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20世紀の3人の思想家に企業文化を学ぶべき理由

【原文】Leaders should revisit the works of three corporate culture pioneers
20世紀の3人の思想家に企業文化を学ぶべき理由
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文化と戦略を一致させ、従業員に活力を与える方法について、20世紀の3人の思想家が洞察する。

私たちは、企業文化が注目される前からその世界にコンサルタントとして長く携わってきた。この10年間で、企業文化に関する話題はリーダーたちの間で定期的に取り上げられるようになり、このテーマに関する著作も爆発的に増えた。しかし、新しい、時には非常に洞察に満ちた声があるにもかかわらず、私たちは、20世紀の3人の思想家(レオン・フェスティンガーフレデリック・ハーズバーグ、そしてダニエル・ゴールマン)の英知をいまだ繰り返し参考にしている。

私たちは、ただ 「古典」にこだわっているのではない。むしろ、古典の良さを改めて紹介したいと思う。思想家である彼らは、その時代の試練に立ち向かいながら、明確で実用的な洞察を示している。様々な考え方を組み合わせることで、これらの思想は企業文化の調和と進化を成功させるための基礎作りを後押ししてきた。ひとことでいえば、これらの「古典」は、何十年も前から有効であり、現在もなお有効であるということだ。

では、彼らは、どのような人物なのか、そして、何年も前に彼らが提唱したことは、現代もどれだけ有効なのだろうか?

レオン・フェスティンガー(Leon Festinger)

フェスティンガー(1919-1989)は、アメリカの心理学者で、マサチューセッツ工科大学とミシガン大学の教授であり、1950年代に認知的不協和理論を構築したことで知られている。

理論:フェスティンガーの理論は、信念と行動の不一致が心理的緊張(認知的不協和)を引き起こすと提唱している。つまり、あることを信じていても、その信念に沿った行動をしていなければ、信念か行動のどちらか(あるいは両方)を修正するまで不安を感じる。これに対して、自分の信念に従って行動することで、共鳴、つまり自分のしていることに肯定的な感情を得ることができるというのだ。

なぜ彼の考え方が今でも支持されているのか:フェスティンガーの理論を理解し、言葉と行動を一致させることができると、リーダーは従業員を動機づけるためのいわば潤滑油を得たようなものだといえる。たとえば、今日の組織では、共通のパーパスやミッションを起点として従業員を鼓舞するという考え方が浸透している。しかし、従業員にそのミッションに関連した変革へのエネルギーを持続させるためには、リーダーは従業員がそのミッションを実行できるようにすることが必要だ。もしリーダーの言葉と行動が一致しない場合、企業メッセージの影響力は弱まり、従業員には不満が募ることになる。PwCのGlobal Culture Survey 2021(グローバル・カルチャー・サーベイ 2021)によると、企業文化について企業側が示すことと、従業員が経験することの間に乖離があると、悪影響を及ぼすと指摘している。たとえば、ある金融機関では顧客中心主義をモットーとしているにもかかわらず、コールセンターの従業員に優良顧客に対する遅延損害金を免除する判断権限を与えない場合、従業員と顧客に不満とフラストレーションを抱かせることになる。

企業文化とビジネス目標を一致させるために必要な変化の取り組みは、少しずつしか進捗しない。しかし、既存の考え方と共鳴しながらも、組織を新しい方向へと導く施策を見つけることで、強力な推進力が生まれる。私たちは、相互作用の中で仕事をしていることが多い。行動から始める、そしてまたマインドセットに戻るといった具合に。

フレデリック・ハーズバーグ(Frederick Herzberg)

ハーズバーグ(1923-2000)もアメリカの心理学者で、ケース・ウェスタン・リザーブ大学やユタ大学で教鞭をとっていた。経営思想に最も影響を与えた人物の一人で、「職務充実(ジョブ・エンリッチメント)」の概念、また、1964年に開発した「動機づけ・衛生理論」が有名である。

理論:最も重要な動機づけは、仕事そのものである。ハーズバーグは、モチベーション(業績や達成意欲)は、外的要因(インセンティブや罰など)ではなく、実際の仕事そのものをより満足のいくものにすることにあると実証した。

なぜ彼の考え方が今でも支持されているのか:現在多くの雇用主が「大量離職」に対処しようと、特典、給与、パーパスをどのように組み合わせたらよいかと知恵を絞っている。一方で、ハーズバーグのシンプルなメッセージを見過ごしがちだ。それは、「条件ではなく、仕事そのもの、そして仕事に対する社員の感情的な結びつきが、社員を動かす」というものだ。

ハーズバーグによれば、従業員のやる気を引き出す鍵は、成長と「遊び」、または試行錯誤ができるような十分な責任、管理権限、情報を与え、仕事を充実させることだという。今日のリーダーやマネージャーは、この点において自身に問いかける必要があるだろう。社員は自分の仕事を始まりからその結果まで見通して管理することができているか?社員は新しいことに挑戦し、それを乗り越えることができるか?社員が失敗できる余地はあるか?もっと実験的な試みをした方がいいことを伝えるフィードバックの機会はあるか?また、一緒に働く仲間も、一人ひとりの仕事に対する気持ちに大きな影響を与える。仕事に対する人それぞれの感じ方は、まわりにも影響するからである。

もし、リーダーが考え方と行動を一致させ(フェスティンガー)、従業員一人ひとりの仕事を充実させる(ハーズバーグ)ことができれば、組織に膨大なポジティブなエネルギーを生み出すことができるかもしれない。しかし、大企業であればあるほど、このことを実現させるにはどうしたらよいのかという疑問が出てくるだろう。そこで登場するのが、ダニエル・ゴールマンだ。

ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)

1946年生まれのゴールマンは、ニューヨークタイムズ紙の科学ジャーナリストとして長年活躍し、数多くの著作がある。最も有名なのは、「こころの知能指数(エモーショナル・インテリジェンス)」に関する画期的な研究で、その研究は1995年の同じタイトルの著書とその後の多くの著作で詳述されている。

理論:ゴールマンは、当時の通説とは異なり、従来の知能(IQ)では個人の成功や影響力を完全に説明できないことを明らかにした。むしろ、成功の重要な決定要因は、ゴールマンがこころの知能指数、またはEQと呼ぶものにある。彼はEQの能力を構成する要素として、自己認識、自己抑制、動機づけ、共感性、ソーシャル・スキルの5つのカテゴリーを定義づけした。そして、EQに優れた人材を見分けるためのツールを提供した。また、組織が採用や昇進の際にEQを優先させないばかりか、知らず知らずのうちにEQを無視した選別をしていることが多いと指摘した。ゴールマンは、データに基づく分析や合理的な影響力の価値を否定したわけではない。むしろ、彼はマネジメントや成功においていまだに見落とされている感情的な側面に光を当てたのである。

なぜ彼の考え方が今でも支持されているのか:多くのリーダーは、組織の成功に最も重要な人物を見落としている。現在多くの組織は、特に採用においてEQを考慮しているはずなのだが、うっかりとEQを無視するようなフィルターをかけてしまうのだ。自己認識(素直さ)は弱さを強調するものと見なされ、自己抑制(制限)は情熱の欠如と見なされ、共感性(他者の気持ちへの気づき)は難しい決断を下せないものと見なされがちだ。昇進は、現在の職務でのパフォーマンスに基づいて行われることが多く、管理職になるために必要な能力に基づいていないことが多い。

しかし、PwCのカッツェンバック・センターによると、「ありのままで気取らないリーダー(Authentic Informal Leader、以下、AIL)」と呼ぶ感情的に優れた人物こそが、フェスティンガーとハーズバーグの概念を大きな規模で実行に移す鍵となることを示した。AILは、組織全体、あらゆるレベル、あらゆる部門に存在するはずだ。簡単なアンケート調査やクラウドソーシングによる紹介や、インタビューなどで見つけることができる。eメールやインスタントメッセージの統計、会議の記録などを使って、我々は複雑な社内の関係性を示す相関図を作成し、クライアントに提供したりもしている。最もベーシックな方法としては、従業員に「何か問題があったとき、組織内の誰に相談しますか」と質問してみるだけでよい。ある種のパターンが浮かび上がってくるはずだ。

AILを見つけることは、私たちの仕事の一番の重要ポイントとなっている。彼らは、フェスティンガーやハーズバーグの理論を生まれつき理解し、それを応用するコツを知っている。AILは、組織の目的や信念に合致した行動を見つけ出し、部下や同僚が充実した役割を果たせる支援する。AILの洞察力と存在感によって、組織内の共鳴と持続的なモチベーションを引き出し、最終的に組織変革を促すことができるのだ。

総論
フェスティンガー、ハーズバーグ、ゴールマンの研究がどのように相互作用するかを理解することが、高業績をあげる企業文化の実現には重要であり、組織の人々はようやくそれが組織の成功のためにも非常に重要であると認識するようになった。そのためには、まずフェスティンガーとハーズバーグが詳述している効力を理解し、次に、それらの考えを実行するためにゴールマンが述べているようなタイプの支援が必要であることを理解する必要がある。

この3人の著者の提言を合わせてみると、効果的な文化的介入がなぜ有効なのかを教えてくれる。同時に、彼らは文化的な変革に着手するための、達成可能で実績のある戦略をも示している。このことを理解することで、劇的な変化を生み出すことができるのだ。パイロット的な試みから始めるとよい。チームや部署を一つ選び、試してみて欲しい。


【筆者について】
ジョン・カッツェンバック(Jon Katzenbach)氏は、PwCの戦略コンサルティンググループであるStrategy&のエグゼクティブ・アドバイザー。ニューヨークを拠点とするPwC US(米国)のマネージング・ディレクターであり、組織文化とリーダーシップに関するStrategy&のグローバル研究所であるカッツェンバック・センターの創設者でもある。組織文化、リーダーシップ、チーミングに関する彼の著書には『The Wisdom of Teams(チームの英知:高業績な組織づくり)』ハーバード・ビジネス・スクール出版、1993年、ダグラス・K・スミスと共著や、『The Critical Few:Energize Your Company's Culture by Choosing What Really Matters (最高の企業文化を育む「少数」の法則)』ジェイムズ・トーマス、グレッチェン・アンダーソン、ベレット・コーラーと共著、2019年がある。

キャロリン・ブラック(Carolyn Black)氏は、ニューヨークを拠点とする独立系コンサルタント、エグゼクティブコーチである。彼女は2016年以来、ジョン・カッツェンバック氏およびカッツェンバック・センターと連携を密にしている。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Leaders should revisit the works of three corporate culture pioneers
(2022年2月14日のstrategy+business magazineに掲載された記事の翻訳。 strategy+business magazineの許可を得て翻訳・掲載しています。)
© 2022 PwC. All rights reserved. PwC refers to the PwC network and/or one or more of its member firms, each of which is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details. www.strategy-business.com. Translation from the original English text as published by strategy+business magazine arranged by COACH A Co., Ltd.


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※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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