Global Coaching Watch

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「疲労」があなたのチームの生産性を低下させている

【原文】Fight the fatigue that’s killing your team’s productivity
「疲労」があなたのチームの生産性を低下させている
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この半年間、多くのリーダーから「自分自身やチームのモチベーションを上げるにはどうしたらよいか」という相談が、私のもとに殺到した。さらに話し合ってみると、問題の根源はモチベーションの低下ではなく、「疲労」であることが判明してきた。私が世界中で行っているトレーニングやリーダーシップ・カウンセリングのセッションでは、必ずといっていいほど、疲労が倦怠感やモチベーション低下に影響していることに気づく。たとえば、あるCEOが部下の比較的小さなミスに対してキレてしまう、あるシニアエグゼクティブは、些細なことに1時間も愚痴を言っていたりする、また、あるコンサルティング会社では、部下のクライアントへのエンゲージメントに関して根拠のない懸念を上司が抱いているがために、その上司は部下に週100時間の労働を強要してしまう、といったものである。強いリーダーは、もう限界だと感じていてもなお、自分が十分にやっているかどうかを常に自身に問いかけている。

コロナ禍で奪われたリラックスするための時間

これらはすべて、持続的なストレスの兆候である。通常の状況であれば、前述のような行動をとるリーダーは少ないだろう。しかし、新型コロナウィルス対策のロックダウンや、休暇、旅行、人との交流といったリラックスする手段に対する制限が大きな影響を及ぼしているのだ。これはすべての従業員にいえることだ。以前のようなエネルギー補給ができない中、長時間のストレスや長時間労働はあまり良くない行動につながる可能性がある。このような行動は、チームのエネルギー、効率、イノベーション、そして最終的にはパフォーマンスを低下させる。

以下の統計がそのことを明確に示している。

  • 2020年6月にLyra Health社と非営利団体National Alliance of Healthcare Purchaser Coalitionsが実施した調査では、米国の労働者1,265名のうち80%以上が、メンタルヘルスの低下に伴うネガティブな感情を経験したことがあると回答し、3分の1の回答者に臨床的な不安やうつ状態があったことを報告している。
  • 同調査では、回答者の65%が、メンタルヘルスの問題が仕事への能力に影響を与えていると回答し、40%が燃え尽き症候群に近い状態であると報告している。
  • 2018年に英国のメンタルヘルス財団が4,619人を対象に行った調査でも、同様の結果が得られている。

人口の65%が悩んでいるということは、あなたのチームの約10人中7人が悩んでいるということになる。そして、それがパフォーマンスに影響を与えている可能性があるのだ。人はそのようなレベルのストレスに直面すると、論理的かつ明確に考える能力を失ってしまう。ミスや変化に対応する能力も低下するし、創造性も失われてしまう。さらに、ビジネス上の価値観を携えてリードしていく力も失なってしまうことに繋がりかねない。

ストレスの蓄積を振り返る

新型コロナウイルス流行前であっても、業務の繁忙さに対応した社員を表彰する会社があった。しかし、今回のパンデミックでは、息抜きになるような活動への機会が失われたため、過労からくるストレスがもたらす問題を悪化させてしまった。毎日の通勤で得られる休息時間の多くが失われてしまった(通勤自体がストレスになることもあったが)。一日中家にいて仕事以外にすることがない状況によって、多くのオフィスワーカーは以前より長時間労働になっていった。家がオフィスであり、いつも家にいるということは、いつもオフィスにいるということと同じだ。労働環境に柔軟性を持たせた結果、皮肉なことに多くの人にとって、仕事をオフにする機会が奪われてしまった。

リーダーは、働きすぎの状態をクライアントのせいだと責任転嫁する場合が多い。働く時間をさらに増やしたり、人に時間をかけさせたりすることが、顧客を幸せにするとは思えない。もし、あなたが部下を酷使していることをクライアントが知ったら、そんなあなたからクライアントは何かを購入したり、あなたと一緒に過ごしたり、あなたを他の人に紹介しようと思う可能性が果たして高くなるだろうか?

では、この動きを修正するにはどうすればよいか。まず、自分自身のパターンを確認し、あなたがチームや他のメンバーの疲労感を増やしていないかどうかを知ることから始めよう。リーダーとしてのあなたの選択や行動が、他のメンバーの効率を下げていないか?実質的な利益が得られないのに、仕事量やストレスを増やしていないか?

次に、達成しようとしている非常に具体的な目標に対して、自分たちが何をしているのか、その努力がどのように真の価値をもたらすのか、ということを考え挑戦しよう。たとえば、3日後に開催されるクライアントとのミーティングのために、詳細な報告書を作成するようチームに依頼するとする。あなたはそのレポートを作るのに、実際にどれくらいの時間がかかるか理解しているだろうか?依頼されたデータを集めるための複雑な作業を認識しているだろうか?あなたのチームが手掛けている同時進行中の他のプロジェクトを認識しているだろうか?もし認識しているなら、それらを再度優先づけさせることができるのか?あなたがチームにかけたプレッシャーを知ったら、クライアントは喜ぶだろうか?そして、その報告書は、そのクライアントとのミーティングのゴールを達成するために効果をもたらすのだろうか?言い換えれば、あなたはチームの時間、エネルギー、リソースを最大のリターンをもたらすことに費やしているだろうか?

