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建設的なコンフリクトを起こしていますか?

【原文】How to Make Conflict Constructive
建設的なコンフリクトを起こしていますか?
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革新的なチームを率いるリーダーの特徴とは

建設的なコンフリクト(対立)と聞いて、そんなことは不可能だと誰もが思うかもしれない。誰がコンフリクトを建設的に起こす方法を知っているというのだろうか?実際、米国ベイツ社のエグゼクティブ向けアセスメント、ExPI™では、「周囲の人が、コンフリクトのプラスの価値を認識できるように助ける」という項目は、回答者のスコアが全90項目の中で最も低くなっている。一般的に、リーダーは、ポジティブで建設的な方法でコンフリクトを促進することがあまり得意ではないようである。

しかし、約2,000人のリーダーを対象としたExPI™のデータを見てみると、建設的なフィードバックに長けているリーダーは存在することがわかった。さらに重要なのは、収益力が高く、業績の良い革新的なチームを率いることに長けたリーダーの特徴として、建設的なコンフリクトを促進させていることが統計的に示されている点である。つまり、一部のリーダーは、コンフリクトをうまく起こすことで、ビジネスの成果を大幅に向上させることができるのである。

イノベーションやより良い意思決定にはコンフリクトが必要であることを示す多くの書籍や記事があり、それらから、コンフリクトを活用して並外れた成果を上げているリーダーを特徴づける具体的な行動を特定することができる。
これらのリーダーに共通しているのは、チームメンバーの最高のアイデアを引き出す最適な緊張感の量を感じ取る能力を備えていることである。以下の図は、それを表している。

緊張が低すぎる組織

グラフの左側は、緊張やコンフリクトが少なすぎるとどうなるかを示している。リーダーは、チームメンバーが困難な議論を避けるように促し、全員の視点や意見を交換しあったり、議論したりすることをせずに意思決定する傾向がある。心理学者はこの状態を「flinght(逃避)」反応と呼ぶ。人々は潜在的なコンフリクトを避けて、表面的な調和の感覚を維持するか、または違いを扱うことから逃げるのである。リーダーにとってコンフリクトが不快であれば、チームは決して建設的な議論を持つことはできない。相違は消えては行かない。つまり、それらが対処されることはないのである。

その結果、チームは未解決のコンフリクトに陥ることになる。多くの場合、チームメンバーは受動的で攻撃的になりがちで、自分たちの意見を述べる機会がなかったために、どのような決定が下されたとしても、それを支持できなくなる。あるいは、後日のミーティングで、決定に満足していないメンバーが、またその問題を持ち出すことになる。これが、チームが同じ問題を議論する同じ会議を何度も何度も繰り返している大きな理由である。課題は解決されない。問題は避けられたが、緊張感は多少残っている。

緊張が高すぎる組織

グラフの右側は、緊張が高すぎると何が起こるかを示している。この領域では、リーダーは議論が破壊的になっていることを認識していない(あるいは気にしていない)。実際、ExPI™の調査では、「コンフリクトが破壊的になったり、慢性化したりしたときにそれに気づき、迅速に介入する」という項目は、回答者のスコアがリーダーシップモデルの90項目の中で80番目という低い順位にランク付けされている。これは、リーダー共通の弱点であり、チームメンバーがコンフリクトを嫌う主な理由だ。コンフリクトが個人的で痛みを伴うものになっているのである。典型的な例では、最も支配的な人(多くの場合、リーダー)が会議を牛耳り、チームに自分の考えを押し付けようとする。全員の意見を聞くような形で意見の違いが議論されることはなく、多くの未解決のコンフリクトが残されるのである。

建設的なコンフリクトを支援するリーダーの行動とは

私たちのデータベースによると、収益力が高く、業績の良いチームを率いるような、イノベーションを促進することに優れたリーダーたちは、最適な緊張感を見つけることができる。つまりグラフの中心にある "関わり "と書かれた部分がそれをあらわしている。 

これらのリーダーを特徴づける行動はたくさんあるが、最も重要な行動は次の2つである。

  • チームメンバーにとって心理的に安全な環境を創り出している
  • 共感力とアサーティブに自己主張する能力の面で優れている

安全な環境をつくる

まず、これらのリーダーが安全な環境を作るということについて見ていこう。例えば、彼らは次のような行動で統計的に高いスコアを出していることがわかる。

  • 時間をかけて話を聞き、相手も聞かれたと感じる
  • さまざまなアイデアや異なる視点にオープンである
  • 辛口のフィードバックをするときでも、前向きな意図で言ったことが明確である
  • 相手の心配事や感情を明確にする手助けができる
  • インクルージョンとは、異なるやり方を許容することであることを理解している
  • メンバーに試すこと、彼ら自身を信頼すること、新しいことを試みることを奨励している

