プロフェッショナルに聞く

さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。


スポーツ界に「コーチング型マネジメント」を広めたい
~意図的に「発言の場」をつくる理由~
株式会社日立ハイテクノロジーズ
日立ハイテク クーガーズ ヘッドコーチ 藪内夏美氏

第2章 「当事者意識」がチームを強くする

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

第2章 「当事者意識」がチームを強くする
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第1章 熱血型マネジメントから「コーチングマネジメント」への転換
第2章 「当事者意識」がチームを強くする
~意図的に「発言の場」をつくる理由~
第3章 コーチの本当の力量とは?
~ベクトルを自分にむける~

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

「勝つこと」とコーチングの関係

選手の成長やチームの勝利にコーチングが関係する一番の要素は何ですか?

藪内 選手たちの「当事者意識」が高まることだと思います。実業団や日本代表ともなると、その競技に関してトップレベルの選手が揃う場所です。

コーチングを通して「なんのためにバスケットをしているのか?」「バスケットをすることで何が得られるのか?」などを選手に問い続ける。すると、ぶれない軸をつかめることができて、メンタルの強化につながっていると思います。

一人ひとりの「当事者意識」が高まると、チームの人数以上のパフォーマンスが発揮できると思っています。

「勝つ」ことと、選手1人ひとりの「当事者意識」は、実業団や代表レベルでも密接に関わっているということでしょうか。

藪内 とても関係があります。「誰かがやってくれるだろう」や「年功序列」でなく、自分がチームの代表、日本の代表であるということを、言葉だけではなく態度、行動、そして表情にまで表れてきます。

誰もが「発言する場」をつくる

選手の当事者意識を高めるために日立ハイテク クーガーズではどんなことを意識していますか。

藪内 試合中は想定外の問題が起きた時はコート上の5人で解決しなければいけません。そこで試合以外では選手の当事者意識を高めるために、「一人ひとりが発言する場」を増やす工夫をしています。

「自分だったらどうするか?」をコート上の5人だけではなくその他の選手に考えさせ、発信させます。大人数では順番待ちになり最終的にはキャプテンやベテラン選手が話す事が多くなるので、少人数のグループに分けて話し合いをさせるようにしています。時にはトレーナーやマネージャーも巻き込んで練習を完全に選手に任せることもあります。任された選手はチームの課題を話し合い、責任を持って練習をしてくれます。普段の練習より盛り上がりハードワークしていると見ている私はなんとも言えない感情ですが、その内容が我々にとって今後の課題になり、とても楽しいです。

普段から「自分で解決する力」を高め、相手チームが何をしてきてもコート上の5人やチーム全体で解決できるようにし、またそれらを楽しんでもらいたい。

藪内夏美 氏 / 株式会社日立ハイテクノロジーズ
樟蔭東高校から樟蔭東女子短期大学を経て、日本航空に入社。客室乗務員として勤務する傍ら、バスケットボール部に所属。5年連続スティール賞、4年連続アシスト賞を受賞。日本代表にも選ばれ、2004年アテネオリンピック出場。その後2005 - 06シーズン限りで競技から引退。客室乗務員に専念。日本航空を退社後2008年より富士通レッドウェーブのアシスタントコーチに就任。2012年、ヘッドコーチに就任。2014年退任、三菱電機コアラーズのアシスタントコーチとなり2015年退任、同年日立ハイテク クーガーズのヘッドコーチ就任。2018年にはアジア競技大会女子日本代表のヘッドコーチを務め銅メダル獲得。

スタッフのチームワークは選手に伝染する

スタッフや指導者とのやりとりで意識されていることはありますか?

藪内 スタッフや指導者も、育ってきた環境、専門分野、考え方が一人ひとり違います。それぞれの仕事がある中で短時間でも全員が揃った時に少しでもスタッフルームでリラックスできるようにレイアウトを変えたりしました。全員が揃った時には順番で「今日の一言」を話したりします。

ひとつのチームでどれだけ同じ温度(情熱)でいられるか大事なので、「お互いを知る」ための仕掛けは意識的につくっています。

スタッフ同士のコミュニケーションは、チームの強さにどう影響するのでしょうか?

藪内 選手は、意外とスタッフのことを見ていますね。スタッフのチームワークは選手にも伝染します。スタッフが楽しそうだと選手は安心するし、スタッフを信頼してくれます。コーチやトレーナー、マネージャーからも私だけではわからない選手の日常やちょっとした変化を感じ取ってもらうことで練習内容やボリュームを変えることもあります。

スタッフが心身ともにベストでなければ選手もベストパフォーマンスを発揮することができません。

スタッフたちがサプライズで開催してくれた私の誕生会

開幕戦前日のミーティングでは、選手の家族、友人の応援ムービーを流すなど、サプライズ企画を用意することもある

(次章に続く)

聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部

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