リーダーの哲学

各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。


経営者インタビュー
ULSグループ株式会社/ウルシステムズ株式会社 漆原 茂 代表取締役社長

第4回 テクノロジーで、より良い未来を創る(ULSグループ株式会社/ウルシステムズ株式会社  代表取締役社長 漆原 茂氏)

第4回 テクノロジーで、より良い未来を創る(ULSグループ株式会社/ウルシステムズ株式会社  代表取締役社長 漆原 茂氏)
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さまざまな業界のトップに、経営に関する哲学をお聞きする経営者インタビューシリーズです。


第4回は、ULSグループ株式会社(JASDAQ上場企業)ならびにウルシステムズ株式会社の代表取締役社長である漆原茂氏のインタビューをお届けします。今、かつてないほどに経営におけるITやデジタルの重要性が叫ばれています。皆さんもきっと毎日のようにデジタル・トランスフォーメーション(DX)という言葉を耳にしていることでしょう。漆原氏が率いるのはDXを強力にサポートするエンジニア集団です。自らもエンジニアを自認する同氏に会社設立の経緯やエンジニアのマネジメント、今後の夢をお話しいただきました。


漆原茂 氏 / ウルシステムズ株式会社 代表取締役社長
1987年東京大学工学部卒業、沖電気入社。1989年より2年間、スタンフォード大学コンピュータシステム研究所客員研究員。帰国後、企業の大規模基幹系システムの開発を多数手がける。2000年7月、ビジネスと最先端ITの融合を目指してウルシステムズを起業、代表取締役社長に就任。2006年2月、JASDAQスタンダード上場。2011年10月よりULSグループ株式会社 代表取締役社長を兼任。シリコンバレーの最新動向に精通し、先端テクノロジーとベンチャーをこよなく愛するエンジニア。

匠のエンジニアが集う会社

幼い頃からITの魅力に取り憑かれていた私は、大学で計算機科学を学び、就職先にIT業界を選びました。大手IT企業に入社後はとにかく仕事が楽しくて、ひたすら没頭しましたね。大手顧客にたくさんのシステムを導入しましたし、海外の先進技術を日本に持ち込んだりもしました。スタンフォード大学にも留学させていただきました。今振り返っても、とても恵まれた環境だったと思います。

ただ、長年ITの世界に身を置くうちに、業界の現状に疑問を持つようになりました。大口顧客から受注した大型プロジェクトを大手IT企業が細かく切り分け、下請け企業にアウトソースする。プロジェクトに携わる大多数のエンジニアはお客様の顔を直接見ることなく、切り分けられた役割を黙々とこなす。これって楽しいのか?エンジニアの可能性を十分に引き出せているのか?と。

かつてシリコンバレーで見たエンジニアの姿は対照的でした。チームはたった数人。だけど、飛びぬけて腕が良い。彼らは持ちうる力をとことん発揮してお客様のために仕事をしていました。とても楽しそうでした。エンジニアのポテンシャルを最大限に引き出せば、もちろんお客様のためにもなる。あんな環境をつくれば、きっと面白いことができる。そんな思いが年々大きくなっていったんです。

かつて「大改造!! 劇的ビフォーアフター」というテレビ番組があったのをご存じでしょうか。様々な問題を抱えた家を一流のデザイナーがリフォームしていくんです。卓越した技術を持つ匠の手にかかると、家が見違えるように生まれ変わる。プロフェッショナルの凄さ、一人が持つ可能性を垣間見せるあの番組が大好きでした。
まさにITエンジニアの匠を集めた集団をつくりたい。そんな思いを実現したくてウルシステムズという会社を立ち上げました。

「やらないこと」を憲法に掲げる

「こうやれば、絶対上手くいく!」という確信はあったものの、大企業のサラリーマンエンジニアがいきなり社長になったわけです。最初はがむしゃらなだけで、私のせいで散々迷走しました。

現在につながるターニングポイントが訪れたのは創業3年目です。その頃になると、優秀な社員も50名以上集まり、お客様から大きな仕事を受注できるようになりました。その一方で、起業当初に描いていた理想への軌道から自分たちが逸れて始めているのを感じたのです。ベンチャーたるものはどんな案件も引き受けるべきという考えはありましたし、規模の拡大を重視していたのも否定しません。いつしか、無理をしながら仕事を引き受けるのが当たり前になっていました。その結果、仕事の品質が低下し、現場が疲弊するようになっていったのです。

ある日、はたと気づきました。「こうはなりたくない」と思っていた姿に近づいていないか。そこで、「当社はそもそも何をする会社か?」と原点に立ち返ったんです。当社のDNAを再確認し、DNAを守るために必要なことを考えました。その結果生まれたのが「自分たちがやらないこと」を明文化した10条の憲法です。例えば、「売上目当ての無理な受注をしない」という条文があります。現場のエンジニアをアサインしない限り、提案しない。十分な戦力を確保できなければ受注しても結果を出せませんし、お客様のためになりません。「役に立たないITは作らない」というのもあります。たとえお金をもらえても、自分たちの価値が出せていると確信できない仕事はしません。膨大なお金をかけて役に立たないものを作るくらいなら、プロジェクトを止めた方がいい。