このようなリーダーは、メンバーが安全に発言ができるように、どんなコンフリクトも個人的なことや扱いにくいこととしてとらえない。例えば、彼らは以下のような項目のスコアがかなり高い。

  • コンフリクトが破壊的および/または慢性的になっている時にはそれを感じ取り、迅速に仲裁する。
  • メンバーが動揺している時には、安定させる役割を担う
  • 思慮深い態度と客観的な視点を示す

共感力とアサーティブな自己主張が鍵

人々が安心して発言し、お互いに挑戦し合えるようになれば、リーダーは、アサーティブに自己主張すると同時に、チームメンバーの感情に触れることもできる。彼らはチームメンバーがどのくらいの緊張やコンフリクトを許容できるのかを知っている。

そのようなリーダーはアサーティブネスのアセスメント項目で、次のような点が秀でている。

  • 自分の意見や見解、反応を公表することをためらわない
  • トゲトゲしくなったり、議論をシャットダウンすることなく、自分の思いを相手にしっかりと話すことができる
  • 目的のためであれば違う視点を選択し、合理的な反応を期待する
  • 不愉快な思いをせずに、異なった意見を持ち合うことができると信じている

緊張を許容することの重要性は、私たちが検証したチーム・アセスメントでも裏付けられている。チームの調和を保つために、メンバーは率直な意見を述べたり、同僚にフィードバックをしたり、反対意見を表明したりすることを避けることに私たちは気づいていた。チームメンバーは信頼をベースにして建設的なコンフリクトを起こすのではなく、現在の信頼関係を維持するためにコンフリクトを避けているのである。皮肉なことに、緊張状態をうまく扱うことができれば、信頼関係は実際に深まる。

成功したリーダーは、健全な緊張感を作り出しているが、同時に、彼らは「部屋の空気を読む」ことに優れているので、緊張やコンフリクトの量を少しずつ増やしたり減らしたりすることができる。彼らは以下のような行動において優れている。

  • メンバーのノンバーバル(非言語的)なメッセージを読み取って対応すること
  • メンバーの心配事や感情を明確にする手助けをする

彼らはまた、大きな目的のためには、コンフリクトを必要なものと位置づけることができる。つまり、議論は最善の解決策を見つけるために行われるということである。それは個人的なものではなく、チームや組織にとって何が最善かということなのだ。例えば、そのようなリーダーは、以下の点でかなり高く評価されている。

  • リーダーのお陰で、メンバーは、自身がより大きく、重要で、意味のあるものの一部であることを感じることができる

このようなリーダーは、メンバーに、自分達の葛藤は自分達よりもさらに大きな何かのために必要なものだと感じさせることができる。それはビジョンやチームの目的に関することであり、他の人に影響を与えて、自分のアイデアを採用させようとする行為ではない。最高のアイデアにたどり着くことを目指している。彼らは模範的な行動を示しており、以下のような謙虚さの項目でとても高いスコアを出している。

  • リーダーがすべての答えを持っていないことを知っている
  • すべての答えを持っていることよりも、真実に価値を置いている

彼らは、エゴや権力ではなく、アイデアについての議論を促す。それがメンバーが安全だと感じ、また、コンフリクトが建設的である理由だ。チームは、ひとりでは成しえなかった解決策を作り出すことができる。

リーダーが安全な環境を作り、メンバーが健全な議論をするのを助けるために共感的に自己主張するとき、コンフリクトは建設的なものになる。これまであげてきたリーダーの特徴に焦点を当て、もっとイノベーションを起こし、成長を促進し、共により良いパフォーマンスを発揮できるようにあなたのチームをリードしていこう。

このブログ記事は、「The Goldilocks Approach to Team Conflict: How Leaders Can Maximize Innovation and Revenue Growth」(The Psychology Manager Journal 2019年2月号)に掲載された記事を元にしている。

筆者について

マイケル・セイチック(Michael Seitchik)氏は、米国ベイツ・コミュニケーションズの研究・評価部門のディレクターとして、定評のある評価や重役のプレゼンスを高めるガイダンスを提供している。前職ではRHR Internationalの上級役員教育部門の取締役社長を歴任。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】How to Make Conflict Constructive(2019年11月27日にBTSのウェブサイト掲載された記事の翻訳。BTSの許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated with permission of © BTS 2020


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