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あなたのリーダーシップ・ブランドとは?
2022年04月26日
自分自身の信頼性を高めるには、自分のキャリアの指針となってきた価値観と、周囲の人に受け入れてもらいたい価値観を明確にした方がいい。
キャリアの早い段階で、私たちはエレベーターに乗り合わせた時の短い会話の重要性を学ぶ。それができると、自分にとって重要な人物とたまたま出会って、「何に今取り組んでいるのですか?」とか、「ここで何の仕事をしているんですか?」と聞かれたときに簡潔・明瞭に答えられる。また、投資家の前で説明をする起業家にとっては、簡潔なセールストークも必須のスキルだ。魅力的なアイディアを短い言葉で表現できなければならないからだ。
しかしながら、シニアリーダーのコンサルティングを行っていると、エグゼクティブが見落としがちなエレベーター・トークがあることに気づく。それは、「あなたはどのようなリーダーですか?」「あなたのリーダーシップ・スタイルについて私たちが知っておくべきことは何ですか?」という問いに対する答えだ。それに対する思慮深い答えを用意しておくことは、昇進のきっかけになるかもしれない。しかしそれ以上に重要なのは、自分のリーダーシップ・スタイルを明確にすることは、チームメンバーとの信頼関係を築くことに繋がるのだ。それはあなたのリーダーシップのブランドを築くことだと捉えて欲しい。自分が何に立脚しているのか、つまり、リーダーとしての行動指針となる価値観、また、あなたが周囲に何を期待しているかということを認識することである。
リーダーたちは、このような問いに対して、何も答えを持っていないわけではない。「サーバント・リーダーシップ」を支持していると言う人もいるし、成果主義であるとか、優秀で誠実であることを重要視しているリーダーもいる。
そして、その答えは間違ってはいない。ただ、あまりにも一般的で上位概念の表現を使っており、周囲が彼らに期待できる行動という意味では、何も具体的なものが示されていないのである。企業のミッションやパーパスを示す言葉は、「世界をより良い場所にする」というような決まり文句が定番となっていて批判の対象になりやすいが、それでは受け取る側の気持ちは高揚しない。(技術系スタートアップ企業を風刺したHBOの「シリコンバレー」シリーズを参考にしてみて欲しい。)
パーソナルブランドの価値とは
企業価値と同様に、リーダー個人のリーダーシップ・ブランドは、プレッシャーやストレスがかかった時にその真価が問われる。そのような場面であなたは、自分の価値観を捨て、「落ち着いたらまた自分の価値観を取り戻せば良い」と自分に言い聞かせるだろうか。それとも、そのようなときこそ、自身の価値観が重要と考えるだろうか。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団の元CEOであるスーザン・デズモンド・ヘルマン(Susan Desmond-Hellmann)氏にインタビューしたとき、彼女はリーダーとして予測可能で信頼できる存在であることの重要性を語ってくれた。ある状況下で自分がどう行動するかを明確に周囲に示すことができていれば、「周囲の人は『あの人ならどうするだろうか』と常に考える必要がなくなります。」
たとえば、ロン・ウィリアムズ(Ron Williams)氏がエトナ社のCEOだった頃、彼がチームメンバーと共有したことが私には印象に残っている。彼は、全員が常に15%成長するよう努力することを期待していると明言した。「人は、『今やっていることを続けていれば、それでよい』と考えがちです。しかし、世の中は劇的に変化し、厳しい状況になっています。ビジネスも拡大しています。テクノロジーもより複雑になっている。新しいことをマスターしていかなければならないし、決してそのプロセスに終わりはないのです」。
ウィリアムズ氏にそのアプローチに至った経緯を尋ねると、通っていたコミュニティカレッジの教授をはじめ、周囲の人たちが自分の潜在的な可能性を後押ししてくれたのだという。「その人たちのおかげで、常に上を目指すという哲学を持つことができました。やがてそれは、人生のあらゆる場面で、常に15%向上するよう努力するという考えに集約されていったのです。」
リーダーシップにおける課題
エグゼクティブが自身の確固たるリーダーシップ・ブランドを身につけるための取り組みを私たちが支援する際、以下のような質問を投げかけている。
- リーダーとして、また同僚として、あなたにとって最も大切な3つの価値観は何か?誰からも信頼される、一貫した行動とは何か?
- これまでのキャリアの中で、あなたは自身の価値観をどのように実践してきたか?
- あなたの価値観は、あなたが成功をするためになぜ重要なのか?
- もしあなたが誰かを自分のチームに採用するとしたら、あなたのリーダーシップのアプローチと哲学について、彼らにはどのように語るのか?
これらの質問に答えようとする場合、内省するための時間を十分にとることが必要だ。また、ありきたりな文言や一般的な答えは避けよう。新しいチームを率いることになり、傘下の部下達との最初の面談で次のような質問を投げかけられたと想像して欲しい。「あなた自身のリーダーシップにおける価値観は何ですか?なぜそれがあなたにとって重要なのですか?それは実際にどのように実践できますか?その価値観は何に基づいているんですか?」
人は尊敬するリーダーについて語るとき、「オーセンティック(本物)」という言葉で表現することが多い。この言葉をリーダーシップの文脈で解釈すると、信頼できる、信用できる、本物である、裏表がないということになる。幸運にも、あなたが本物のリーダーのもとで働くことができれば、その日の上司の気分やストレス度合いによって、上司の状態が変わることを心配することにエネルギーを使う必要がなくなる。
このような一貫したリーダーシップは、トップを目指すすべての人の目標であるべきだ。さて、エレベーター・トークの話に戻ろう。「あなたは自分がどのようなリーダーであると認識していますか?」
【筆者について】
アダム・ブライアント(Adam Bryant)氏は、シニア・リーダーシップ開発会社であるExCo Groupのマネージング・ディレクター。ケビン・シェアー氏との共著に"The CEO Test: Master the Challenges That Make or Break All Leaders"がある。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】What is your personal leadership brand?
(2021年7月14日のstrategy+business magazineに掲載された記事の翻訳。 strategy+business magazineの許可を得て翻訳・掲載しています。)
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