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あなたのチームのもう一人のメンバー、リーダーシップ・カルチャー
2023年04月25日
「リーダーシップ・カルチャー」という言葉を聞いて、あなたはどんなイメージを思い浮かべるだろうか。辞書によると、カルチャー=文化とは「特定の人、社会、グループの考え方、および習慣や社会的行動」と記されている。それは、私たちの生活のあらゆる面に浸透しており、ビジネスの世界でも極めて重要なものだ。
私は最近、組織や職場における文化とは何か、特にリーダーシップ・カルチャーとは何かについて、思考をめぐらせていた。その結果、リーダーシップとは組織文化の根源にあるものだと認識した。リーダーシップ・カルチャーは、組織のあらゆる側面に影響を及ぼす。
リーダーシップ・カルチャーの核となるのは、私たちが呼ぶところの「人間中心」のリーダーシップだ。オーセンティシティ(自分らしさ)、共感力を兼ね備えたリーダーシップ。それは企業文化を根底から作り上げ、支えている。
企業文化の複雑さ
文化は、多くの人にとって抽象的な概念である。個人の文化の起源は、先祖伝来のものから育った環境まで、万華鏡のような要素によって形作られている。企業文化もまた、それに劣らず複雑だ。
企業文化が複雑なのは、企業を構成する一人ひとりがそれぞれの文化的背景を持ち、それぞれが何らかの形で企業の成り立ちに影響を及ぼしているからだ。組織のリーダーシップがなければ、企業文化はまるで白紙の状態、まるで混ぜ合わされていない食材の入った器のようなものだ。方向性が定まらないまま常に変化する文化へと退化していってしまう。
したがって、人間中心のリーダーシップが目指すものは、企業文化を形成していくことだ。有能なビジネスリーダーは、一人ひとりの社員が共感できるような文化的基盤をつくり上げることができる。しかし、それはどのように始めることができるだろうか。
異なる文化が衝突する時
企業文化は、通常、以下の要素によって定義される。
価値観
目標
行動
態度
実践
これらの要素の一つひとつが組み合わさって、組織を特徴づけていく。企業文化を表現する言葉として、「楽しさ」「協力体制」「透明性」「育成」「支援」など、一般的によく使われる言葉を耳にするだろう。
企業は健全な職場文化を構築したいと切望しているかもしれないが、社内の多くのリーダーは理想の文化を実践し、維持し、守っていくことについて苦労している。たとえば、従業員の行動に関して。通常、従業員は自身が期待されている行動を理解しているかどうか確認するためのサインを求められる。しかし、彼らが望ましくない行動をとっていても、上司から彼らへの説明責任やプロセス、リーダーシップが十分でなかったことを理由に、見過ごされてしまうのである。
文化的衝突がよく起きるもう一つのケースは、コラボレーション(協働)するときだ。コラボレーションの文化は、計画的で一貫した行動を必要とする。月に一度や二度人を集めても、実現させることは難しい。コラボレーションによる成長は、定期的かつ継続的な人と人との繋がりによって育まれるものだ。
コラボレーションが最も複雑になるのは、多様な考え方が持ち込まれたときである。そのようなときは、創造性や革新性が育まれることもあれば、個人間の対立を招くこともある。しかし、ほとんどの場合、その方向性は組織のリーダーシップ・カルチャーに左右される。
ありのままの自分で組織を率いる
リーダーとして自分らしさを出しつつも、企業文化に合わせて組織を率いることは、組織が成功するための重要な要素であると広く考えられている。しかし、リーダー個人にとってはどうなのか。組織のリーダーシップ・カルチャーを意識しつつ、ありのままの自分で組織を率いるとは、リーダーのありのままの姿を見せつつも、その姿が関わる人々にとってどのように見え、またとらえられているかに気づいているということである。
しかし、このスタイルは「言うは易く行うは難し」である。
リーダーは、本来の自分らしさを発揮しながら、誰かを動揺させたり、不快な思いをさせたりせず、また、厳しすぎたり、優しすぎたりすることもないように振る舞うことはとても難しいと感じているのではないか。社員とすぐに打ち解けられるリーダーや、人を惹きつける魅力的な性格の持ち主であっても、異なる文化の衝突に、社員たちは非常に苦慮している。
たとえば、大きな声で話すのが当たり前の文化もあれば、それが無礼とみなされる文化もある。また、直接的なコミュニケーションをとる女性は自信にあふれ、自己主張がはっきりしている積極的なタイプとみなされる文化もあれば、同じタイプの女性でも、攻撃的で思いやりに欠けるタイプとみなされる文化もある。文化の違いは、リーダーシップやお互いに対する従業員の認識を形づくっていくのである。
