりました。また、このパートナーシップによって、世界のコーチングの新しいトレンドやコーチングの変化・発展に関する最新の情報が常に入手できるように、コーチ・ユーはサポートしています。
コーチ・エィによる買収・買収後のフェーズを経験したことで、コーチとして、そしてリーダーとして、どのような新たな気づきを得られたのでしょうか?
パム コーチ・ユーの成長をサポートするために、コーチ・エィと提携することに踏み出したことに、私は喜びを感じています。コーチ・エィのスタッフの一緒に協力して仕事をするやり方、相手を尊敬する姿勢、思慮深さ、ビジネスセンスには感銘を受け、率直にとても楽しいと感じています。
私たちは、この業界での仕事やすべての局面において、コーチング型リーダーやトレーナーのモデルとなるように最善をつくしています。私は、パートナーと仕事をすることがどれだけ楽しいかを今、改めて実感しています。
コーチング業界の今後
老舗のプロバイダーの目から、今業界で何が起こっていて、どの領域でコーチングが発展しているように見えるでしょうか?
パム コーチングは始まったばかりです。私たちは90年代初頭からコーチという職業を育ててきました。しかし、コーチングがもたらすインパクトと機会は無限にあります。コーチングは、教育、家庭、リーダーシップ、営業、キャリアワークなどに携わる人にとって不可欠のコンピテンシー(能力)となってきました。コーチングスキルのトレーニングを受けたリーダーや個人は、キャリアパスにおいて競争優位性を持つということを、私たちは今後ますます実感していくでしょう。
コーチングとリーダーシップの影響に関する研究は、その初期段階にあります。私たちは、コーチングが世界にどのような違いをもたらすのか、まだ完全にはわかっていません。
コーチ・ユーとして、今後どのようなビジネスチャンスを狙っていますか?
パム 組織やスモールビジネス、起業家、教育者などを通じて、世界の一人でも多くの人にコーチングのアプローチを身につけてもらうことを支援する事業を構築していきます。
インパクトをもたらす仕事を続けるために、私たちのさまざまな商品やサービスを改良し、更新し、創造していきます。
(了)
書面インタビュー実施日: 2020年5月
聞き手: Hello Coaching!編集部
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