リーダーの哲学

各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。


経営者インタビュー
株式会社yoloz 片山由隆 代表取締役社長

第7回 「食」の価値を再定義することで、社会課題と向き合う

第7回 「食」の価値を再定義することで、社会課題と向き合う
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さまざまな業界のトップに、経営に関する哲学をお聞きする経営者インタビューシリーズです。
第7回は、株式会社yolozの代表取締役社長である片山由隆氏のインタビューをお届けします。新規事業開発やトップ・セールスマンとしてさまざまな業界・企業で顕著な実績を上げてこられた片山氏が、ビジョン一つで起業家に。量り売りの八百屋「HACARI(ハカリ)」や、農園直送のお野菜定期便「菜くる(サイクル)」、月替わりの旬の果物を使ったチーズケーキ「旅するチーズケーキ」など、yolozの展開する事業を通じて、人々の「食」に対する目線を変える挑戦を続けています。会社員経験の長い起業家社長ならではの仕事にかける思いをうかがいました。

片山 由隆氏 / 株式会社yoloz 代表取締役社長
ベンチャー企業、上場企業、外資IT系企業などで、営業職としてマネージャー、役員などを経験。植物工場事業開発関連企業で流通事業の責任者として数々のプロジェクトを手掛ける中、生産者の想いを消費者に届けることの必要性を実感し、2018年に起業。‍現在は、一次産業の支援や地域創生の支援事業を始め、D2Cのサービス開発などを行っている。
写真/市吉茉耶

世の中に貢献する事業をしたい

本当に世の中のためになるものは、究極のところ「なかったら困るもの」ではないでしょうか。たとえば、スマートフォンは、私たちの生活を便利に豊かにし、新たな価値を生み出したと言われます。でも私は、「スマートフォンがなくても特に困っていなかったよね?」と、スマートフォンのなかった時代を思い起こします。そう突き詰めると、私たちにとって「なかったら困るもの」は、衣・食・住のいずれかではないのか。中でも「食」の分野で世の中のためになる事業をしていきたいと思い、起業しました。

この「なくてはならない」食材を、多くの方がスーパーで買い求められていると思います。しかし、そこでの行動や「食」に対する姿勢を観察していると、「あれ? もしかしたら毎日の献立って"本日の特売"から決まっていっているのではないか」と感じる。言い換えると、多くの人が食材の「値段」しか見ていないのではないかと思ったんです。

私は東京生まれの東京育ちで、いわゆる「田舎」から、とれたての食材が送られてくるといった経験はありません。でも地方の「道の駅」や直売所などに行くと、そこで販売されている食材は、ものすごく美味しそうだし、販売員の方との会話も生まれ、一つひとつの食材が大切に育てられたことが伝わってきます。

写真/市吉茉耶

食材には、農家の方が真心を込めて作ったストーリーがある。こういう体験を首都圏でも提供できないか。産直野菜本来のおいしさを都会でも味わってほしい。そういう思いで、新鮮産直野菜を好きな分だけお買い求めいただける量り売りサービス「HACARI」や、旬な果物を使った「旅するチーズケーキ」をはじめました。

農業と消費者をつなぐ新しいプラットフォームを作る

世界を見渡すと、昆虫食が話題になるなど、人口増加による食糧危機が深刻な社会課題として掲げられています。日本はというと、農業人口の減少を背景に耕作放棄地が増え続けており、農業できる場所を有効に活用できれば、日本の農業生産量の回復、食糧自給率の上昇、さらには世界的な食糧危機解決に貢献できるかもしれません。

私の起業目的は、「野菜を売る」「量り売りを広める」ことではありません。「農作物や青果の流通・販売に、新しい道を切り拓く」ことです。農作物・青果を作ることで利益の出る適正な取引は、目下、スーパー等で販売される流通網が大半を占めていますが、なかには、独自に消費者との直販チャネルを持って高い収益を生み出している農家さんもあります。

しかし、耕作地面積の大小にかかわらず一定の元手を必要とする農業においては、買取保証もないまま独自の販売チャネル・決済手段で新たな道を展開していくことのハードルは高く、それもあって、農業が魅力ある職業ランキングになかなかランクインしてこない。私たちは、農家・農園の方と消費者との間に介在し、良い農作物は適正価格で取引がなされるプラットフォームとなることで、消費者の方にも農家の方にも喜ばれる新しい動きを作っていきたいと思っています。

