講演録

株式会社コーチ・エィにおいて行われた講演会の記録です。


私がエグゼクティブコーチをつけ続ける理由
ヤフー株式会社 副社長執行役員最高執行責任者 川邊健太郎 氏

ヤフー副社長が語るエグゼクティブ・コーチング:第1回 「本当に効果があるのだろうか?」と思っていた

ヤフー副社長が語るエグゼクティブ・コーチング:第1回 「本当に効果があるのだろうか?」と思っていた
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2017年5月17日に株式会社コーチ・エィ主催のフォーラムにて、ヤフー株式会社 副社長執行役員最高執行責任者である川邊健太郎氏に、エグゼクティブコーチをつけている体験について語っていただきました。本シリーズでは、川邊氏の講演の内容を4回にわたってお届けします。

第1回 「本当に効果があるのだろうか?」と思っていた
第2回 ヤフーのコーチングマネジメント
第3回 私にとってのエグゼクティブ・コーチングの価値
第4回 エグゼクティブコーチは誰につけるのが効果的?

本記事は、2017年5月17日の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

私にとってのエグゼクティブ・コーチング

2013年から、コーチ・エィにエグゼクティブコーチをお願いしていて、今年(2017年)で5年めに入りました。今日は「私がコーチをつけ続ける理由」というテーマで、コーチをつけている体験についてお話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。

結論からお伝えすると、コーチをつけることで部下への関わりが変わったと感じます。「主張が強く、戦術的なアイディアの提示が多い人間」から「問いの多い人間」に変化しました。

私自身は「エグゼクティブ・コーチング」の主な価値は2つあると思っています。一つは「自分の自問自答のレベルが上がる」ということと、「実は自分にコーチングのスキルが身につくこと。そして、部下にそれを適用でき、その部下がそのまた部下に適用するというように、組織全体への波及効果が大きい」ということです。

ヤフーに入社。赤字事業「GYAO!(ギャオ!)」の経営を任される

大学時代に起業した会社がヤフーと合併し、2000年にヤフーに入社しました。入社後は、ヤフーの前社長だった井上氏(故井上雅博氏)の薫陶を受けながら、インターネットサービスやゲームの作り方などを習いました。ヤフーは、2009年に、USEN社からGyaO(現GYAO、以下現在の表記で記載)という動画配信サービスを買収し、「ヤフー動画」というサービスと統合しました。どちらも人気があったものの大きな赤字を抱えた事業で、その2つを統合することで「果たして何が起こるか」といった実験的な取組みでした。

当時、私は「Yahoo!ニュース」の責任者でした。「GYAO!」事業部を横目で見ながら「すごいチャレンジをするなあ」と思っていたところ、井上さんから「久しぶりに社長をやってみろよ」と言われ、突然、赤字企業のGYAOの経営に携わることになったのです。

ヤフーに戻り、副社長に

GYAOで、赤字を黒字に転換させたところ、ヤフーが2012年にパソコンからスマートデバイスにシフトすることを決め、それに伴い、社長も含めて経営層を刷新するという非常にダイナミックな人事が行われました。そのタイミングでヤフーに戻り、副社長になりました。

第一次ヤフー時代

ヤフーにはネットベンチャーというイメージがあるかもしれませんが、すでに20年の歴史があります。2016年4月には、おかげさまでサービス開始から20周年を迎えることができました。現在、日本のインターネット人口のほぼ全員の方にヤフーを使っていただいているという非常に幸せな状況です。

ヤフー単体の従業員数は約6000人(2017年3月31日現在5826人)、アスクルや一休といったグループ会社を含めると1万人を超える規模の会社です。売上は、通期で8500億円ほど。営業利益は2000億円ぐらいです。

先ほどお話しした通り、私は大学3年のときに自分で会社を始め、そこそこ順調な中でヤフーと合併しました。ヤフーに入社してからは、ベンチャー時代にやっていたモバイル系のサービスをやり、ある程度順調に成長させました。その後、異動があり、「Yahoo!ニュース」の責任者になり、続いてGYAO の社長になります。これが、私の第一次ヤフー時代です。

当時は、典型的な率先垂範型のリーダーでした。自分で会社を興し、ヤフーでも、サービスを改善したり開発したりして、自信をもっていました。部下のアイディアより、自分のアイディアのほうが優れていると考えていましたから、考えるのは自分で、部下には主に指示をするというマネジメントスタイルで、業績も伸ばしていました。

コーチングに対して懐疑的だった

「Yahoo!ニュース」の責任者だった頃、横のデスクに、現在ヤフーの人事担当役員である本間(本間浩輔氏)がいました。当時の彼はスポーツ事業の責任者でしたが、彼と宮坂が面白いことを始めました。一つは「人財開発会議」というもので、一人ひとりのメンバーについて、「強み」、「弱み」、「将来のキャリアの希望」、「上司が考えるその人が歩むべきキャリア」といった内容のカルテをつくり、管理職が一人ひとりにつき20分間話し合って、その人のための経験をデザインするという取組みです。そして、もうひとつは「コーチング」です。本間が、部下や他部署の部長に対してコーチングを始めていました。私は、それらの取組みを見ながら、「効果があるのだろうか」と疑わしく思っていました。週末には人財開発やコーチングの研修などもありましたが、土日は完全にオフにしたかったので、週末の研修には参加もしませんでした。

GYAOで初めて壁にぶつかる

ところが、GYAOの社長になって、かなり大きな壁にぶつかります。あまりに大きな赤字を抱えた事業で、「睡眠を4時間にし、1日20時間働き続けたとしても黒字にならないのではないか」と思うほど、極めて強い動物的直感、危機感をもちました。「いままでとやり方を変えないとうまくいかない」と考え始めたとき、本間の取組みを思い出しました。彼を呼び出し、「本間さんがやっていたあの取組みはなんでしたっけ?」と聞いたところ、彼はニヤリとして「やっと、お前も気がついたか。いずれ限界が訪れるということはわかっていた」と言うんです。そして、コーチングを受けることを勧められました。

コーチングが始まる

その後、月1回、ランチを食べながら本間とミーティングをもつようになりました。本間はそうとは言いませんでしたが、実質的には、本間の私に対するコーチングが始まっていたのだと思います。本間から質問され、考えていることを答えていくうちに自分の考えが整理されてスッキリしていきました。加えて、GYAOでも「人財開発会議」を取り入れ、異動を通じて人財を育成していくモデルをつくりました。

次回へ続く


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