プロフェッショナルに聞く

さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。


スポーツ界に「コーチング型マネジメント」を広めたい
~ベクトルを自分にむける~
株式会社日立ハイテクノロジーズ
日立ハイテク クーガーズ ヘッドコーチ 藪内夏美氏

第3章 コーチの本当の力量とは?

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

第3章 コーチの本当の力量とは?
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第1章 熱血型マネジメントから「コーチングマネジメント」への転換
第2章 「当事者意識」がチームを強くする
~意図的に「発言の場」をつくる理由~
第3章 コーチの本当の力量とは?
~ベクトルを自分にむける~

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

コーチングをスポーツ全体に広めたい

藪内さんは、選手からコーチになり、アジア競技大会女子日本代表チームのヘッドコーチも経験されました。指導者として、今後コーチングをどのように活用していきたいですか?藪内さんの変化や成長プロセスの中で、今やどのような段階におられるのでしょうか?

藪内 指導者になって11年目を迎え、8年間の選手生活より長くなりました。2018年にはアジア競技大会のヘッドコーチに選んで頂きました。

スポーツの世界でコーチングを学んでいる人は、全体で半分いるかどうかでしょう。私は早い段階でコーチングに出会えて、ラッキーでした。

コーチングを学んだ人なら、誰でももっと広めていきたいと思うのではないでしょうか。この先はスポーツ界全体に広めていきたいですね。

なぜですか? 

藪内 日本代表は伝統があり素晴らしいチームです。

プロの世界では「結果」が一番大事ですが、指導者、スタッフ、選手とのコミュニケーションなど、経過(プロセス)の部分にコーチングを取り入れることで、より高いレベルでの結果を生み出せるチームになると確信しています。

今回のアジア競技大会女子日本代表チームでも少しずつコーチングの要素を取り入れ、手ごたえを感じることができました。

自分の「武器」を見直す
~「間」を待てるか。「勝利至上主義」に陥るか。~

スポーツのコーチや指導者が、コーチングを学ぶ意味、意義な何なのでしょうか?

藪内 自分の経験、経歴、肩書きなどは、武器になると思いますが、使い方を間違えると大変なことになる、と確実に言えると思います。

スポーツの世界には、「頑張っていることが正義」とか、「汗かいていることが正義」という考えが、まだまだ生き残っています。ですが、選手は無限の可能性を持っています。指導者は選手の可能性を信じてみてほしいという願いを持っています。

藪内さんも、「厳しく育てられたことで上手になった」とおっしゃっていました。「厳しさ」も強くするための選択肢として今でも残していますか?

藪内 私も叱ることはあります。それらも「武器」なので、使い方が正しければ機能することももちろんあります。

「厳しく接する」が悪いわけじゃなくて、他に選択肢がないことが問題、ということですね?

藪内 はい。「自分の経験してきたこと、教わったことが全てだ」というのが一番よくない。自分の武器だと信じ込んでいるものを正しく使えているか?と振り返るのは、本当にしんどいことです。

ですが、指導者にはぜひそれに挑戦して欲しい。色々な方法がある中で、新しいものやスタイルにトライして自分自身や選手がどう変化するのか見て欲しい。私の場合は、昔の武器を使わずに新たな方法で指導者としてやっていきたいというのが一番の気持ちです。

それは、なぜですか?

藪内 選手は、無限の可能性を持っています。それがどのタイミングで開花するかは、正直わからない。明日かもしれないし、引退してからかもしれない。

だけど、信じて待つ。

その「間」を待てないと、どうしても、「勝利至上主義」に陥ってしまいます。

もちろん、プロなので「結果」が求められます。

指導者やスタッフもプロで、いろんな背景があり、勝たないと自分の首も危ない。その状況も踏まえながら、それでももう一回、選手の可能性を信じてみて欲しい。

選手の可能性を信じる
~自分の武器を疑えるか?~

「選手の可能性を信じる」とはどういうことですか?

藪内 10回注意して10回間違えるときも絶対ある。でも、10回目に成功したときに、「よし!」って本当に喜べるか......。

その時に、悪いのはできない選手ではなく、「自分が悪い」あるいは「自分が悪い"かもしれない"」と、少しでも自分にベクトルを向けることができるか?

多分、この作業がすごくしんどいです。選手に「やる気がない!」と言う方が楽ですし、そうする人も多いのではないでしょうか。

ベクトルを自分に向けることで「他にどんな方法があるのか?」と、考えられることができるか。

「選手にできる」とイメージもされているのですか。

藪内 はい。できるようになることをイメージして、絶対にできると信じています。時には難しいスキルを挑戦させ、本気で頑張ればできる......かな?というレベルのところにあえてちょっと先の目標設定をすることで選手が更に頑張ってくれることもあります。

コーチの力量が問われるのは、選手をその気にさせられる目標設定ができるか。だと思います。

「選手を信じる力」とは、コーチや指導者側の観察眼というか、目の力、見る力なのかもしれないですね。最後に、コーチとして選手と関わる中で、藪内さんが一番大事にしていることは何ですか?

藪内 「ヘッドコーチとプレイヤー」「監督と選手」という間柄ではありますが、一対一の、一(いち)人間同士の関係というのを、意識しています。

対等、フェアな状態ということでしょうか。

藪内 私自身は、そういうスタンスを持っている人間でありたいなと思います。

今日はありがとうございました。

プレーオフ最終戦では、日立ハイテク クーガーズのチームスローガン『thank you』をデザインしたTシャツをみんなで着用
応援席の講演会、社員、応援団、サポートしてくれた皆様にありがとうの気持ちを届けた

(了)

聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部

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