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リーダーが「ありのままの自分でいる」こととは?

【原文】Can You Be Too Authentic?
リーダーが「ありのままの自分でいる」こととは?
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「ありのままの自分であること(authenticity)」は、優れたリーダー達が大切にし、実践してきた資質だ。自分がこれまで生きてきた経験を共有し、人間らしい言葉を使うことで、エグゼクティブは、チームメンバー、顧客、取締役会メンバーなどあらゆるステークホルダーと、人と人の間のリアルな感覚で繋がることができる。さらに、私達の調査で明らかになった重要なことは、「ありのままの自分であること」は、今日のリーダーにとって単なる「あった方が良い」というような資質ではなく、ビジネス上の必須条件であるということだ。私たちは、急成長している企業のリーダーを統計的に区別する5つのリーダーシップ資質のうちの1つが「ありのままの自分であること」だと証明した。さらに、ミレニアル世代を対象とした調査では、この強い影響力をもつ重要な集団にとっては、「ありのままの自分であること」はリーダーが持つべき最も重要な資質であることがわかった。未来のためにメンバーを導き、鼓舞したいのであれば、正直で本物のリーダーシップこそがその道を切り開いていけるだろう。

しかしながら、リーダーが「ありのままの自分であること」と「他者に過剰に共有すること」の境界線を曖昧にしてしまうとどうなるだろうか。

境界線はどこにあるのか

私が以前勤めていた大手金融機関では、会社が存亡の危機にあるという噂が流れた。メディアではその金融機関の買い手候補の話が飛び交い、社員は動揺していた。彼らには安心感が必要であり、リーダーシップには安定した手腕が必要だった。従業員とのオンライン会議を控えたCEOとのコーチングセッションで、私は彼がどのような情報を共有できるか、そして従業員が何を聞きたいと思っているかを話し合った。

法律や規約上の事情により制限があるものの、彼が明るく前向きに、今後も状況を共有することを約束し、今後の道筋が明確になるまで社員を落ち着かせるという点で、私たちは合意ができていた。 

しかし、彼がオンラインでプレゼンを開始し、まったく別の話をし始めたときの私の驚きを想像してみてほしい。その話の中には、分社化の可能性についての憶測や、買い手になりうる企業に関する比較的ネガティブな見解が含まれていた。その結果、多くの社員が将来の雇用に不安を感じてしまった。

私は、彼に、なぜそのようなことをしたのかを尋ねたところ、「透明性を保ちたかったから、台本通りにはしたくなかった。私自身の頭の中で考えていることを、彼らも聞くに値すると思った。私は自分自身に正直でなければならなかった」という答えが返ってきた。

彼の決断は目的をもったものだったが、HBR(Harverd Business Review)の記事にあるように、それは「ありのままの自分であることのパラドックス」であることも感じていた。率直でありたいという純粋な気持ちは、往々にして「自由気まま、無責任」と見なされ、チームが変化に直面している時期に、最も必要とされるものではない。むしろリーダーは、権威を示す態度と親しみやすい態度とのバランスをとる方法を見いだす必要がある。

リーダーがありのままの自分でいるために必要な4つのこと

以下に、リーダーがそのためにできる4つの方法を紹介する。

  • ひたすら入念に準備する
    ストレスがピークに達しているときや時間が限られているときは、まさに入念な準備を怠りがちだ。先のケースでは、リーダーは「準備」を「台本に従うこと」と感じており、それは彼のリーダーシップスタイルにそぐわないものだった。重要なメッセージを、自分が実際に使う言葉で書き出すことが大切だ。それも、文章ではなく、フレーズや単語で。そして、自然に聞こえるというようなレベルではなく、完璧といってよいくらい自然に聞こえるようになるまで、練習に練習を重ねる。
  • 聞き手が期待しているアジェンダを予測する
    変化というものに慣れていない人もいれば、変化を何度も経験している人もいるだろう。聞き手全体を考慮することは重要だが、特に、潜在的な変化によって感情的または仕事上最も影響を受けると思われる人たちについて配慮しよう。そういった人たちは、緊張を和らげられるような経験方法背景を持っていないかもしれない。そんな彼らには寄り添い、直接話しかけよう。
  • 自身の経験を共有する
    もしあなたが先ほどのような話を主導する立場にあるなら、恐らくそれはあなたにとって初めての体験ではないだろう。自分のキャリアの初期の段階で、相手の立場に立たざるを得ない経験があったかもしれない。それはどんな状況だったのか、あなたはどんな気持ちになり、何を聞く必要があったのかを思い出し、それを共有しよう。自分の経験をスピーチに反映させることは、聞き手への共感と理解を示すことに繋がる。それは、自分がよく分からない詳細な情報をあいまいにすることよりも大きな影響を与えることになるだろう。
  • 複数の 「自分 」を認める
    私たちの多くは、状況に応じて自分の見せ方を変えている。家庭での自分と職場での自分は違うかもしれない。それは、職場での自分が本来の自分ではないといっているのではない。ある環境では異なるタイプの自分らしさを持ち込む必要があるということだ。このことを受け入れ、リーダーとしての「自分らしい自分」を常に再定義する姿勢を持とう。あるリーダーシップの専門家は、次のように述べている。「リーダーとして必要なのは、自分が何者であるか(本質的な自己)を明確に認識することだけではなく、より大きなそしてより良い方向に向かって進んでいくたびに、リーダーとしてのアイデンティティ(構築された自己)を変容させていく姿勢である。」

鍵はバランスをとること

今日のビジネス環境は、混乱と不安の中にある。ビジネス戦略を実行し、持続的な成長を実現させるためには、上層部のリーダーがチームを安定させ集中させ、鼓舞することが極めて重要だ。これを効果的に行うことができるかどうかは、本来の自分らしい自分の力を発揮する能力と、企業が道を踏み外さないようにする使命感とのバランスにかかっている。時間をかけてあなたのコミュニケーションや周囲への共有の仕方に気を配っていって欲しい。そうすることで、あなたが望む、自分に正直でなおかつ影響力のあるリーダーになることができるだろう。

【筆者について】
Laura Fay(ローラ・フェイ)氏は、ベイツ社(現在はBTS社)のエグゼクティブ・アドバイザー兼コンサルタント。20年以上にわたって企業のリーダーシップに携わり、エグゼクティブ・コミュニケーションに深い専門性を持っている。危機的状況やチェンジマネジメントの際にシニアリーダーの相談役、コーチ、アドバイザーを務めている。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Can You Be Too Authentic?
(2020年3月30日にBatesのResearch and Resourcesに掲載された記事の翻訳。Bates Communications Inc.の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated with permission of © Bates Communications 2021


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