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「事実+好奇心」 ーよりよいコミュニケーションのための方程式ー
2021年05月11日
この記事は、2020年11月24日に Coach U Insights に掲載されたものである。
リーダーの多くは、難しい会話を避けている。それは、どのように会話を始めればよいかわからないからである。私が開発したシンプルな方程式は、そのようないわゆる難しい会話にも当てはめることができる。私のエグゼクティブ・コーチングのクライアントの多くは、その方程式が、私が提供したツールの中でも最も役に立つものの1つであり、これを使い続けることで、非常に良い結果が得られていると言っている。
リーダーのグループに、コーチングスキルのトレーニングをする際、私は次のような例文を各テーブルに1つずつ与えている。
- あなたはチームミーティングに3回連続で遅刻した。私たちの仕事は、あなたにとって重要ではないのですか?
- あなたがそのプロセスを踏むように毎回注意しなくてはいけないことに、私は疲れたよ。
- あなたは同じ話をするために、3回も私のところに来た。私の耳がきこえないとでも思っているのか?
- あなたがやった仕事を、私たちはやり直さなければならない。これで2回目だ。あなたはひとつくらいまともに仕事を完成させることができないのか?
- ねえ君、せっかく助けてあげたいと思っているのに、あなたは私の言葉に耳を傾けていないようですね。
- いつになったら言い訳をやめて、何か行動を起こしてくれるんですか?
そして、彼らにそれらの例文を「ニュートラルな言葉 」で言い換えてもらうようにしている。ニュートラルな言葉とは、次のようなものである。
- クローズド・カンバセーションではなく、オープン・カンバセーションを用いる。
- 攻撃的、防御的、閉鎖的な態度ではなく、心が通う対話を促進する。
- 誠実さを持ち、敬意を表わす。
- 攻撃やネガティブな感情のエネルギーは持たない。
- 判断や非難、「間違っている」という指摘ではない。
たいていのリーダー達は、前述の6つの例文を読んで苦笑する。彼らは、これらの言葉がいかに対立や人間関係の悪化につながるかを理解している。しかし、どうしたら「ニュートラルな言葉」で言い換えられるのか悩むようだ。
例文のような声がけは、ネガティブで緊張感のある会話を生み、それによって物事がうまくいかなくなるという非常に分かりやすい実例であることが見てとれると思う。そのため、話し手は衝突が起きたり事態が大ごとになることを恐れて、会話をすることさえも避けてしまうのである。
「事実+好奇心」の方程式とは
このような例を踏まえて、私は「事実+好奇心」というシンプルな方程式を提案する。
- 事実とは何か?関係者全員がそれが事実であることに同意するならば、それは事実である。
- 好奇心とは何か?それは、前提を脇に置き、私たちが本当に耳を傾けることができるオープンな態度である。
たとえば、前述の例文を言い換えてみよう。
- あなたは会議に3回も遅刻している。何があったのですか?
- あなたがそのプロセスを踏んでいないことに気がつきました。何がそうさせているのか理解したいので教えてくれますか。
このようなやりとりをすれば、心の通う対話になることが理解できると思う。もし、前述の例文1に対して、相手がこう答えたらどうだろうか。
「はい、本当に申し訳ありませんでした。自分達の仕事は大事だと思っていますし、チームメンバーとして貢献したいと思っています。でも、年老いた両親を朝、長期ケアの介護施設に転居させることが続いていて、市内に戻るのが大変なんです。私たち家族全員にとって非常に変な時期ですが、この週末までには終わらせます。」
もし、あなたがすでにこの人に対してかなりネガティブな先入観を抱いており、さらに怒っていたとしたら、この返事を聞いてどう感じるだろうか?もしかしたら、相手にはあなたと関係のない理由があったにもかかわらず、あなたは被害者的な解釈をしていたかもしれないのである。
練習として、残りの4つの例文をニュートラルな言い方に置き換えてみよう。
なぜ「事実+好奇心」の対応は難しいのだろうか?
この見出しに対する一つの理由は、私たちの意識は、限られた情報から説得力のあるストーリーを作り上げるようにできているからである。
一例をあげてみよう。私は2つのコーチングスクールの講師をしている。そのうちの1校では、1つのモジュールの履修期間は1ヶ月間で、学生は1モジュールにつき4回のクラスのうち1回を欠席してもそのモジュールの単位を取得することができる。ある時私は、クラスの名簿上のある学生の名前を目にした。1回目の授業には彼を除いて全員が出席していた。彼は2回目の授業も欠席していたので、私はそのモジュールを未履修にした。同じことが1ヵ月後にも起こり、その2ヵ月後にも起こった。私は憤慨して、とてもニュートラルなトーンとはいえないメールを事務局に送った。「このような無責任な人をこのプログラムに参加させるべきではない!キャンセル待ちのリストがあるのに、彼は他の人が手にできたはずの機会を奪っているのである。2つのクラスを予約してどちらにも出席しなかった場合は、一定期間待たないと再度予約できないようなポリシーが必要だ。このような行為を許すことはできない!」。
返信で受け取ったメッセージには このようなものだった。
「この人は重度の病気を持っています。真面目に授業に出席しようとしていますが、自分ではどうしようもない理由で出席できないことがあるのです。」この返信を読んで、私は自分が最低な人間だと思った。私は彼を軽蔑し、やる気の無い人として追いやってしまったのだが、彼は勇気があり、むしろ共感と感謝に値する人であることがわかった。
私たちはいつもこのようなことを繰り返している。私たちの脳は、いくつかの事実を知ると、すぐにその人や自分自身、人生などについてのこれまで持っている仮定にもとづき、その事実を裏付ける説得力のあるストーリーをすぐに組み立ててしまいがちだ。そして、そのストーリーに基づいて感情的な反応を起こす。私は今回そのような反応の代わりに、「事実+好奇心」の方程式を活用することができたはずだ。「この人は3回連続で私のクラスを予約していましたが、出席していないことに気がつきました。どうしてなのか理由を知っていますか?」
この練習では、自分が行動に走る前に一呼吸おくこと、そして誰かに対するネガティブな感情が爆発する前に立ち止まることが理想的だ。また、すでに立ち止まることができている場合は、あなたが把握している話が事実かどうかを自問し、もしそれが明らかでない場合は、そのことについて深刻にならないように試してみて欲しい。
「事実+好奇心」の方程式をぜひ試してみて欲しい。私のクライアント達は、それがとても役に立っているということをいつも私に話してくれる。
筆者について
ジョエル・ロッタイザー博士(Dr. Joel M. Rothaizer, MCC)はClear Impact Consulting GroupのCEOで、エグゼクティブ・コーチング、リーダーシップ開発、組織・チームの効果や効率性を高める取り組みを専門分野としている。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Fact + Curiosity: A Formula For Better Communication(2020年3月11日にForbes Coaches Councilに掲載され、2020年11月24日に Coach U Insights に掲載された記事の翻訳。許可を得て翻訳・掲載しています。)
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