Global Coaching Watch

Global Coaching Watch では、海外コーチのブログ記事の翻訳を中心に、世界のコーチング業界のトレンドやトピックスをお届けします。


コーチが注意を向けるべき3つのリスニング・ポイント

【原文】The Listening Triangle - Knowing where to focus our attention most effectively
コーチが注意を向けるべき3つのリスニング・ポイント
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

数ヶ月前、私は「3|3|3|ー コーチングの3つのトライアングル(三角形)(3|3|3|--The Three of Threes of Coaching)」という記事で、コーチが意識すべき3つの重要なトライアングルを紹介した。今回は、このリストに、さらにもう1つのトライアングル、「リスニング・トライアングル」を追加したいと思う。

コーチングにおいては、What「事柄」と Who「その人全体」を意識することが重要とされている。「事柄」とは、クライアントがコーチングの会話に持ち込むストーリーや状況のことを指し、これを扱うことは通常、クライアントの表層的な部分にリーチするにとどまる。「その人全体」は、その奥にあるものであり、クライアントのアイデンティティ、つまり、価値観や動機、内的エネルギーの源泉を指す。

コーチングは、人が変容していくプロセスとして設計されているため、最高のコーチングは、クライアントが「どのような人なのか」にアクセスできるときに実現する。これは、私たちコーチが「その人全体」にアクセスすることで、クライアントは自分自身に活力を与え、真に自分自身であるための誠実な選択をする機会を得るからだ。また、「その人全体」を扱うことで、クライアントが持続可能で永続的な変化をつくり出していく可能性を徐々に開いていけるように、私たちはサポートする。

しかし私たちは皆、問題解決屋になってしまいがちだ。問題を見ると、すぐにそれを解決しようとしたり、答えを見つけようとしたりする傾向がある。長い間、私たちの文化では答えを持っていることをよしとしてきた。そして、私たちはものや情報を集めたり、物事をよく知っているふりをすることにも非常に熟達してきた。

このような状況では、私たちの自尊心も非常に活発になる。答えを見つけたり、解決策を見出したりすると、達成感や自己肯定感を感じて自分を褒めたくなる。

私たちが忘れがちなのは、コーチとしてどれだけ経験があろうが、いくつ博士号を持っていようが、問題解決に飛び込んだ瞬間に、実はクライアントの力を奪ってしまうことだ。答えを与えることで、「私は答えを知っているが、あなたは知らない。私はあなたより優れている。私はあなたよりリソースを持っているが、あなたは持っていない。あなたは劣っている」とクライアントに伝えているようなものだ。私たちが「事柄」に注意を向けるとき、実は、コーチングのプロセスにおいて最も重要な要素である「クライアント」自身を無力化させることになるのだ。

そんなときに役立つのが「リスニング・トライアングル」だ。

コーチングのプロセスはトライアングル(三角形)のようなもので、1つの角にはクライアント(Who)、もう1つの角にはコーチ、そして3つ目の角には事柄(What)がある。コーチである私たちの仕事は、私たちのあり方と聴くための耳をクライアント(Who)に集中させることである。

コーチングの基本原則の一つは、クライアントはすでにリソースを豊富に携えていることと、彼らが自分の状況を処理する能力があることを信頼し信じることだ。私たちコーチの役割は、クライアントが「事柄」に関心を持つことを許容しつつも、その物語や問題の背後にあるものを聞き、クライアント自身に注意を向けることだ。

問題(事柄)にフォーカスすると、クライアント(その人全体)を見失ってしまい、変容が起こりにくくなる。そうなると、扱うことは表面的になり、一過性のものになってしまう場合が多い。なぜなら、それはクライアントの内在的な動機に直接つながっていないからだ。

クライアントは、自分なりの問題の捉え方を持ってコーチングの会話に臨んでくる。彼らは通常、問題に焦点を当てており、自分の思考プロセスの向こう側にまで意識を向けることができない。コーチがクライアント自身に注意を向け、質問、観察、ストーリー、内省を通してクライアントを前進させるとき、コーチングは効力を発揮する。このプロセスは、クライアントに視野を広げる機会を与え、自分の状況をより深く捉え、問題に対して適切な判断を下すためのより確かなリソースを提供することになる。

ある意味、これは「その人全体(Who)」に耳を傾けることで、「事柄(What)」をサポートしているともいえる。「人」を扱うことを通して、「問題」を扱っているともいうことができる。クライアント自身に焦点を当てることで、変容的かつ持続的な方法で彼らの「事柄」に向き合う力を与えているのである。


【筆者について】
エライアス・スカルトリ(Elias Scultori)氏は、国際コーチング連盟(ICF)認定マスターコーチ、プロフェッショナルのメンターコーチであり、リーダーシップとダイバーシティの分野において、様々なアイデンティティを持つグループや個人を支援している。主な活動は、民族、人種、性別、性的指向、宗教、年齢、障害、配偶者の有無、性格タイプ、職業上の地位などを含む、人それぞれの潜在能力と資質を特定し開発し、そしてそれを尊重することに重点を置いている。スカルトリ氏は、コーチ・ユーのインストラクターであり、コーチ・ユー認定のファシリテーターである。
著者のウェブサイト:http://www.eliasscultori.com/forcoaches/the-listening-triangle

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】The Listening Triangle - Knowing where to focus our attention most effectively(2023年1月17日に Coach U Blog に掲載された記事の翻訳。許可を得て翻訳・掲載しています。)


この記事を周りの方へシェアしませんか?

この記事はあなたにとって役に立ちましたか?
ぜひ読んだ感想を教えてください。

投票結果をみる

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

リーダー/リーダーシップ 意識変革/行動変革

コーチング・プログラム説明会 詳細・お申し込みはこちら
メールマガジン

関連記事