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あなたの脳が最高の人生を妨げている

【原文】How Your Brain Keeps You From Living Your Best Life
あなたの脳が最高の人生を妨げている
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どんなに頭がよく、どれほどトレーニングや実践を積んでいても、あなたの脳は正しい方向を示したり、論理的な判断を助けたり、困惑や不安の本当の原因を理解させてくれないだろう。もしあなたが感情的なこだわりを持っていたら。

脳はあなたの安全を守っている

たとえこれまで経験したことがないジレンマに直面していても、脳はあなたの過去の経験をもとに現在の選択肢を決める。多くの場合、あなたは自分ではなく自分の脳が決めているとは思いもせず、世話焼きの脳に頼って毎日を過ごしている。同じルーチンを繰り返していると選択肢が決まってしまうことや、いつも同じような人づきあいをしていることに気づかない。自分がこれまでに作り上げた仕組みやルールに従って生きていれば、最大限に安全で確かな感じがするので、気楽にできることやそれに類することだけをしてしまう。

あなたは「分からない」ことを感じないようにしている。脳は、あなたが遭遇するあらゆる場面をすばやく解釈しようとする。自分の人生をコントロールしていると思えれば、気持ちが不安定にならない。そのために脳はあなたに不確かさや困惑を抱かせないように努めている。自分が置かれた状況を理解できないとき、ましてやその全体像の中での自分の立ち位置が分からないとなれば、バランスが崩れたように感じる。自分でコントロールできないと感じるほど、ストレスは増大する。すると、脳はあなたの感情を和らげ、その状況に意味を与えようと一生懸命に働き、あなたがわずかでも安定した足場を見つければすぐさまいつもの状態に戻れるようにするのである。

このように人は過去の経験に基づき、頭の中にあるストーリーと「事実」に従って毎日を生きている。ストーリーは、それぞれの瞬間(現実)に意味を与え、自分自身をどう定義するか(アイデンティティ)も決定する。それはいわば、一日中バックグラウンドで働いているオペレーティングシステムである。

心を広げ、成長するためには、自分がどんなストーリーで生きているのかはっきりと理解する必要がある。そのようにして初めて自分の決断を支配する思考パターンを発見できる。そのとき、自動操縦に選択を委ねず、今自分にとって何が一番良いかを意識的に決めることができるのである。

脳がしていることを客観的に観察するには

自分が従っているストーリーを頭の中から引き出して客観的に見つめる必要があるが、ストーリーに感情的に固執していたら、その作業は自分一人ではできない。その感情は肯定的な(そのストーリーなら心地よく生きられる)ものかもしれないし、抑制的な(そのストーリーを捨てると見えるもの、発見するもの、経験するものを恐れている)ものかもしれない。あなたは自分が何に固執しているのか、何を恐れているのかが分からない。あなたの脳はストーリーを客観的に評価しようとするのを妨げている。立ち現れる現実を直視して不快な思いをするかもしれないからだ。

あなたは自分のストーリーが作る脚本どおりに生きていれば安心なので、それにとらわれる。神経科学者のマイケル・ガザニガによれば、私たちは自動的な思考処理にとらわれているのに自分の意志で主体的に行動しているかのように思い込んでいる。

ガザニガはまた、あなたの考え方を揺るがす外部の者、あなたの言葉やあなたが示す感情、矛盾、そしてあなたを躊躇させる原因らしきものを内省に導く誰かがいれば、自分のストーリーが目の前で観察でき、分析できる映画の脚本のように見えてくるという。

過保護な脳による影響を断ち切るコーチングのアプローチ

訓練を受けたコーチでなくてもコーチングのアプローチを使用して、相手が無意識に行う正当化やリスクを避けようとする言い訳、根拠が揃ってないのに結果を思い描いてしまう態度を良いかたちで断ち切ることができる。相手が状況をどう考えているかを誠実に理解しようと、思いやりをもって接すれば、批判されるのではないかという相手の警戒心は薄れ、あなたの見方や質問に答えても大丈夫と感じるようになる。相手は、あなたが自分のためを思ってくれる人だと感じる。

