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リーダーの自己認識の向上にマインドフルネスが不可欠である理由

【原文】Self-Awareness Without Cultivated Mindfulness Is Useless
リーダーの自己認識の向上にマインドフルネスが不可欠である理由
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自己認識を高めるだけでは足りない

多くの研修や人材開発では、自己認識を高めることに焦点が当てられている。たとえば、人事の担当者はそこに向けて、マイヤーズ・ブリッグス タイプ指標(MBTI)、DiSC、Colorsなどのアセスメントや同様のツールを使ったワークショップを行っている。また、コミュニケーションやコンフリクトマネジメントのスキルを教えたり、パフォーマンスをあげるための対話のモデルも紹介している。そのような取り組みを行い、人事部は研修に参加した人の割合を上層部に報告し、リーダーシップ開発への貢献度を示しているのだ。

その取り組みのどこが問題だろうか? 私のパートナーも指摘するが、認識は変化とイコールではない。認識それ自体には、ほぼ何の価値もない。それはなぜか? それは、自己認識を本当に活かすために必要な能力が私たちの中に培われていないからだ。つまりそれは、種を育てるのに必要な土も肥料も水もないような状態だ。実際に変化を起こすための条件を整えるには、内省する能力、つまりマインドフルネスを培う必要がある。

自己認識を継続的に培うプログラム

自己認識に注目することは、その第一歩として素晴らしいものだ。私とパートナーは、エニアグラム(人の人格を9つのタイプで分析する方法:編集者追記)が通常の他の自己認識モデルよりはるかに優れていると考えている。エニアグラムは、よりパワーと深みがあり、また、自己認識のそれぞれのレベルにおける各エニアグラムタイプの特徴を特定する要素がある。エニアグラムは人を枠に入れるためのものではない。むしろ、その人がすでに持っている自身の枠を認識しそれを広げることで、自己に埋没することなくその人が持っている最高の価値や理想と自分を一致させることができるとしている。

私たちは、エニアグラムに精通したトレーナーであるが、受講する上級管理職らが、内省する能力を継続的に培うためにこのトレーニングを利用することを確約しない限り、エニアグラム入門のトレーニングをただ提供することはできない。その理由を説明しよう。

「内なる観察者」を強化する

個人のパーソナリティをベースとした自己認識トレーニングの最初のステップは、自分がどの「タイプ」なのか、そしてそのタイプの長所と課題を学ぶことにある。しかし、それだけでは、最低限の価値しかない。この自己認識が、個人的また、仕事上の成長と発展のために不可欠なものとするためには、2つの重要な資質を養う必要がある。

内省する能力(マインドフルネス)の1つの要素は、自分自身の「内なる観察者」を開発し、継続的に強化することだ。「内なる観察者」とは、好奇心と思いやりをもって自分が行っていることを客観的に観察する人のことである。私たちのほとんどは、自分自身を観察する能力を開発出来ていない。一方で、日々「私はここで何をしているのだろう?」「私は本当は何をしようとしているのだろう?」「私がこれをしたり、言ったりしている本当の理由は何なのだろう?」といったことを問いながら生活していたりもする。自己認識を活用するためには、行動しているときの自分をとらえ、没頭している自分と、鋭くかつ優しく自身を観察する自分を認識する能力を継続的に磨く必要がある。そのことにより、自分の強みをより尊重することができるようになり、自分の最も大切な価値と一致しない習慣的な方法では行動しないことを選択するようになる。

この「内なる観察者」を認識できるようになっていくと、内側の深い平和と充足の源に到達できるようになっていく。自身の価値は自分の行動からは離れたところにあり、外部の状況に影響されないところで自身が安心できると認識するようになる。しかし、あなたの「内なる観察者」を強化することを、自分の意志で行うことはできない。それは定期的なマインドフルネスの実践を通して培われるのだ。

