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ポジティブ・フィードバックはなぜ難しいのか
2024年02月20日
この記事では、まずポジティブ・フィードバックがなぜ重要なのかを述べる。次に、多くのリーダーにとってネガティブ・フィードバックよりもポジティブ・フィードバックの方が難しいという意外な理由を紹介する。そして最後に、ポジティブ・フィードバックをよりインパクトのあるものにするためのシンプルな方法について紹介する。
なぜポジティブ・フィードバックが重要なのか
なぜポジティブ・フィードバックが重要なのか?ゴットマン研究所は、健全な人間関係を築くために必要な 「効果的な」 関係の比率は、ポジティブな相互作用とネガティブな相互作用の比率が5:1であるという研究結果を発表した。この研究をビジネス上の人間関係に当てはめると、同様の結果が得られた。最も業績の良いチームでの比率は5:1から6:1,、業績が中庸なチームでの比率は2:1くらいであった。一方、業績が低迷しているチームでは1:3であり、これはポジティブな相互作用よりもネガティブな相互作用の方が多いことを意味している。
ポジティブな相互作用は心理的な安全性を高め、信頼を築き、エンゲージメントと生産性の向上に効果的であることは当然のことである。人は安全だと感じれば、相手に反射的な反応ではなく、冷静に対応することで相手に向き合うことが可能となり、より良い判断ができるようになる。職場で恐怖や危険を感じると、一生懸命働くことはできても、より良い状態で働くことはできない。ポジティブなフィードバックを伝えることは、人々の許容範囲(Windows of Torelance)と、最高のパフォーマンスを発揮するために必要な刺激を最適化するために、非常に重要なな要素のひとつなのだ。
多くのリーダーがポジティブ・フィードバックを避ける理由
多くのリーダーは、ポジティブ・フィードバックを与えることがなぜ重要なのかについて認識はしている。しかし、実際にはリーダー達はポジティブ・フィードバックを避けがちだ。なぜか?この傾向は、リーダー自身の直感に反しているように思える。ネガティブなフィードバックよりもポジティブなフィードバックの方が容易ではないかと予想できるのだが、その予想は、必ずしもそのとおりではないようだ。
私のリーダーシップ・トレーニングでは、小グループに分かれてリーダーたちに、ポジティブ・フィードバックを与えるのがなぜ難しいのかを探索してもらう。より感覚的に感じられるように、私は実例を使って説明する。たとえば、誰かに会って握手をしようと腕を伸ばしたが、相手がそれに応えなかったとする。あなたの腕はぎこちなく宙に浮いたままでいるどうしたらいいのかわからない。あなたは傷つき居心地の悪い感じがする。では、別の状況を想像してみよう。誰かに贈り物を用意し、それを差し出したとする。相手はそれを受け取らないか、まるでどうでもいいかのように、それを受け流してしまう。ここでも、あなたは傷つき不快な気分になる。
これはポジティブ・フィードバックとどう関係があるのだろうか?ポジティブ・フィードバックを与えるということは、その人に贈り物をするようなものだ。しかし、もし相手がそれを受け取らなかったり、軽んじたりしたらどうだろう。たとえば、あなたの言葉に対して「ああ、大したことじゃないですよ」とか、「自分の仕事をしているだけです」という言葉が返ってきたとき、彼らはあなたに何を伝えようとしているのだろうか?それは、あなたのポジティブ・フィードバックを真摯に受け止めるほどあなたを尊敬していないとか、彼らにとってあなたはどうでもいい存在だということかもしれない。ポジティブなフィードバックをするとき、あなたは言葉だけでなく、あなたという存在を相手に示しているのだ。
あまり認識されていないものの、このことが、リーダーがポジティブ・フィードバックを避ける大きな理由だと思う。根本的には、相手が自分のフィードバックを快く受け取ってくれるほど自分は相手にとって重要な存在ではないかもしれないと恐れているのだ。そして、それはとても気まずく、居心地が悪く、傷つくことだとリーダー達は感じているのだろう。自分に当てはまるかどうか、チェックしてみよう。
ポジティブ・フィードバックの伝え方
では、あなたがポジティブ・フィードバックの価値について理解し、それを伝えるときに傷つく準備ができているとしよう。では、どうすればそれができるのだろうか?私はよくクライアントに「状況、行動、影響」というシンプルな方法を提案している。
よくある場面を考えてみよう。ある場面でリーダーが、「おい、素晴らしい報告書じゃないか!」と言う。別の場面では、リーダーはこう言う。「あの報告書を読んだとき(状況)、君が自分の言いたいことを論理的かつ明確に説明するために、どれだけ気を配っているかがわかった(行動)。あなたが伝えようとしていることが本当に理解できたので、状況に対する私の見方が変わったよ(インパクト)」
あるいは、次の二通りの伝え方を比べてみよう。一つは、「今日のミーティングでは素晴らしかったね」と伝える。もう一つは、「今日のプレゼンでは(状況)、リラックスして落ち着いていて、準備万端であることが伝わってきた。あなたは下調べをしてきて、難しい質問にもはっきりと自信を持って答えることができた(行動)。その結果、他の人たちはあなたのメッセージを本当に理解し、このプロジェクトの次のステップについて、あなたに従おうという気になったね(インパクト)」というものだ。
状況/行動/影響のアプローチがフィードバックに深みと意味をもたらし、受け手が自分がうまくできたことについて深く振り返ることができる方法を、恐らくお分かりいただけるだろう。
行動へのステップ
この「状況、行動、影響」のアプローチを使って、ポジティブ・フィードバックを伝える機会を見つけよう。やってみて、あなたにはどのように感じられ、相手にどのように受け取られるか見てみよう。そして、それをあなたのリーダーシップ・スタイルに取り入れてみてはどうだろうか。
【筆者について】
ジョエル・M.・ロッタイザー(Dr. Joel M. Rothaizer, MCC)博士はClear Impact Consulting GroupのCEOで、エグゼクティブコーチと組織コンサルタントとして30年以上のキャリアをもつ。エグゼクティブ・コーチング、リーダーシップ開発、組織・チームの効率性を高める取り組みを専門分野としている。Forbes Coach Councilのオフィシャルメンバー。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Optimizing Positive Feedback(2023年12月19日に Coach U Insights に掲載された記事の翻訳。許可を得て翻訳・掲載しています。
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