写真/市吉茉耶

yolozの強みは、アドリブの企画実行能力です。人々がより興味を持って「食」と向き合えるような食育も行いながら、食材の価値を向上させ、消費者、農家の方々が共にハッピーになれる世界をつくることで、日本の農業の抱える課題や世界の「食」にまつわる課題の解決に、微力でも貢献できればうれしく思います。

イメージと異なる「社長」業

自営業の家庭で育ったからでしょうか。家族旅行は多くありませんでしたが、いつも自由に仕事をしている両親の姿を見て、誰かに雇用される職業は自由がきかないのではないか、サラリーマンにはなりたくないな、と中学生くらいの頃から思っていました。当時の私が抱いていた「社長」のイメージは、とにかく自由に自分のやりたいことをやっている人というイメージでした。

実際の私は「雇われの身」として働いた時期も長かったのですが、いざ起業して「社長」になってみると、イメージしていた「社長」像とは全然違いました。人事も広報も税務も経理も全責任が自分にある。十分な下調べもしないまま、描いたビジョンに突き動かされる形で勢いよく起業をしましたから、「こんな仕事もしないといけないのか」と改めて知ることも多く、てんやわんやでした。

もちろん、「どうしてこういう事業を誰もやらないんだろう?」といった疑問やジレンマからは解放され、自分のやりたいことを、権限などの制約もなく自由にできる点は、起業の大きなメリットであり喜びです。その一方で、会社の経営・運営を考えると、やらなければならないことがあまりに多くて、その多さに恐怖すら覚えることもあります(笑)。

「Why?」と「How?」から生まれる対話を育む

社長という立場になりましたが、社内でのコミュニケーションを取る時は、いつも「何をしたいの?」という抽象的な問いかけをします。命じられた役割をただこなすだけの仕事なら、それはただの「作業」でしかありませんから、一人ひとりが自分で考え、自分で行動できることを求めています。

写真/市吉茉耶

私自身もサラリーマン時代、上司には「これをやりますけど、いいですね?」という確認しかとってきませんでした。「これをやっても良いですか?」と判断を仰ぐようなコミュニケーションはほとんどなかったのではないでしょうか。

こうしたコミュニケーションの中で一番大切にしたいのは、「Why?」や「How?」から生まれる対話です。社内に限らずお客様との対話でもそうです。「どうして量り売りなんですか?」こういう問いが出てくれば、それはもうそこに興味・関心が生まれている証拠です。

その問いに「食材、捨てたことあるでしょう?」と返すと、共感が生まれ、目の前の食材だけでなく、私たちの事業や食材一つ一つが持つストーリーにも視線が向く。深掘りしていくことで、新たな気づきが生まれるのです。

yolozは都内の中目黒に「HACARI」の店舗を設けていますが、私にとっては、販売拠点としての位置づけだけではなく、こうしたコミュニケーションの生まれる場としても重要だと思っています。青果は、価値を伝えにくいジャンルですから、店舗を持つことには大きなこだわりがあります。

世の中に貢献する事業を作り、経済を回していく

写真/市吉茉耶

店舗の拡大、人員の増強、資金の調達、さまざまな方とのコラボレーションなど、やりたいこと、やれることのアイデアはたくさんあります。社長の仕事はビジネスを作ることだと思いますから、社長がいるから経済が回るんです。

社長業は大変ですが、楽しい。卒業することなど、考えたことはありません。そして事業をするなら、世の中のためになること、商品・サービスを通じて社会性のあることをして、会社の利益につなげていく。これが一番大切なテーマだと思っています。

本記事は2020年11月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
表紙写真: 市吉茉耶


株式会社yolozについて

"物語まで、うまい"をコンセプトに、食と農に関連する事業を幅広く展開。新鮮な産直野菜を量り売りする八百屋「HACARI」、旬の果物を使用した月替わりのチーズケーキを提供する「旅するチーズケーキ」、また、シェフのための調味料のサブスクリプションサービス「kakeru」などを展開し、生産者と消費者をつなげるような事業、プロダクト開発やプロデュースを手掛け、食への興味を創造する事業展開を行う。生産者のブランディングサポートや企業の食の課題へのコンサルティング、D2Cブランドの支援なども行っている。

株式会社yoloz


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