プロフェッショナルに聞く

さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。


コーチングによる人材開発と組織開発
株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム・エンターテインメント事業本部 組織開発部
HRBP 山下裕大氏 & 坪井一樹氏

第1章 日々、対話に多くの時間を使うHRBP

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

第1章 日々、対話に多くの時間を使うHRBP
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コーチ・エィのサービスの一つに、組織開発をドライブするリーダー開発のためのストラクチャー「Driving Corporate Dynamism(DCD)」があります。このサービスを活用くださった株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の山下裕大さんと坪井一樹さんにお話を伺いました。お二人は、DeNAのゲーム・エンターテインメント事業本部の組織開発部に所属し、HRBPの役割を担っています。HRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)とは、経営戦略や事業戦略と人事戦略をシンクロさせながら、事業リーダーに対して、人と組織のプロフェッショナルとして事業を支援する役割で、近年、戦略人事のあり方の一つとして国内でも注目を集めています。

今回は、DeNAがコーチ・エィのDCDをどのような意図で活用したのか、DeNAにおけるHRBPの役割や、コーチング導入で見られた効果などにも触れながら、お話を伺いました。

第1章 日々、対話に多くの時間を使うHRBP
第2章 コーチングによる組織開発の実践
第3章 1on1ミーティングは誰のための時間か

本記事は2020年2月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

経営視点で事業部を牽引するHRのパートナー

 まず、HRBPの役割を担っているお二人のお仕事内容について教えてください。

山下 HRBPと聞くと、何をやる仕事なのかわからない人も多いかもしれませんが、私たちの仕事は、どちらかというと経営に近い仕事で、人的リソースの差配・最大化がメインの業務です。

一般に人事部の業務として想起される給与計算や労務管理、新卒採用といった全社視点で動いた方がメリットのある人事機能は、DeNAの全社共通機能としてヒューマンリソース本部にあります。その組織とは別に、私たちHRBPは各事業部側に入り込み、事業リーダーと共に仕事をしながら、組織開発や人材開発、中途採用や評価など、事業部と親和性の高い人事業務を担当しています。物理的にHRBPの席は事業部の近くにあり、日々起きる課題を解決するのはもちろんですが、人・組織のプロフェッショナルとして、事業計画に沿った人員計画の策定や、その実行のための支援を通じて、各事業部の成長を支えています。

 DeNAが組織としてHRBPを設置したのにはどういう背景があったのですか。

山下 私自身は2014年にDeNAに中途入社していますが、当初はHRBPがまだ存在せず、その構想が具体化してきたタイミングでした。組織として立ち上がったのは2014年の冬です。当時は、スポーツ・ヘルスケアなどにも力を入れ始め、事業多角化により、社員数も1000名を超えてきたタイミングでした。そのような中で経営陣には、DeNAの競争力の源泉である「人」や「カルチャー」が、ややもすると薄まってしまうのではないかという懸念があったようです。HRBPがエバンジェリスト(伝道師)となって、DeNAの資産として大切にしてきた組織文化を継承していく、そんな構想がありました。

山下裕大 氏 / 株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム・エンターテインメント事業本部 組織開発部 HRBP
海外の大学を卒業後、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(現IBM)に入社。ITを活用したソリューションを複数の業界に対して提供。その後、HRコンサルタント、社内の人材育成などのコーポレートHRや新人研修の現場責任者などを経験し、事業会社への転職を希望して、2014年DeNAに入社。人材企画業務や採用マネジャー等の経験に加え、HRBPには新設当初から参画。複数の部門や子会社を担当している。

DeNAはもともと人をとても重要視している会社です。若手がマネージャーとなってプロジェクトを走らせていることも多々ありましたから、HRBPがマネージャーのチャレンジを後押しするという狙いもあったと思います。

 HRBPが事業部の組織開発に取り組むことで、何を実現したいと考えているのでしょうか。

山下 一言でいうならば、事業の成功です。“事業の成功”を実現するために大切なことは、大きく二つあります。一つはゲーム・エンターテインメントを提供する会社として、エンタメで遊ぶ人々に喜びと驚きを与えること。これはDeNAのミッション(普遍的に目指す姿)として、「Delight and Impact the World(世界に喜びと驚きを)」と表現しています。そしてもう一つが、人々が「Delight」するために、作り手となる社員がワクワクしながら働けているか、それぞれの力を出し切れているか、新しい挑戦ができているか、という視点での成功です。こちらはとくに我々HRBPが責任を負う部分です。働く人が不幸せでも、事業としては成功するかもしれません。しかし、それは短期的な成功でしかないでしょう。中長期で事業を成功させるには、その事業に携わる人もハッピーでないとならない。そうした中長期での事業の成功に資するために、社員の幸せを追求しながら組織の成長を図る。これが私たちHRBPの使命だと思っています。

事業部メンバーと対話することにもっとも時間を使う

 毎日のお仕事となると、具体的にはどのような業務が多いのでしょうか。

山下 コーチングと言っていいかどうかわかりませんが、事業部メンバー、とくに部長クラス以上の人と対話することに一番多くの時間を使っています。相談を受ける内容については、人事に関係することに限らず、事業を進める上で、何に困っていて、何が必要か、という観点で対話をしています。

具体的には、部門の統合や廃止などといった組織デザインの話でいうと、部署間での利害関係の調整に入ることもありますね。両者の間に入って、どのように新しい組織をつくっていくのが双方にとってメリットがあるかという、建設的な議論をファシリテートします。

また、中途採用に関しては、最終面接をHRBPが担当します。一次、二次面接を通じて、事業部視点のコミュニケーションはすでに済んでいるので、最終面接で見るのは、会社として一番大切にしているカルチャーに候補者の方がフィットするかどうかの視点です。DeNAが大事にしている価値観を入社される方に求めていく上で、双方が中長期的にハッピーになれるのかどうか。ここを面接官だった事業部側のメンバーとも話し合うようにしています。

 事業部の方たちとの対話を重ねることで集めた情報を、HRBPとしてはどのように活用されるのですか。

山下 我々の仕事は、短期的な悩みの解決だけではなく、事業を成功に導くことです。そのため、活用法は主に二つあります。

一つの活用法としては、3ヶ月ごとに事業課題をふまえた組織・人事上の重要な課題とゴールをチームで議論してPDCAを回すことに活かしています。

もう一つは、出てきた課題をリスト化し、救急医療現場で行われるトリアージ(患者の重症度に基づいて治療の優先度を決定して行う選別)のように、優先度に応じてラベリングすることもあります。これは必ず解決に向けて取り組もうとか、これは問題になりうるけれど今の段階ではそのまま置いておこうとか、出てきた課題の中で、「選択と集中」をしています。

気をつけなければいけないのは、事業部から出てきた課題や悩みに対し、タスク実行者とならないこと。マクロとミクロの両視点があるとすると、HRBPチームは極力マクロの視点でいなければならないと考えているからです。

  HRBPに求められる要件はとてもコーチに近いですね。技術面とメンタル面でのコーチという印象を受けました。

※ Driving Corporate Dynamism(DCD)は(株)コーチ・エィの登録商標です。

(次章に続く)

インタビュー実施日: 2020年2月14日
聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部

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