とてもうまくいっている企業文化とは、組織の文化、大切にしている価値観、目標の枠組みの中で、イノベーションやコラボレーションや個々の個性までをも許容できる環境を構築するようなリーダーシップが組織にあることだ。
自己認識を通して、組織のリーダーシップ・カルチャーを開発する
では、多国籍チームをつくった場合、どのようにすれば、すべての人が受け入れ、理解できるような明確な文化をチーム内に維持していくことができるだろうか。古典的なリーダーシップスタイルも存在している一方で、現代のビジネスリーダーは、リーダーシップへのアプローチにおいて、より適応力が高く、一貫性があり、独自の考えをもっている必要がある。リーダーとして自分の文化的背景を認識することが、その目標にむけての第一歩となる。
たとえば、私は自分自身が多国籍文化を携えていると思っている。私はイランの血を引き(いまだにペルシャ人と呼ぶ人もいる)、英国で生まれ育った。世界中を何度も旅し、多種多様な友人がいて、グローバルな組織の多様性豊かなチーム(文化、性別、考え方が多様)で働いた経験がある。私には、育った環境、人生経験、学習し継承した習慣や偏見を通して、私独自の価値観、習慣、行動様式がある。そして、そのすべてが、私の人生への取り組み方に影響を及ぼしている。誰もが、それぞれの立場で、同じように文化の影響を経験しているだろう。
私の強みは、多様な文化の経験があることである。私の意思決定、人との関わり方、行動、コミュニケーションの取り方は、すべて多文化的な背景によって形成されてきた。このような背景があることは、私が様々な機会や課題に直面したときに、どのように対処するかを予測する上で重要な鍵となる。
文化というフィルターを通して見る真のリーダーシップとは
文化というフィルターを通して真のリーダーシップをとらえることは、リーダー(あるいは個人)にとって重要な成功要因であると私は考える。
チーム内に文化を創造し、今日の労働環境における適切なバランスを見出すことは、決して容易な仕事ではない。ひとたび文化が創造されると、その文化を維持することが新たな目標になる。自分がどのような文化的背景をもって活動しているかを認識することは、リーダーシップの成功の鍵である。そして、他者、つまりチームメンバーの文化的背景を理解することは、組織のリーダーシップ・カルチャーを成功させる究極の方法なのだ。
私は文化を、チームにおけるもう一人のプレーヤー(あるいは、最も重要なメンバーかもしれない)と考えたい。なぜなら、文化もまたそのチームにとって独自の要素であり、それを育みよくしていくことが必要であり、そこには強みと弱みがあり、環境の変化に適応することが必要で、そして最終的にはチームがさらに良くなるために極めて重要な要素であるからだ。
経営コンサルタント、教育者、作家であるピーター・ドラッカーは、「企業文化は戦略に勝る"Culture eats strategy for breakfast!"」と語っている。では、あなたがチームを率いるとき、どの文化を携えて率いるだろうか? あなたのチームメンバーは、どのような文化的環境の中で活動しているだろうか?
このブログは、Churchill Leadership Group(チャーチル・リーダーシップ・グループ)によって最初に公開された。
【筆者について】
マージャン・マハウチアン
プロフェッショナル・コーチ
マージャンはストレングスファインダー™コーチ、4ステージ™心理的安全性コーチとして認定されている。リーダーシップ、ビジネス開発、組織変革の分野で15年以上の実務経験を持つマージャンは、企業が成長する際にはさまざまなニーズがあり、そのビジネス変革を成功させるためには人材が重要であるという点に注目している。マージャンは人々の成長をサポートすることに力を注いでおり、企業との取り組みだけではなく、それぞれの文化が与える影響を理解したいと願う個人との取り組みも行っている。そうすることで、彼らが自分達の信念に沿って目標を達成し、自らの目的や真のアイデンティティに沿った人生を送るためには、なにが必要か、また何が阻害しているのかを認識することに繋げている。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】 Organizational Leadership Culture Core Member of Your Team(2022年10月17日に Coach U Insights に掲載された記事の翻訳。許可を得て翻訳・掲載しています。)
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