さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。
株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム・エンターテインメント事業本部 組織開発部
HRBP 山下裕大氏 & 坪井一樹氏
第3章 1on1ミーティングは誰のための時間か
2020年04月06日
※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
コーチ・エィのサービスの一つに、組織開発をドライブするリーダー開発のためのストラクチャー「Driving Corporate Dynamism(DCD)」があります。このサービスを活用くださった株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の山下裕大さんと坪井一樹さんにお話を伺いました。お二人は、DeNAのゲーム・エンターテインメント事業本部の組織開発部に所属し、HRBPの役割を担っています。HRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)とは、経営戦略や事業戦略と人事戦略をシンクロさせながら、事業リーダーに対して、人と組織のプロフェッショナルとして事業を支援する役割で、近年、戦略人事のあり方の一つとして国内でも注目を集めています。
今回は、DeNAがコーチ・エィのDCDをどのような意図で活用したのか、DeNAにおけるHRBPの役割や、コーチング導入で見られた効果などにも触れながら、お話を伺いました。
第1章 | 日々、対話に多くの時間を使うHRBP | 第2章 | コーチングによる組織開発の実践 |
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第3章 | 1on1ミーティングは誰のための時間か |
本記事は2020年2月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
企業として対話の重要性をどう捉えるか
1on1ミーティングの導入など、多くの企業では上司と部下の対話を推進しています。DeNAさんでの1on1はどのくらい定着していますか。
山下 近年1on1が脚光を浴びるようになりましたが、DeNAでは昔から、当たり前すぎるほど頻繁に1on1をやっています。私が入社した6年前も1on1をやっていましたね。入社当日からカレンダーにいろいろな人との1on1の予定が入っていました。
坪井 DeNAでは30分の1on1やミーティングが多いですね。いきなり1時間となると重たいけれど、30分だと気軽に予定を入れやすいというのがあるのかもしれません。
山下 1on1のために会議室を使うだけでハードルがあるという話を耳にしたこともありますが、そこは企業の価値観として対話の重要性をどう捉えているかの違いだと思います。たとえば、1on1の文化がない職場で1on1をするとなると、部下は悪いことをして呼び出されたという印象をもつかもしれません。DeNAでさえ、私が突然、メンバーに1on1の予定を入れると、「何かいけないことしましたか?」と言いながら会議室に入ってくる人もいたことがありましたからね(笑)。
ただ、最近の変化でいえば、1on1で話す中身が良い方向に変わってきたかもしれません。部下のために使う時間という方向性も認知されてきたのでしょうね。
坪井 1on1を誰とするかということも非常に大切です。相手によって影響の及ぶ範囲に違いが出るからです。組織や環境の中で影響が広がりやすいのは、部門長を対象としたときが多いと感じています。組織のコンディションが悪化傾向があるときにどのような打ち手を講じるべきか、メンバーやマネージャーとのコミュニケーションをどのように取るのがよいかといったテーマの場合、部門長の行動や思考にポジティブな影響を与えられれば、そこから組織の強化につながります。 もちろん、メンバーとの1on1の時間も大切にしていますが、組織全体の成長を考えると、部門長に対する1on1により多くの時間を費やせるように、とは考えています。
山下 私の場合は、1日平均で4本くらい1on1ミーティングが入っています。トータルで毎日2時間1on1に費やしていることになりますね。
坪井 私も部門長との1on1は週1回、もしくは隔週で入れています。私と山下とで同じ人に対してそれぞれ1on1をすることもありますね。
山下 そうですね。坪井が組織面の相談相手として1on1をして、私は事業面の視点で話をするなど、相互に役割分担をしながら、一人の部門長を引き上げるよう取り組んでいます。
上司は1on1を自分の仕事のために使うな
上司がコーチングを受けること、学ぶことは、組織にとってどのような意味があると思われますか。
山下 以前、Yahoo! JAPAN の川邊さんが登壇されたコーチ・エィのセミナーに参加しました。その時に川邊さんがおっしゃっていた「多くの人が、1on1の目的を誤解している」という一言に大きな衝撃を受けました。なぜかというと、一般には、上司が自分の仕事をうまく進めるために1on1を使っているケースが多いからです。上司が、自分の知りたいことを知る場として使っている。しかし、1on1は本来、部下のための時間であるべきなんです。上司が部下の話に耳を傾ける。このスイッチの違いに気づいて自分の1on1のやり方を変えたことで、周りも変わっていきました。
坪井 1on1の時間が生産的になれば、非常に大きな変化をもたらしますが、逆に「意味のないミーティングに時間をつかいたくない」と拒否されてしまったら、上司と部下の関係性も難しくなります。上司の立場としては、せっかく時間を取っても1on1で何を話したらよいかわからなくて、結局、業務の進捗状況とか普段の業務の延長となんら変わらない時間になってしまうこともあると思います。1on1は精度を上げれば上げるほど、関係性がうまくいくことは確かなのですが、そうなるためのきっかけがうまく作れていないケースもあるかもしれません。
まず、上司は「相手が今何を考えているのか」「何を感じているのか」といったことを聞き、それを踏まえて異なる視点からの意見を伝えるなど、上司にコーチングの素養があれば、効果的な1on1になる可能性は高まると思います。
コーチングを受けるエグゼクティブにはポジティブな印象を抱く
コーチ・エィでは、エグゼクティブに対するコーチングも提供しています。組織へのコーチングの導入を手掛けられたお二人から見て、エグゼクティブ・コーチングについて、どのようなイメージや期待がありますか。
山下 私は、コーチングを受けているエグゼクティブに非常によい印象をもっています。エグゼクティブともなると当然多忙な日々だと思うのですが、そんな中でも時間をとってコーチングを受けているということにポジティブな印象をもちます。なぜなら「自分を高めたいと考えているんだ」とか「組織や人に対する関心が高いんだな」と思うからです。
エグゼクティブは経営の成功をドライブする人たちなので、周囲から見て「頭にあるのは経営の成功だけで、人や組織に対してとてもドライだ」という印象を与えてしまうケースがあります。そうしたエグゼクティブが、コーチングを受けるという意思決定をしたという事実と、その人の限りあるリソースをコーチングに費やしている、というその二点だけで、周りに大きなインパクトを与えるように思います。
坪井 社長は孤独だと言われることがあると思いますが、おそらくいろいろな声が上がってこなくなるんですよね。コーチングでは、問われることで自問したり捉えなおしたりするプロセスが生じ、そのことで自己認識が深まる効果があると思います。企業のトップに立つ方は、常に社会や事業の未来のことを考えていると思うので、エグゼクティブ・コーチングは、未来の解像度と自分の解像度を高め、会社全体をどう牽引していくかを考える一つの有効な手段になるのではないかと思います。
エグゼクティブ・コーチングも含め、組織の成長に向けてコーチングをどう活用していくといいかについては、これからも考えていきたいですね。
※ Driving Corporate Dynamism(DCD)は(株)コーチ・エィの登録商標です。
(了)
インタビュー実施日: 2020年2月14日
聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部
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