効果的なマインドフルネスの実践を行うことで、あなたの本質的な自己開発が繰り返される。あなたは、自身の思考や感情に「根付いた」生活をスタートすることになる。思考や感情を認識することで、「自分が何者なのか」を知ることができる。そして、あなたは思考や感情に敏感に反応するようになる。「内なる観察者」を強化すると、あなたは自分の考えや感情を「そうなってしまう」という状態ではなく、「それを選んでいる」という意識になる。このことによって、状況にどのように対応するかをより自由に選択できるようになる。さらに実践を積むことによって、あなたは自分の人格構造全体を観察し、その長所と課題に気づき、自分や周囲の人がより幸せで成功するための多くの選択肢を持つようになる。

「反応」ではなく「対応」する

しかし、これでもまだ、自己認識(マインドフルネス)が真の成長の要となるには十分ではない。多くの人材開発の担当者は、私たちは反応的ではなく、より対応的であることが理想だと話す。これは、パターン化されたものに左右されるのではなく、より高度で意識的な選択をすることを意味している。つまり、相手に何をすべきかを伝えなければならないと感じていても、もっと相手に耳を傾けることを選んだり、誰かにメールを送る非常に正当な理由と衝動を感じていても「送信」ボタンを押さなかったり、批判や厳しい判断、非難の言葉を今にも発する準備ができていても口をつぐむといったことにこのことはつながるかもしれない。

これが、時間をかけてゆっくりと培われる必要がある内省する能力、またはマインドフルネスのもう1つの側面である。こちらも意図して得られるものではない。人が反応的な行動をとるのは、ほとんど全ての場合、不快な感情が起こったときに、今の自分の状態を意識したり落ち着いた状態でいられないためである。こういった感情を観察したり、不快な感情の中でもリラックスできるような能力が培われないと、私たちは内側の緊張から自分自身を解放しようとして、必要なことは何でもしたり、言ったりしてしまう。私たちは不快という危機に直面すると、内面の混乱を自分で消化することができないために、さまざまな反応を起こしてしまう。その結果、依存性のある行動(食べ物、アルコール、仕事など)をとったり、自分自身や他人に害を及ぼしてしまったり、関係を壊してしまったり、周囲の人が私たちの周りで安全や信頼を感じられなくなったりする。

私たちは、非常に不快な感情をまず自覚し、次にそれを行動に移すことなく、その強い感情の中で落ち着いていられるようになることで、少しずつ成長していく。これは簡単なことではない。

マインドフルネスは継続的に取り組む

あなたが、これら2種類の内省する能力(マインドフルネス)、つまり、あなたの「内なる観察者」を強化することと、不快な感情に対して今の自分の状態を意識し、落ち着いていられる能力を培うことができると、自分や他人のベストな状態を引き出す新しい能力を徐々に身につけられるようになる。あなたは、より高い価値や理念と自分を一致させることができ、あなたの周囲に安全や信頼を生み、より効果的に他者と協力し合い、周囲と豊かな繋がりを築き、自分自身の価値を認めることができるようになる。あなたは優れたリーダー、そして優れた人物になることができるのである。

しかし、これらのことは、自己認識トレーニングに初回参加することだけで達成できるわけではない。研修や能力開発部門には、参加者個人が内省する能力を養うことを支援する権限、リソース、スキルがほとんどなく、また、上級管理職に向けてそうした能力開発を組織文化の中に組み込む許可も与えられていないのが現状だ。

このような理由から、私とパートナーは、この活動が定着し、実際に変化をもたらすのに十分な牽引力を得るまで、また、上級管理職の側がこの活動を支援することに明確に合意しない限り、トレーニングを実施しないことにしている。

内省する能力(マインドフルネス)の継続的な養成を明確に組み込んでいない自己認識プログラムには注意が必要だ。


【筆者について】
ジョエル・M.・ロッタイザー(Dr. Joel M. Rothaizer, MCC)博士はClear Impact Consulting GroupのCEOで、エグゼクティブコーチと組織コンサルタントとして30年以上のキャリアをもつ。エグゼクティブ・コーチング、リーダーシップ開発、組織・チームの効率性を高める取り組みを専門分野としている。Forbes Coach Councilのオフィシャルメンバー。国際コーチング連盟 マスター認定コーチ。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Self-Awareness Without Cultivated Mindfulness Is Useless(2022年9月20日にCoach U Blogに掲載された記事の翻訳。
オリジナルは、2019年9月11日にForbes Coaches Councilに掲載。許可を得て翻訳・掲載しています。)


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