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なぜ、エグゼクティブにとって「ありのままの自分でいる」ことが難しいのか?

【原文】The Authenticity Trap: For Executives, Keeping It Real Can Be Really Hard to Do Elizabeth Freedman
なぜ、エグゼクティブにとって「ありのままの自分でいる」ことが難しいのか?
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私のクライアントのあるCEOは、彼の会社では、社員全員が「ありのままの自分」を仕事の場に持ち込むことを奨励する取り組みがあることを私に話した。私は彼に、「その取り組みは、つまりどういうものなのですか?」と尋ねた。彼は一瞬黙っていたが、最後に「その答えについては考えてみます」と言った。私は質問を変えて、「では、あなた自身がその取り組みを体現するためには、何ができると思うか教えてください」と尋ねた。ここでも彼は沈黙。最後に私は「この取り組みの意味が何なのか、私たちは本当には理解できていないということでしょうか」と尋ねると「そういうことだと思う」というのが彼の答えであった。

オーセンティシティ(Authenticity:ありのままの自分であること)が注目されているが、そのこと自体は良いことだとは思う。しかし、それが意味するところについて、私は複雑な思いを抱いている。どのように定義するかにもよるが、「ありのままの自分でいること」とは、透明性をもち、正直であり、リアルであることを意味する。それは、私たちに無防備であることや、ありのままの自分自身を仕事の場に持ち込むことを求めている。また、自分たちが思っていることを声に出すことや、目的のためには権威に対して挑戦すること、開放的でダイバーシティのある環境をサポートできるように行動することを促す。それらのことは、私たちやチームが成長できるような職場環境をつくる上で、真価を発揮する重要な考え方でもある。

ここに問題がある。「ありのままの自分でいること」の概念とそれを実践することの間には大きなギャップがあり、混乱が生じている。そのため、私のCレベル(CEOやCOOなど)のクライアントの多くは、「では、実際にはどうするのか?」と自問するわけだ。皮肉なことに、この種の質問はたいてい密室で行われる。人によってはこの考え方は本当のところ「でき過ぎた話」のように聞こえるからである。あるリーダーはこう言う。「それは罠のようなものだよ。『ありのままの自分でいること』を示しすぎると、プロらしくないとか、自己開示しすぎだと見られる。逆に、自分らしさが足りないと、真意を読みとりにくいとか、透明性に欠けると思われてしまう。このあたりを見極めるのは難しいんだ」。ありのままの自分でいようとすることは多くのリーダーにとって、難しい高所作業をしているようなものだというのも無理はない。

では、実際にありのままの自分でいることを目指すにはどうすればよいのか。シニアリーダー向けに、いくつかのヒントを紹介する。

リーダーが「ありのままである」ことから始めよう

過去1年間、私はコロナウイルスの陽性反応が出た多くのリーダーたちと仕事をしてきた。その中には、入院するほど体調を崩し、何日も仕事を休んだリーダーもいた。ほとんどのリーダーは、そのことを親しい同僚の1人か2人にしか話さず、極めて内密にしていた。確かに、リーダーが健康に関することを公表したくない理由はたくさんあるが、現実を直視してほしい。事実を隠しているのは、自分が弱いと思われたり、リーダーシップを発揮できないと思われたりすることを恐れているからだ。自分に必要な能力があるのかどうか疑われるのではないかと思うからだ。また、投資家や取締役会にそのことを知られた場合の数字への影響が心配だということもある。

このアプローチの問題点は、真実を打ち明けた人数が少なければ少ないほど、疑問が生じやすく動揺が広がりやすくなることだ。同僚が「なぜいつものように行動しないのか」「なぜ毎週のミーティングを欠席したのか」などと疑問を抱くようになる。また、実際には健康上の問題があるにもかかわらず、それを乗り越えようと果敢に努力しているリーダーには、非常に大きな負担がのしかかるのも事実である。一方で、優れたリーダーは自分のチームのメンバーが病気になったり、健康上の問題を抱えていたりした場合、それを何としてでも知りたがるものだ。ポイントは明確だ。それは、すべては常にトップから始まるということだ。リーダーは、自分自身がありのままであろうとしないのに、従業員にはオープンでありのままでいることを期待することはできないのである。

ありのままであれ、しかし自滅しないように

職場でありのままの自分でいることを貫くのは容易ではない。なぜなら、それに伴うリスクが現実にあるからだ。ある会社社長に最近起こったことを例にあげてみよう。彼は上司であるCEOと会い、自分に与えられた非現実的な目標に対する懸念を伝えてみた。すると、「私はなぜ、そんなお前に給料を払わなければならないんだ」という答えが返ってきたそうだ。

人を敢えて落胆させたい人はいない。しかし、どんなに神経の図太いリーダーであっても、このような会話をしたくはないだろう。特に誰もこのCEOの責任を追及しないような場合には。

では、どうすればよいのか。まず、ありのままであることと、後悔するようなことを言うことを混同してはいけない。黙っていることができないからといって、自滅してはだめだ。大切なことは、いつ、何を言うべきか、何を共有すべきかを見極める能力を身につけることだ。ここに、「ありのままの自分でいる」という考え方の最も重要なポイントがある。それは、私たちの多くが直感的に知っている方法ではない。それは、スキルであり、習慣であり、行動なのだ。発言すべき時、状況を静観すべき時、リスクを取るべき時、ただ黙っているべき時を知ることは、すべて一つのパッケージなのである。社員に「ありのままの自分でいること」を求める一方で、それに伴うリスクを回避するためのスキルを身につけさせないと、彼らに不利益をもたらすことになる。

「ありのままの自分でいる」ことを具体的な行動や言動に置き換える

「会議でもっと自分の意見を言おう」とか「自分に正直になるべき」というような忠告はもっともであるものの、リーダーにとっては「では、どうすればいいのか」と悩むことが多いものだ。このような場合には、練習、準備、そして本気で取り組む、というアプローチが効果的だ。そのためには、新しい行動をどこに取り入れるかを具体的に考えてみよう。例えば、次のようなことが考えられる。

  • 社員に厳しいフィードバックをすることを躊躇しない。
  • 調子はどうかと聞かれたら、必ず自分が本当に感じていることを伝える。
  • セールストークでは、早い段階でお金の話をするようにする。
  • チームメンバーに自分の個人的な話をする。

組織やリーダーは、社員にとって魅力的で開放的な環境を作り出すために、自らの文化をリーダーが真の意味であのままであることに向けて変化させようと積極的に行動し始めている。そのことはいいことだが、リーダーが責任を果たすことなく、口先だけのメッセージになってしまっては十分ではない。また、実践的なロードマップ無しに、リーダーにありのままであることを求めるのは難しい。一方で、ありのままの自分でいるのはそれほど複雑ではないという朗報もある。作家のサイモン・シネックは、「ありのままでいるとは、自分が信じていることを話し、実行することである」と書いている。それを実行するか否かは、私たち次第なのだ。

【筆者について】

エリザベス・フリードマン(Elizabeth Freedman)氏は米国BTS Bostonのエグゼクティブ・アドバイザー兼コンサルタント。Cレベルのリーダーやチームの業績向上に向けたコンサルティング、コーチング、ファシリテーションを提供している。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】The Authenticity Trap: For Executives, Keeping It Real Can Be Really Hard to Do
(2021年7月7日にBatesのResearch and Resourcesに掲載された記事の翻訳。Bates Communications Inc.の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated with permission of © Bates Communications 2021


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