講演録

株式会社コーチ・エィにおいて行われた講演会の記録です。


私がエグゼクティブコーチをつけ続ける理由
ヤフー株式会社 副社長執行役員最高執行責任者 川邊健太郎 氏

ヤフー副社長が語るエグゼクティブ・コーチング:第3回 私にとってのエグゼクティブ・コーチングの価値

ヤフー副社長が語るエグゼクティブ・コーチング:第3回 私にとってのエグゼクティブ・コーチングの価値
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2017年5月17日に株式会社コーチ・エィ主催のフォーラムにて、ヤフー株式会社 副社長執行役員最高執行責任者である川邊健太郎氏に、エグゼクティブコーチをつけている体験について語っていただきました。本シリーズでは、川邊氏の講演の内容を4回にわたってお届けします。

第1回 「本当に効果があるのだろうか?」と思っていた
第2回 ヤフーのコーチングマネジメント
第3回 私にとってのエグゼクティブ・コーチングの価値
第4回 エグゼクティブコーチは誰につけるのが効果的?

本記事は、2017年5月17日の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

プロのコーチをつけて気づいたこと

社内でコーチングの体験をし、自問自答の幅やレベルを上げることにつながるということをある程度理解した上で、プロからコーチングを受けるようになりました。その中で気づいたことをお話ししていきたいと思います。

熊澤さんとのエグゼクティブ・コーチングは今年で5年目に入りました。現在は、月1回、1時間のセッションをもっています。時に横に並んで、時に向かい合って座り、主に熊澤さんから問いが投げかけられ、私が考えながら答える、といったように進みます。私の答えたことを、主に熊澤さんがホワイトボードにどんどん書いていきます。私の頭の中を、可視化してくれるわけです。ホワイトボードに書き出して、二人で眺めて、また書いたり、直したりしながら進みます。セッションの最後には、自分でホワイトボードの写真を撮り、折につけそれを見て、考えたりしています。

エグゼクティブコーチですから、いわゆる質問のスキルは当然高いわけですが、私が一番の違いを感じたのは、問いの方向性です。熊澤さんからの問いは「チームの関係性」についての問いであることが非常に多いのです。話の中では常に人が登場し、人と人との関係について話題にすることが極めて多い。これは、それまでの自問自答の問いや、ヤフーの関係性の中でされてきた問いの中でまったくなかった種類の質問です。

これは、経営チームの質が高ければ、全事業の質が高くなり、業績も向上するということをエグゼクティブコーチとして意識されているからだと思います。ヤフーもかなり大きな組織ですから、社長やCEOの率先垂範だけで動くかというと、そんなことはありません。まずは従業員のチームワークが瑞々しいもの、あるいは希望的なものでないと、絶対に業績など向上しません。

エグゼクティブ・コーチングの流れ

セッションでは、その時々のテーマがあり、そのテーマについて熊澤さんから質問を受けながら進んでいきます。話をする中で、登場人物の名前をホワイトボードなどに書いていくのですが、何人かの名前が出たところで、「AさんとBさんの関係は、前からよく出てくるし、非常にいいということですが、ここに出てくるCさんとAさんの関係はどうなのでしょうか」と突然聞かれたりするわけです。問われてみて初めて、「確かに、AとCのあいだに接点はないけれど、ここに接点が生まれると、AとCの間だけではなく、AとBや、CとDなど、いろいろなところの関係がよくなる。そうすれば、この部署全体のオペレーションの質が上がって、こういう業績に結びつくはずだ」と、どんどん新しい発想が生まれてきます。

「そんなことは、あたりまえのことなのではないか」という顔で聞いている方もいらっしゃいますが、1時間という時間をかけ、そのことばかり聞かれることで得られる気づきや考えの深さは、他では得られないものだと思います。

コーチを受けることで、自らもコーチとして成長する

今まで自分がもっていなかった「経営チームを人間関係で捉える」という発想を得たことは、私にとってコーチングの価値の一つですが、もう一つ大きな意味があったのは、コーチを受けることでコーチングスキルが身につき、部下に対してコーチができるようになったことです。

上級職に就く者がコーチをつける意味は、彼ら自身の自問自答の質が上がり、業績が上がるということだけではなく、彼らの関わりによって部下たちが変わっていくことが、何よりのメリットではないかと思うのです。それが、会社という組織全体にとっての、エグゼクティブがコーチを受けることの最大のメリットだと思います。上司から部下への「問い」の質が変わると、部下たち自身の問いの質が上がっていきます。そうすると、さらにその下の部下への「問い」が変わっていく。大きい組織にとっては、一番上が変わることで下も変わっていくという波及効果が最大のメリットなのではないかと最近思っています。

オープンコラボレーションスペース「LODGE(ロッジ)」は、コーチングの成果

ヤフーは昨年の10月に本社を移転しました。六本木の東京ミッドタウンから紀尾井町のガーデンテラス紀尾井町に移り、約5千人がそこで仕事をしています。ヤフーはこれまで何回も引っ越しをしてきましたが、これまでの引っ越しは、ただ場所が変わるだけでした。最大限効率的かつ効果的に、決まったサービスの生産性を上げるために作られたオフィスで、効率を重視し、みんな口数も少なく、ひたすら作業をするという環境でした。

その中で、今回の引っ越しにあたっては、オフィスづくりの発想をこれまでとは変えて、自分たちで主体的に新しいサービスを作るための発想が生まれるようなオフィスにしようと考えました。コンセプトは「情報の交差点」です。これも、熊澤さんとのコーチングで得た着想です。

熊澤さんとイノベーションについて話しているときに『メディチ・インパクト』(フランス・ヨハンソン 2005年 ランダムハウス講談社)という本を紹介されました。かいつまんでお話しすると、異なる人たちがいろいろな組合せで情報交換をし、さらにはその組合せのレパートリーをいかに増やしていくかがイノベーションにとって非常に重要だということが書かれています。そこで、そういうことが実現できるオフィス環境をつくろうという発想が生まれました。コーチとのセッションから、社員全員に影響を与えるようなプランが生まれてくるという一つの事例です。

次回へ続く


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