リーダーの哲学

各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。


経営者インタビュー
リンカーズ株式会社 前田 佳宏 代表取締役社長

第3回 ゼロベース思考を大切にしながら、各事業部のリーダーと同じ目線でゴール達成までの戦略を考える(リンカーズ株式会社 代表取締役社長 前田佳宏氏)

第3回 ゼロベース思考を大切にしながら、各事業部のリーダーと同じ目線でゴール達成までの戦略を考える(リンカーズ株式会社 代表取締役社長 前田佳宏氏)
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さまざまな業界のトップに、経営に関する哲学をお聞きする経営者インタビューシリーズです。


経営者インタビューシリーズ第3回は、リンカーズ株式会社 代表取締役社長である前田佳宏氏のインタビューをお届けします。技術や業界に精通したプロの目で、モノづくりのビジネスマッチングプラットフォームを提供するリンカーズの創業者・前田氏は、企業と企業の出会いを通じて、日本の産業界がイノベーションを頻発できる構造へと変革を推し進めています。2-3倍速で再生するビジネス書のオーディオブックの活用や、さまざまな人との対話から得られた学びを糧に、日本の中小企業の持つ強みを最大化し、産業界全体の生産性を向上させるアイデアを常に考えているという前田社長。多角経営の成功の鍵を握るリーダー人材と向き合う姿勢についてお話しいただきました。


任せることの大切さと難しさを体感しながら多角経営を進める

先進国の中で日本だけGDPが悪くなっている――。京セラ、野村総研での勤務経験を通じて私が見たのは、横のつながりがないがために多くの機会損失を生んでしまっている日本の産業の現状でした。このままではまずい、日本の産業構造そのものを大きく変えなければいけない。そうした強い思いで、2012年にリンカーズの前身となるDistty社を起業、日本のモノづくりの業界構造を変革するためのプラットフォームとして、ビジネスマッチング事業を開始しました。

多くのベンチャー企業は、一つのコア事業を伸ばして一点突破で上場を果たし、それから多角経営を始めます。しかしリンカーズは、ベンチャー企業ながらもすでに4つの事業を傘下に持つ多角経営を進めており、この路線を変更するつもりはありません。それは、今のような変化の激しい時代においては、一点突破型で一つの事業に経営資源が集中することが、かえって企業存続のリスクにもつながると考えるからです。外部環境の変化への耐性という点では、ベンチャーであっても、事業ポートフォリオを分散していることはメリットです。その一方で、社長がすべての事業にどっぷりと入り込めないという点は、多角経営を進めるベンチャーの最大のデメリットであり、また難しさでもあります。

自分と同じくらいのマインドや能力、実行力のあるマネージャーに任せること――。これが多角化するうえでとても大切なのですが、上手に運営することはとても難しく、かつて私は、部下に任せすぎた結果、社員の1/3が離職してしまうという事態に直面しました。高頻度で様々なアイディアを出して、超高速で判断して、超高速で実行して、ダメだったら超高速でやり方を変えてまた実行する、という自分にとってはあたりまえのやり方は「普通」ではなかった。任せればうまくいくだろうという、自分の甘い考えや牽引力の足りなさを深く痛感し、反省した出来事でした。

前田佳宏 氏 / リンカーズ株式会社 代表取締役社長
1977年 福井県福井市生まれ、大阪大学工学部卒業。大学卒業後、京セラ株式会社入社 海外営業に従事。2006年株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部に入社、その後、2012年にリンカーズ株式会社設立。2014年から本格的に事業開始。
写真提供: リンカーズ株式会社

リーダー人材に求める3つの要素

どのような人材をリーダーに抜擢して、多角経営を進めていくべきか。その人選において私が大切にしている要素は三つあります。

一つは判断力。ベンチャー企業は、目指すゴールは明確にあっても、そこに到達するまでの手段はさまざまです。それゆえ、リーダーには日々、さまざまな要所で頻回に重要な判断が求められます。判断を下すことには勇気も伴いますから、勇気ある判断力を持っていることが欠かせません。

二つめに求めるのがアイデアを創出する力です。自分自身で新しいアイデアを生み出すのと同時に、誰かが考え出してきたアイデアについても、それをやるか、やらないかの判断をすることが求められる。その意味で、アイデア創出力と判断力は表裏一体ともいえます。

三つめに求める要素が、これらを実行する力です。ベンチャー企業には既存事業という概念がありません。すべてが新規事業ですから、ある程度プレイングマネジャーたることも求められます。プレイングの割合が9割もあるようではリーダーにふさわしくはないですが、3割くらいは現場と共に伴走していくこと。そのようなスタンスを保ちながら実行していく力を自ら持っていることが重要だと考えます。

