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何に意識を向けているかを意識する

【原文】Pay attention to your attention
何に意識を向けているかを意識する
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マイアミ大学の神経科学者アミシ・ジャー(Amishi Jha)氏は、リーダーがメタ認知を磨くべき理由と方法について解説している。

昔々、セグウェイは交通業界に革命を起こすといわれていた。スティーブ・ジョブズは、ディーン・ケーメン(Dean Kamen)氏の発明にはパーソナルコンピューターのような変革の可能性があると語り、ベンチャーキャピタリストのジョン・ドア(John Doerr)氏は、ケーメン氏のスタートアップが10億ドルの売り上げを史上最速で達成すると予想した。2001年当時にしては、巨額の数字だ。まだ10代の若者以外はユニコーンの存在を信じていなかった時代である。しかし、この二輪型のパーソナル移動機が変えたのは、観光ツアーとショッピングモールのパトロールの形態だけであった。

木を見て森を見ず

セグウェイがその期待に応えられなかった理由には色々あるが、その多くはディーン・ケーメン氏の誤った着眼点に原因がある。彼は、「木を見て森を見ず」だったのだ。彼は、セグウェイの直感的な自動バランスと操作を可能にする革新的な技術、という狭い側面だけに焦点を当てていたため、彼と初期の支援者たちは、その市場が極めて限定的であることに気づかなかった。歩道でスケートボードに乗るのは危険すぎるとしている市や町が多い国のどこで、何十万人ものセグウェイ・ライダーが走り回ることが許されるのだろうか?ましてや、車道でセグウェイを走らせるために、誰が5,000ドルも支払うというのか?

ある目標に過度に集中すると、認知心理学者が「目標無視」と呼ぶ事態に陥ることがある。目標志向のMBAや起業家にとっては直感に反することかもしれないが、たとえば、マイクロマネジメントに見られるような行動を見てみよう。リーダーが従業員をマイクロマネジメントする場合、タスクの遂行に集中するあまり、会社の大きな目標から目がそれてしまうことがよくある。木にこだわって森を見ることを無視する結果、従業員を翻弄してしまうのだ。

どこに、どのように注意を向けているのか

人がどこに注意を向けるかは、脳の注意喚起システムの機能次第だ。このシステムには3つのサブシステムがあると述べるのは、マイアミ大学のマインドフルネス研究とその実践としての試みの中で、瞑想的神経科学のディレクターを務めるアミシ・ジャー(Amishi Jha)氏である。その3つとは、選択的に注意の方向づけをし、集中するための懐中電灯(方向付けシステム)、全体像を把握するための投光器(警告システム)、そして、自分の行動を目的に沿わせるための曲芸師(実行機能)と説明している。「目標無視とは、懐中電灯の明かりはしっかり照らしているのに、投光器がうまく作動していない状態である」と、彼女は最近のZoomのインタビューで語っている。

懐中電灯を使うのも、投光器を使うのも、本来は悪いことではなく、どちらの方法もリーダーには必要なのだ。ジャー氏は自身の新著『Peak Mind: Find your Focus, Own Your Attention, Invest 12 Minutes a Day(ピーク・マインド:焦点を見つける、注意を意識する、1日12分間を活用する)』の中で、「私たちは常に、何かに注意を向けている。しかし、私たちの注意は狭すぎたり広すぎたり、安定しすぎていたり、不安定すぎていたりするのだ。また、どうにかうまく注意を向けているが、その場には適していなかったりする」と記述している。

この認知ミスは、懐中電灯や投光器を無意識に使うことによって起こる。オーストラリアの消防ヘリコプター隊員が、このような事例を話してくれた。彼は山火事のある1か所を集中的に消火作業していたところ、自分の背後で空気が吸い込まれる音がするまで、その周辺の火事が迫っていることに気づかなかったというのだ。彼はあやうく火に呑み込まれそうになったのだ。「そのように何かを制圧することに、感情的にとても魅せられることがあり、その状態に引き込まれるのである」「そして、そこから我に返るのは難しいことなのだ」とジャー氏は言っている。

