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コーチに求められる謙虚さと勇気とは?
2022年10月04日
クライアントは完璧である
コーチングプロセスで大切なのは、「クライアントは完璧である」というコーチ側の強い信念だ。その信念に対して修正すべき点は全くない。クライアントは有能で、臨機応変に物事に対応ができ、さらなる可能性に満ちあふれている。コーチングは、このような有能なクライアントが、自分の考えを整理し視点を広げ、より効果的にさらなる成功へとめざす方法を自ら決定していくプロセスを支援するための、付加的なツールとして提供される。
このような関わり方を通して、クライアントのパートナーになるためには、私たちコーチが謙虚さと勇気を心の奥底で育むことが不可欠だ。
「私は知っている」を手放す
私たちの文化では、自分の持っている知識に対してプライドや自己価値を置いてしまうことが往々にしてある。我々は専門家として、常にクライアントに答えを提供できることに対して報酬が与えられると育成されてきた。問題は、この「私は知っている」という状況では、相手を中心に扱うことが非常に限られてしまうことだ。私たちが互いに自分の視点にとらわれ、またそれを全力で守ることに夢中になると、真に相手に耳を傾け協調することが、ほとんどできなくなってしまうのである。
そのような姿勢でコーチングに臨むと、パートナーシップは成り立たなくなることがおわかりいただけるだろうか。私たちが常に「私は知っている」というスタンスに立ってしまうと、クライアントは自分の状況に対して真のオーナーシップを持ち、自分自身の成長と発展を創造する機会を失ってしまうのである。
特に新米コーチにとって、これは私達が実践するコーチングの最も不可解な側面の一つだ。ある意味、これは彼らが思っていたことに反しているようにも見える。もし、私たちコーチは、クライアントにアドバイスをしたり、問題を解決したりするためにそこに存在しているのではないとしたら、クライアントは私たちのコーチングから、どうやって恩恵を受けることができるのだろうか?
コーチはオブザーバーに過ぎない
また一方で、コーチングは取り引きではないことを忘れてはならない。コーチングは変容のプロセスなのだ。そして、変容は外部からのアドバイスではなく、クライアントが自己認識のより深い層に到達することによってのみ、内面で起こるものなのだ。このことを念頭に置くと、コーチングとは、コーチ自身やコーチが携えているものを扱うのではないことが理解できる。コーチングとは、相手を扱うことだ。コーチングとは、クライアント自身の世界、経験、考え方を扱うことであり、それらを探索することである。
最も優れたコーチというのは、自分のエゴと、自分が正しいという欲求を抑える方法を学んだ人だ。そのようなコーチは、クライアントに機会を与えるために、コーチ自身がスポットライトを浴びることから自ら進んで身を引く。コーチは、自分自身の視点を超えて、クライアント自身の世界にたどり着く能力を身につける。ある意味、私たちコーチは、オブザーバー(観察者)に過ぎないのだ。コーチングスキルに精通し、コーチングプロセスにおいてのプロでありながら、クライアントにしかるべき機会を提供する謙虚さと勇気を持ち合わせているのがコーチである。
謙虚さと勇気に必要な自己基盤
このレベルの謙虚さを養うことは、臆病であることとは無縁である。謙虚になるためには、自分の内面を見つめ、自分の価値観に挑戦し、自分を成長させる勇気が必要である。それは、自分の内面が安定し何かを証明する必要が全くないほど自分自身に正直でいるという段階に到達することを意味している。私が信じているのは、クライアントのシステムには全く関係ない一つの可能性である。
私たちにとって、自分自身のファウンデーション(自己基盤)を継続的に整えることがとても重要である。私たちは、どこに自分の価値を見出すのか?自分のアイデンティティはどこで探し出すのか? 自分をどれだけ本当に愛しているか? 内的報酬と外的報酬のバランスはどうなっているのか? 外的な評価にどれだけ依存しているか? このような内的基盤を構築することで、私たちは相手と関わり、耳を傾け、活躍を促すのに十分な勇気を持つことができるのだ。
このレベルの謙虚さと勇気がなければ、私たちは互いにただおしゃべりしているだけで、本当の意味で価値のあることを交換しているのではない。私たちは繋がりによって成長する。コーチとして私たちは、相手が十分に話し、聞かれる機会を得るために、謙虚さと勇気をもたなければならない。そうすることで、クライアントは本来の居場所を確保し、その輝きを発揮することができるようになるのだ。
【筆者について】
エライアス・スカルトリ(Elias Scultori)氏は、国際コーチング連盟(ICF)認定マスターコーチ、プロフェッショナルのメンターコーチであり、リーダーシップとダイバーシティの分野において、様々なアイデンティティを持つグループや個人を支援している。主な活動は、民族、人種、性別、性的指向、宗教、年齢、障害、配偶者の有無、性格タイプ、職業上の地位などを含む、人それぞれの潜在能力と資質を特定し開発し、そしてそれを尊重することに重点を置いている。スカルトリ氏は、コーチ・ユーのインストラクターであり、コーチ・ユー認定のファシリテーターである。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Humility and Courage(2022年6月21日に Coach U Insights に掲載された記事の翻訳。許可を得て翻訳・掲載しています。)
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