富士山を5時間で登る戦略を考えよ

それぞれの事業部を各リーダーに任せた上での、トップの役割は何か。資金調達や外部パートナーとの連携など、トップならではの役割もありますが、私が一番大切だと思っているのはやはり、ビジョンを明確にし、そこにいかに最短でたどり着くかの戦略を事業部リーダーと共に考え、前進させていくことだと思います。部下に対しては正面から対峙するのではなく、横に並んで同じ方向を向き合いながら考えます。部下によく問いかけるのが、

「富士山を5時間で登るにはどの道を行くか?」

富士山を10時間かけて登るのと5時間かけて登るのとでは、当然、すべき装備や通る道が異なります。一つのゴールに対しても手段は選べます。正しい手段を選べていないようなら、エレベーターに続く道を探し出して5分で登頂する手もあるよ、と声をかけたり、時折、天候が変化すればその調整役を果たしたりしながら、目標達成に向けた戦略を部下とともに落とし込み、その後の進捗をフォローします。

野村総研で身につけた「GISOV」のフレームワークの中で、私は起点をIssue(課題)に置き換え、どこにIssue(課題)があるのか、動機は正しいか、目指しているゴールに向けて前進しているかを日々考えています。登山の途中で天候が荒れて身動きが取れなくなったら、穴を掘るのもあり。こうした柔軟な発想も良しとするゼロベース思考も、ベンチャーの醍醐味だと思います。

*GISOV...大手コンサルティング会社の野村総合研究所で伝承されている、提案のための型。問題を発見して解決するための方法として、Goal(目的・目標)、Issue(課題)、Solutions(解決策)、Operation(実行計画)、Value(付加価値)の順で提案するのが良いというフレームワーク。

提供 リンカーズ株式会社

フィロソフィーを共有した人材が、ONE TEAMになって会社の成長を牽引する

リンカーズでは、「マッチングで世界を変える」という使命の下、ビジョンとして「スーパージャパン1000社構想」掲げています。ビジネスマッチングを通じて知り合える数万社単位の企業の中から、価値あるプロダクトを持つ企業を見極め、そこに対してファイナンスや人財などさまざまなリソースを投資して育成する。そんな投資先企業を1000社まで拡大すれば、それら企業をハブとして他の企業も巻き込んで、日本の産業競争力にも相応の正のインパクトを与えられる。そのような構想を描いています。

このビジョン達成に向けて、リンカーズ社員が大切にするフィロソフィーとして「リンカーズ・クオリティ」を定めています。その中の一つに「期待を超えた結果を生むために、自由に発想し、自律的なアクションを起こせ」というものがあるのですが、この「自由」は、同調することが嫌いな私が最も大切にしたいフィロソフィーで、自由ゆえに伴う責任や、自由なゼロベース思考を大切にしながら、我が道を行くスタイルで独自のベンチャースタイルを切り拓いていきたいと思っています。そして将来的には、時価総額1兆円を優に超える楽天くらいの規模まで拡大し、複数の事業子会社を傘下に有するホールディング企業へと進化させたいと思っています。

提供 リンカーズ株式会社

この成長の源泉となるのは、人材です。大量離職があったときに残ってくれた社員や、ここ数年間でジョインしてくれた豊富なネットワークやノウハウを持つ社員が、今、相互に切磋琢磨しながら、阿吽の呼吸でONE TEAMとなって同じベクトルで動いてくれています。これは何よりの財産です。

社内に浸透した確固たるフィロソフィーを軸に発展を遂げてきた京セラや日本電産のように、「リンカーズ・クオリティ」のバリューを社内に浸透させ、富士山に登頂するための戦略を、それぞれの社員と同じ方向を向きながら目指せるようにしていきたいと思います。

くじけそうになると、もう一人の自分が問いかけてくる

仕事の7-8割は同じことの繰り返しです。ずっと同じことを繰り返していると、疲れてくるんですよね。そんなふうに感じると、仕事を離れて2週間くらい旅行に行きたくなります。もちろんある程度の息抜きは必要ですが、日本を大きく変えていくなら、他者以上に努力をしなくてはいけない。そのためには我慢も必要だと思うんです。最小限の努力で最大のアウトプットを出すためには、常に動き続けなくてはなりません。疲れそうになると「それではダメだ。日本を大きく変えるんだ」ともう一人の自分の声が聞こえるんです。

ミスチル(Mr. Children)の『GIFT』という曲をご存知ですか。その中に「もうやめようか?」と自分に聞くと「まだ歩き続けたい」と返事が聞こえる、といった歌詞があるのですが、つらくなった時には、いつもこの歌詞を思い浮かべます。

本記事は2020年8月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
表紙写真: リンカーズ株式会社提供


リンカーズ株式会社について

BtoB領域のマッチングから商流介在、研究開発領域のリサーチ事業を主体に事業展開。マッチングと商流介在で得た情報をベースに、潜在力の高い企業を育成し、日本の産業を牽引する新たなハブ企業を創出することをビジョンに掲げる。

リンカーズ株式会社


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