集中している瞬間を認識する

集中力が高まり、完全に仕事に没頭している感覚がある時は、一歩下がって自分自身の注意力が適切に向けられているかどうかを測る良い目安となる。ジャー氏の研究によると、さらに積極的にメタ認知を磨くことができるという。

メタ認知とは、今この瞬間に集中しているということと、その集中の限界を同時に認識することだ。ポール・ハーシーやケン・ブランチャードが提唱するシチュエーショナル・リーダーシップ理論(situational leadership theory)では、「メタ認知は、外的要因に焦点を当てることを補完するものだ」と位置づけている。消防士は、その瞬間に自分の注意がどこに向いているかを意識することで、自分が見逃しているかもしれないものを認識できるようになる。

では、どうすれば、自分の意識に気づくことができるのか。「私たちは、もともとこの能力を持っている」とジャー氏は述べている。「たとえば、高速道路の出口を間違えて、『ああ、私の意識はまったく別のところにあったんだ』と気づくようなことだ。私たちが実行したいことは、自分の頭の中を確認するような意識をもっと規則的に持つことなのだ。」

注意がどこに向いているかを定期的に確認することは、私達の多くに常に組み込まれている状態ではない。「これには訓練が必要である」とジャー氏は言う。「特にリーダーは、集中力を高めたいし、わざわざ失敗をしたくないものだ。その代わりに、彼らは一瞬一瞬、自分のメンタルを観察する訓練をするメンタルプラクティスに取り組んでいる。」

思考の流れの観察者になる

ジャー氏は、「思考の川」と呼ばれているエクササイズでリーダーを指導している。「川岸にある大きな岩の上に座り、自分の意識の中身が水そのものであるかのように流れていくのを眺めるのだ」と彼女は言う。「一つひとつの木の葉や魚など、川を流れていくものを目で追うのではなく、それが通り過ぎていくのを眺めるのだ。自分の意識の流れを眺めることで、メタ認知を磨くのである」

多くのマインドフルネス・エクササイズと同様に、「思考の川」も、優秀なリーダーが携えている決断力、行動力の志向性とは相反するように感じられる。しかし、ジャー氏はそれこそが重要だと言う。「このエクササイズによって、私たちは自分の経験に対してまったく異なるスタンスをとることができるようになる。私たちが中立な観察者として何かを経験することは、非常に稀である。私たちは通常、それら経験について物語や意見を持っていて、すぐに行動に移そうとする。しかし、このような姿勢では、リーダーとして不十分である。もし、間違ったストーリーを作り上げたり、間違った方向に素早く行動したりしたら、それはトラブルに繫がることを意味するだろう」

「思考の川」を試すことは私も経験したが、心を無にしてそれを眺めるのは言うほど簡単ではない。しかし、自分がどこに注意を向けているかを意識すること、そして特定の瞬間に集中している場所が正しい場所であると確認することは、やってみる価値があると思われる。ジャー氏も述べているが、「本当に優れたリーダーは、自分の心がどこにあるのかを常に意識しており、それはつまり、自分がいつ弱い状態になるのかを知っているということなのだ」。


【筆者について】
セオドア・キンニ(Theodore Kinni)氏は、strategy+businessに寄稿するライター。ビジネスライター・編集者として、業界や地域を問わず、一流のコンサルタント、企業、非営利団体と協働している。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Pay attention to your attention
(2022年2月10日のstrategy+business magazineに掲載された記事の翻訳。 strategy+business magazineの許可を得て翻訳・掲載しています。)
© 2022 PwC. All rights reserved. PwC refers to the PwC network and/or one or more of its member firms, each of which is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details. www.strategy-business.com. Translation from the original English text as published by strategy+business magazine arranged by COACH A Co., Ltd.


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※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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