リーダーの哲学

各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。


経営者インタビュー
株式会社モルフォ 平賀 督基 代表取締役社長

第2回 人間ならではの価値を創造し、世の中に爪あとを残したい(株式会社モルフォ 代表取締役社長 平賀督基氏)

第2回 人間ならではの価値を創造し、世の中に爪あとを残したい(株式会社モルフォ 代表取締役社長 平賀督基氏)
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さまざまな業界のトップに、経営に関する哲学をお聞きする経営者インタビューシリーズです。


第2回は、株式会社モルフォの代表取締役社長である平賀督基氏のインタビューをお届けします。モルフォは東大発ベンチャー第1号として、2011年に上場。その後も順調に業容を拡大しています。強力なリーダーが会社を率いるのではなく、相互にリスペクトし合う経営チームを作ることで成長していきたいと話す平賀社長。AIにはできない、働く人間だからこそ創り出せる価値を共有することで社会貢献したいと語られます。


責任の範囲が広がることで、自身の強みも磨かれる

モルフォは、私を含めた4名で2004年に創業した会社です。当時、東大エッジキャピタルからの資金調達が決まりつつあり、東大発ベンチャー第1号が誕生するなら東大卒の私が社長になるのがよいという理由で私が社長に就任することになりました。もともと技術屋なのでCTOになることは漠然とイメージしていましたが、社長になることはそれまで考えたこともありませんでした。実際、会社設立後も業務時間の半分以上は技術開発に費やし、経営面はもう一人の創業メンバーと二人三脚で進めていました。

ただ、2011年のIPOを機に、社長としての責任が大きく変化しました。上場会社として株主・投資家といった資本市場への説明責任が求められるようになり、経営に関するさまざまな領域で自分でも学びを深める必要が生じました。自分は技術しかわからないのではないかと思っていたのですが、責任の範囲が広がった結果、わかることやできることが増えていき、それは率直に楽しいプロセスでしたね。経営と技術の両方がわかるという状態になっていくことで、自分自身の強みも磨かれたと思います。

「面白い」を探求しながら、異なる役割に対するリスペクトを忘れない

創業者4名でスタートしたモルフォも、社員数100名の規模にまで成長してきました。そのような中で、モルフォは何を目指すのか、会社としてどうあり続けるべきか、といったビジョンや企業理念をつくり、浸透させていくことは、社長である私の大事な役割だと感じます。

平賀督基 氏 / 株式会社モルフォ 代表取締役社長
2002年3月 東京大学大学院 理学系研究科情報科学専攻(博士課程) 修了。博士(理学)。在学時より画像処理や映像制作用の技術開発に携わる。2004年5月 株式会社モルフォ設立 代表取締役社長(現任)。研究で培った専門知識や経験を実世界に役立てたいという思いのもと、画像処理技術を専門に研究を行ってきた東京大学出身の技術者とともに、2004年5月に株式会社モルフォを設立。代表取締役社長を務めながら、自らも最先端の画像処理およびAI技術の研究開発に取り組んでいる。
写真提供: 株式会社モルフォ

文化として大事にしたいのは、「面白そうなことがあったらやってみる」とか、「お互いにリスペクトし合えるような関係性を構築していく」といったことですね。それから、エンジニアにも技術だけではなくビジネスがどう成り立っているかに興味をもってもらいたい。それも、お互いへのリスペクトから生じるものではないかと思います。

中でも、「面白い」への探求は浸透しているのではないかなと思います。プレゼンテーションの中にも「面白いことを一つは入れよう」と言っていますし、社員に対しても自分に対しても「今日は、面白いことを言えたかな?」と問いかけています。

一方で、お互いにリスペクトし合える関係性を構築していくことについてはもっと伝えていきたいですね。どんなにすごい技術でも、技術だけでは食べていけません。その技術がどうやってビジネスとして成り立っているのか、自身の業務のその先にも関心を向けることで、異なる役割の人に対するリスペクトの気持ちが生まれます。相互にリスペクトし合えるチームワークを大切にする。モルフォの企業理念やビジョンを作る上でも、そこは大切に残していきたいと思っています。

「あるべき姿」に向けて、できていることもあれば、できていないこともありますが、リスペクトのほかには、もっとハングリー精神があるといいなと思います。

権限と責任が明確で、相互に厚い信頼関係で結ばれた経営チームをつくる

もう一つ、よい経営チームをつくることも社長に課された重要な仕事の一つだと考えています。では、よい経営チームとはどういうチームなのか。

私が考えるのは、個々に能力のあるメンバーが互いをリスペクトしながら、自由な意見交換のできるチームです。そのためには役割と責任が明確で、且つ、それぞれの役割を任せきれる信頼関係が欠かせません。

ホンダも、技術者としての本田宗一郎と、事業をしっかり運営していく藤沢武夫がいて、今の繁栄につながるのだと思います。誰か一人の突き抜けた経営者による圧倒的なリーダーシップではなく、権限や責任がバランスよく分散されつつ、相互に信頼関係でつながっている、そんな経営チームをつくっていきたいです。

AIではない人間だからこそ創出できる価値が、「面白い」を生み出していく

私は小学生のとき、練習帳にひたすら同じ漢字を書いていく宿題がいやでたまりませんでした。子どもの頃から、単純作業の繰り返しが好きではないんです。漢字の練習は大事なことですが、そもそも単純作業をそのまま繰り返しているだけという状態に疑問を感じるんですね。

これからの時代、AIやロボットが世の中の単純作業を担っていくようになるでしょう。ルーティンをただ続けるのではなく、そこに何らかの工夫を加えてより良い方向へと変えていく。それこそが、AIではない、働く人間として必要な価値だと思います。

だからと言って、「これをこう変えたら良いんじゃない?」と一から教えてしまうと、今度は相手が、自分で考えようという気力をなくしてしまいかねません。人から教わったとしても、自分なりの工夫を加えて、新しいやり方を創り出していく。その「自分なりのアイデアや工夫」こそが重要で、そうして生まれた新しいモノを周りの人に共有することで、社会全体をより良くしていけるのではないでしょうか。

「爪あと」を残す

提供 株式会社モルフォ

私の夢は、いずれモルフォとして世の中に何らかの「爪あと」を残すことです。世の中の人の行動に影響を与える何かを残したい。当社は技術力が高いとお褒めをいただくことが多いのですが、実はテクノロジーでできることはおおかた決まっていて、差が出せるといってもごく微妙な差にすぎません。しかし、テクノロジーでできることと人間の生み出すアイデアとを掛け合わせると、そこには無限に面白いサービスや製品が生まれるチャンスがある。今後はより企画を強化して、面白いモノを生み出し、社会に貢献していきたいと思います。

そして、自分がいなくなっても、モルフォの企業文化を維持しながら事業が回り、持続的に成長していける。そういう会社にしていきたいと思っています。

本記事は2020年8月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
表紙写真: 株式会社モルフォ提供


株式会社モルフォについて

株式会社モルフォは「画像処理/AI(人工知能)」の研究開発型企業です。高度な画像処理技術を組み込みソフトウェアとして、国内外のスマートフォン、半導体メーカを中心にグローバルに展開しています。また、カメラで捉えた画像情報をエッジデバイスやクラウドで解析する、AIを駆使した画像認識技術を車載や産業IoT分野へ提供し、様々なイノベーションを先進のイメージング・テクノロジーで実現しています。


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