プロフェッショナルに聞く

さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。


スポーツ界に「コーチング型マネジメント」を広めたい
株式会社日立ハイテクノロジーズ
日立ハイテク クーガーズ ヘッドコーチ 藪内夏美氏

第1章 熱血型マネジメントから「コーチングマネジメント」への転換

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

第1章 熱血型マネジメントから「コーチングマネジメント」への転換
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監督やコーチなどスポーツ界の指導者でコーチングを学ぶ人が増えている。女子バスケットボールの指導者 藪内夏美氏は、2011年にコーチングを学び始め、生涯学習開発財団認定のコーチ資格を取得している。オリンピック出場などの選手生活を経て指導者に転身し、2015年から日立ハイテク クーガーズのヘッドコーチを務め、2018年にはアジア競技大会女子日本代表チームでヘッドコーチを務めた藪内氏が「日本のスポーツ界にコーチングを広めたい」と語るのはなぜか?「プロの指導者」がコーチングを学ぶ意味や意義についてうかがった。

第1章 熱血型マネジメントから「コーチングマネジメント」への転換
第2章 「当事者意識」がチームを強くする
~意図的に「発言の場」をつくる理由~
第3章 コーチの本当の力量とは?
~ベクトルを自分にむける~

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

藪内さんは、選手としてオリンピック出場されるなど、選手生活を経て指導者に転身し、今年はアジア競技大会女子日本代表チームでヘッドコーチを務められました。まず、コーチング学ぼうと思ったきっかけをお聞かせください。

藪内 プレイヤーの引退後、ご縁あってコーチになりましたが、次第に「コーチって何?」「自分は何を教えることができるのか?」と考えるようになっていきました。プレイヤー時代の経験を伝えることはできても、その先を教えることができず、壁にぶつかったのです。

選手のことも「やる気がある、ない」という二択でしか見ていなかったですね。

「上手になって欲しい」と本気で思っても、教える術が「やるの?やらないの?」「やる気あるの?ないの?」「真面目にやらないのならコートから出ていけ!」というアプローチしか持ち合わせていなかったのです。

今思い出すと、当時の選手たちは辛かったのではないでしょうか、、、。

コーチを始めて3年目ぐらいのとき、インターネットで色々調べる中で、コーチ・エィのコラムに出会いました。そうした情報や文献、本で練習に活かせると思ったことを細々と試すうちに、自然と「コーチングを学びたい」という気持ちにいたりました。

はじめて見た、選手の笑顔

行き詰まりを感じていた時、あれもこれも教えるのでなく、一人の選手とじっくり向き合おうと思ったんですね。

ある時、選手がずっとできなかったスキルが「あっ!できた!」という瞬間を見て「できたね!」と自然に声をかけました。今思うと、コーチングスキルである、相手の事を認めるアクノレッジ(承認)デビューでした。

私の「承認」に、とても嬉しそうにした選手の表情が忘れられません。

「この子、こんな表情をするんだ...」と思いました。

指導者である私が、ほんの少し相手を認める声かけを変えただけで、これまでにない表情をした。コーチングマネジメントを真剣に学ぶきっかけになったできごとのひとつです。

「自分の体験」に頼った指導方法からの脱却

藪内さん自身は、選手時代、どのように教えられたのですか?

藪内 私と同世代のスポーツ選手たちは、多くの方が同じだった思いますが、高校、短大、選手時代まで、監督やコーチ、先生や先輩たちとの会話は「はい」「いいえ」「すみません」の3つで成り立っていたと思います。

それでも成長し、トップレベルまで行けたのはなぜですか?

藪内 バスケットが大好きだったことと、厳しく怖い指導のお陰で「上手にしてもらった」という実感がありました。だからこそ、指導者になったときに「指導とはこういうものだ、こうあるべきだ」と厳しいスタイルをモデルにしていたともいえます。

何げない会話にひそむ「成長のヒント」

コーチングを学び始めて、何が変わりましたか?

藪内 質問の仕方や選手へのアプローチ方法には色々あることを学びました。そして、選手の「沈黙」を「待つ」ことができるようになりました。

以前は、一方的に「やるの?やらないの?」と迫り、選手が答えられずにいると、「なんで黙ってる? 何にも言えないの!?」と追い詰めていましたが、今は選手が私の質問に答えてくれる、話してくれるというシンプルなことがとても楽しくなってきたのです。

「この選手は、色んなことを考えようとしている」とか、「この選手が本当に言いたいのはこういうことなのかな?」など、相手のことがわかってくるようになると、相手が黙っている「間」ですら楽しくなり始めました。

選手も、最初は「コーチとこんなに話しちゃっていいのかな?」と驚いていましたが、質問や会話を重ねるうちに選手の方からもいろんなことを話してくれるようになりました。

練習のことや他愛もないことの中にこそ、彼女たちの成長につながるヒントが、たくさん潜んでいるのですね。

選手との会話が純粋に楽しくなった。それは、私にとって劇的な変化でした。

指導者と選手の間で「会話が成立すること」と、「技術の向上」には、どんな関係があるのでしょうか?

藪内 バスケットは「習慣のスポーツ」と言われています。良いクセも悪いクセも、プレーに出てしまう。

そのため、「普段の会話を通じて相手を知る」ことと技術の向上は関係があります。

ミスするときは、同じ方法でミスをしてしまうもの。選手は「それが正しい」と信じているので、それについて問いかけるところから始めるようになりました。

「それ、間違っているよ」ではなく、「今のプレーを言葉で説明してみて?」とか「そのプレーにはどんな意図があるの?」など、いろんな側面から質問したり、映像を一緒に見ながらミスをする前のプレーから振り返りながら問いかけをしています。

「こうやりなさい」と強制するのは簡単ですが、そうではない「問いかけ」でどうなるかを考えるのも、コーチングを学び始めたときは面白かったですね。

そして、変化の瞬間に「できたね!!」と小さな成功を伝える。そのとき選手がちょっと照れるんですよね。「あ、できた!」って。

私と選手、2人だけの空間が生まれる瞬間が楽しいので選手から目が離せません。

「やらせる」指導から「聞く」指導へ

以前はどのような「教え方」だったのでしょうか?

藪内 「できないなら、10回でも1000回でも、できるまでやって!」というコーチでした。できないことはできるまでやるしかない、と。時間や回数が大きいほどいい練習だと考えていましたから。

以前は......「命令」とか、「ムチ持って」っていう感じですね。「頑固親父」風って言うのでしょうか、、、

今はどうですか?

藪内 自分でも変わったと思います。一つのメニューや限られた時間や回数の中で小さな「成功体験」「自信」「達成感」が持てるような練習を考えるのが面白くなりました。

そのためにはコーチやマネージャー、練習の備品などもフル活用し、効率よく進めていけます。

選手にはどんな時もバスケットを「楽しむこと」を感じて欲しいです。

日立ハイテク クーガーズの練習場にはスローガンの『HARD WORK』 『ENERGY』 『ACTION』 『THANK YOU』という言葉を掲げている

(次章に続く)

聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部

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