経営者の仕事は会社を活き活きと健康に保つことだと言えるでしょう。健康のために何を食べるのか、どんな仕事をするかは重要な選択です。そこで、私たちのKPI(重要業績評価指標)から売上を全廃し、代わりに仕事の「中身」を設定することにしました。規模ではなく価値の高い仕事を重視する。優秀なエンジニアを投入して、フルコミットで成果を上げる。匠として末代まで誇れるような仕事をする。それを続けていけば、お 客様の数を無理に増やさなくとも、業績は後からおのずとついてくるんです。経営の足並みを揃えてから落ち着くまで数年かかりましたが、それ以後はとても堅調に業績も伸びています。人の成長が会社の成長そのものなので現場の活気も一層上がりますし、何より仕事をしていて楽しいんです!

「エンジニア」=「未来」

デジタル技術は使う人の心をより豊かにし、多くの人を笑顔にする力を持っています。エンジニアは誰もがそんな可能性に惹かれています。だから、エンジニアは未来志向なんです。「5年後、10年後、いや30年後かもしれないけれど、こんな未来を実現したい」「この技術を使えば、きっとこういう未来が来る」「目の前の難題を解決すれば、今よりもっと良い未来が訪れる」。そういうビジョンや挑戦にエンジニアはワクワクするものです。

これからのエンジニアは、技術を追求するだけでなくビジネスを理解しないといけません。だから、私たちはお客様がかなえたい夢やビジョンを聴く姿勢を大切にしています。お客様の魂に触れることは、自分たちの仕事をより良いものにするからです。社会を変える挑戦をしているお客様に出会った時には胸が高鳴ります。「これからの新しい社会はこうだよね」「こうすればもっと良い社会になるよね」といったビジョンを目の前にするとエンジニアとしての本能がうずきます。ましてや、エベレスト登頂のようなチャレンジに一人で挑もうとされているような状況なら到底放っておくことはできません。エンジニアとしてやれることがある。誰かの力になれる。未来を作るための重要な役割を果たせる。そんな仕事こそエンジニア冥利に尽きますね。

会社は、「個」の力を輝かせる「場」

〝挑戦″する人たちは、卓越した「個」の力を持っています。それはエンジニアでも、ビジネスサイドの方でも一緒です。所属組織や会社名、ブランドは関係ありません。つまるところは個人です。重要な仕事は「アイツとコイツがいれば良い仕事ができる」という「個」の看板で物が決まる世界です。会社はあくまでも「個」が活躍するための「場」でしかありません。どこでも活躍できる優秀な人物が集い、最高の仕事を面白がってさらに伸びていく。そうした「場」を創るのが経営者である私の仕事です。個人の個性を消す必要はまったくない。

当社には学ぶ意欲が強く、前向きで個性のあるエンジニアが集まっています。だから、あれこれとルールを定めたり、歯車のように機械的に動かしたりするようなマネジメントはしていません。ただ、10条憲法を見せて、「余計なことはしなくていい。良い仕事を楽しんでやろう。君たちはプロだから信じている」と言えばいい。あとは、皆自由にあるべき方向に進んでいきます。組織そのものはシンプルです。とにかくフラット。一つの単位が大きくなったら、横に分裂していく。いわばDNAコピーモデルです。できる限り、階層は深くしない。

この組織に重要なのは、同じビジョンと価値観で組織を引っ張れるメンバーを見つけることです。エンジニアには技術を追求したいスペシャリストが多い。その中で、組織マネジメントが好きな人材を見つけ出さなければいけません。誰でもいいわけではないんです。マネジメントに素質がある人材を見つけて、意図的にその役割につけないと機能しない。エンジニアにとってマネジメントの仕事は転職するようなものですから。

だからこそ、人材一人ひとりの素質を理解することが不可欠です。チームの役割分担が上手くいけば、会社全体のカルチャーが壊れることもありませんし、細かいマネジメントも不要になります。

楽しく、素直に

私のやりたいことはずっと変わりません。未来を創っていきたい。今、この世の中に存在しないものを創り上げる。それはもうワクワクしますよね。経営者が楽しそうにしていることは組織全体にとって重要だと思うんです。「世界の新しい未来につながるような仕事ができているか?」という問いが、組織運営をするうえでも、経営者としての自分にとっても大事な問いかもしれません。

本記事は2020年10月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。


ウルシステムズ株式会社について

ウルシステムズ株式会社は「戦略的IT」のリーディングカンパニーです。ユーザー主導開発™をコンセプトにした戦略的ITコンサルティング事業を展開しています。高い技術力と独自の知的資産を武器に、中立独立の立場でユーザー企業の発注力を強化します。製造、情報通信、公共、金融、流通サービス、旅客交通、情報サービス業を中心に、優良企業に対する数多くの実績を持っています。

ウルシステムズ株式会社


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