コーチングのアプローチを使うことは、思いやりを持って相手に関心を示すことであり、これによってオープンな対話に必要な心理的安全性が生まれる。

相手が口にした考えを要約し、そこに現れた感情の変化を伝え、そのうえで相手の言葉を使って質問することによって、その人が本当に言いたいこと、望んでいることを明確にしていく。すると相手は、自分がなぜそのような考え方をしていたのか不思議に思うようになり、自分の決断を支配するストーリーや思考パターンが見えてくる。

ストーリーを明確に理解できると、長年持ち続けている信念、根拠のない思い込み、抑止する恐怖心、価値観の相反などが浮かび上がってくる。教育改革者ジョン・デューイは、「自分の思考について考えさせることは、間違った信念や自動操縦に対する唯一にして最も強力な解毒剤である」と述べている。

自己反省では脳が阻んでしまうことでも、内省を促す問いかけでは心を開き、自分のストーリーを客観的に観察できるようになる。

このような内省を促す問いかけによって、自分自身や世界に対するものの見方、少なくともジレンマのとらえ方が変わる。たいていの人は「おや、こんなことをしていたのか」と言う。そして、進むべき新しい道を見出し、専門家の指図に従うよりももっと強い、行動へのコミットメントを抱く。

デューイはまた、「知的な人ほど自分の思考について考えるときに助けが必要だ」と指摘している。頭のよい人は最高の合理主義者である。自分の推論を心底信じ、自分の意見を揺るぎない事実として守ろうとする。頭のよい人たちが自分の考えを問い直すには、強力な内省と質問が唯一の可能なアプローチとなる。

この「自覚に基づくコーチング」は、認知と行動の両面で長期的な変化をもたらす。状況に対する見方やジレンマとの個人的な結び付きが変われば、行動も変化する。時間をかけて積極的にサポートしていくと、新しい考え方や行動がその人の典型的な行動スタイルになり、それが新しいストーリーとなる。

古いストーリーにとらわれている人は、達成感よりも恐れの中で生きている。それは対立と分離を生む。もっとつながりのある世界を創ろうとするなら、互いにコーチングし合い、各人のオペレーティングシステムを日頃から更新していかなければならない。私たちの対話の中にコーチングのアプローチを広く取り入れれば、世界の意識を高めていくことができる。

コーチングに対する情熱

私の使命は、人々が最高にして最強の自分を知り、それを実感してもらうとともに、自分の周囲の人たちにもそれを感じる手助けができるようにすることである。コーチングは人類を前進させることができると私は信じている。一緒にこの活動を進めていきませんか?


【筆者について】
マーシャ・レイノルズ博士(Dr. Marcia Reynolds)は、コーチングを通して世界各地の企業の幹部育成をサポートし、実績を上げている。クライアントは、多国籍企業、非営利団体、政府機関のエグゼクティブや将来の幹部候補である。また、世界各地で開催されているコーチングやリーダーシップに関するカンファレンスで講演し、43カ国でリーダー向けの講座を担当し、コーチングを行っている。調査機関グローバル・グルス(Global Gurus)で世界5位のコーチに選ばれ、さらに国際コーチング連盟が選出している10名のThe Circle of Distinctionの一人でもある。
医療分野でのコーチング経験も豊富で、ヘルスケア・コーチング・インスティテュートのトレーニングディレクターを務め、総合病院、クリニック、大手製薬会社などで25年にわたり数多くのリーダーにコーチングを提供している。
また、彼女は国際コーチング連盟(ICF)の 歴代5番目のグローバル・チェアマンであり、世界で最初のICFマスター認定コーチ (MCC) になった25人のうちの1人である。組織心理学の博士号、および、教育とコミュニケーション分野における修士号を取得している。
著書に、"Coach The Person, Not the Problem"(邦訳:『変革的コーチング』), "Outsmart Your Brain", "The Discomfort Zone: How Leaders Turn Difficult Conversations into Breakthroughs"などがある。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】How Your Brain Keeps You From Living Your Best Life(レイノルズ博士のウェブサイトCONVISIONINGに掲載された、2022年6月21日の記事を許可を得て翻訳。)


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