最後に、仕事を完成させるためのプロセスを検証する。これらのプロセスは、良く考えられていて、時には不可欠なものだとしても、多くの場合、膨大な時間を消費し、モチベーションを低下させ、疲労感を増大させている。何が原因となり負担が生じているのか、チームにヒアリングしてみよう。承認の階層が多すぎるのか、それとも期待されていることについてのコミュニケーションが不足しているのか?締め切りが短すぎるのか?それとも、リソースが不足しているのか?障害を解決するための手段を考えよう。

ストレスからの回復を加速させる方法とは

エリートアスリートを対象とした大規模な研究によると、優れたパフォーマンスを長期的に維持する秘訣は、ストレスを感じる時期と回復する時期を組み合わせることだという。リカバリーとは、心拍数を下げ、ストレスホルモンを発散させる活動のことで、心を落ち着かせ、エネルギーと情熱を生み出し、喜びを感じさせることだ。例えば、オリンピック選手は、好きな音楽を聴く時間を作ることで、心拍数を下げ、激しい運動から回復することができることを認識している。アスリートには、それぞれの回復方法がある。それは生理的で、測定可能で、個人のニーズに合わせたものでなければならない。

経営者やアスリートのパフォーマンスを測定するPQの創設者であるアンドリュー・マクドナルド(Andrew Macdonald)氏によると、ストレスや疲労の根本的な原因を探り、適切な回復策を講じるかどうかで、最高の競争力を持つオリンピックチームと平均的なチームとの違いが生じるという。実際、一般的に、回復はパフォーマンス、創造性、コラボレーション、エンゲージメントを促進する。

多くの人にとって、睡眠は回復のための重要な要素だ。基本的には、マネージャー自身が十分な睡眠時間(8時間)を確保し、チームにも同様の努力を促すべきである。しかし、睡眠の習慣を変えるだけでは、燃え尽き症候群を解消するのに十分ではない。エグゼクティブ達は、起きている間にも回復の時間を設ける必要がある。リーダーは、チームの一人ひとりに、最高のパフォーマンスを発揮するためには何が必要かを尋ね、その活動を行う許可と励ましを与える必要がある。

毎日の生活や忙しい仕事の合間を縫って休息をとるのは大変なことだが、それがモチベーションやパフォーマンスの向上につながることを考えてみよう。清掃用品メーカーのTork社が北米の労働者1,600人を対象に行った調査を、KRCリサーチ社と南カリフォルニア大学が監修・分析した結果、昼休みをしっかり取ることで、仕事への関与、仕事の満足度、効率が向上することが明らかになった。空想にふける、楽しいものを読む、音楽を聴く、散歩をするなどの行為は、パフォーマンスの向上に繋がる。このように、集中して仕事をした後に休憩を取るというサイクルは、人間の脳が最もよく働く方法である。エリートアスリートは何十年も前からこのことを知っており、厳しい訓練を受けて実践している。

Journal of Organizational Behavior誌に掲載された研究によると、その人に合ったほんのささいな休息が1日の終わりの緊張を改善するという結果が出ている。先日、あるシニア・エグゼクティブと話しをする機会があった。彼女は毎晩、その日の良かったことを1つだけ日記に書く習慣を身につけていた。彼女はこのシンプルな習慣によって、眠る前にリラックスすることができていた。また、別のエグゼクティブは、終業時、帰宅する前にコーヒーブレークを取り、仕事以外の本を15分間読むだけで、幼い子どもの世話をするためのエネルギーが得られることに気づいていた。

以下に、15分で回復を生み出す方法の例を紹介する。雑誌を読む、音楽を聴く、デスク以外の場所でランチを食べる(他に何もしない)、電話もメールもしないで一人で静かにコーヒーを飲む、家族と連絡をとる、子どもに本を読む、散歩したりや少しの時間外に立つ、ゲームをする、絵を描く、想像する、いろいろな角度から写真を撮る、詩を読む、プライバシーが保てればダンスをする、などがあげられる。もちろん、瞑想やヨガ、マインドフルネスなどの人気の高い方法も有効だが、それはあなたがそのプロセスを楽しめればいいだろうし、誰もがそうではなかったりするだろう。

納得できないだろうか?ぜひ試してみて欲しい。チームメンバー5人に、仕事中のストレス解消に役立つ活動をあげてもらう。そして、そのうちの1つを1週間、毎日行うように積極的に彼らに働きかける。30分の時間を設けてもよいが、タイミングはメンバー自身に任せるのがベストだ。自分自身もやってみよう。パフォーマンス、正確性、創造性、エンゲージメント、思いやりなどへの影響を測定してみる。もし良い結果が得られなかったら、私に連絡して欲しいーーーただし、私はあなたからの連絡は来ないと予想している。

筆者について

ワンダ・T・ウォレス(Wanda T. Wallace)氏は、リーダーシップ・フォーラム(Leadership Forum)のマネージング・パートナー。コーチ、ファシリテーターであり、会話の変化を通じたリーダーシップの向上について講演を行っている。「安全地帯からの脱出(Out of the Comfort Zone)」というラジオ番組やポッドキャストのホストを務める。”You Can’t Know It All: Leading in the Age of Deep Expertise”の著者。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Fight the fatigue that’s killing your team’s productivity
(2021年5月26日のstrategy+business magazineに掲載された記事の翻訳。 strategy+business magazineの許可を得て翻訳・掲載しています。)
© 2021 PwC. All rights reserved. PwC refers to the PwC network and/or one or more of its member firms, each of which is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details. www.strategy-business.com. Translation from the original English text as published by strategy+business magazine arranged by COACH A Co., Ltd.


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