各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。
株式会社ギフティ 太田睦 代表取締役/鈴木達哉 代表取締役
第11回 二人でやれば成し遂げられないことはない
2021年06月28日
さまざまな業界のトップに、経営に関する哲学をお聞きする経営者インタビューシリーズです。
第11回は、株式会社ギフティの太田睦代表取締役・鈴木達哉代表取締役の2名へのインタビューです。株式会社ギフティは、日ごろの気持ちを気軽に伝える手段として、C to Cカジュアルギフトサービス「giftee」を提供する会社です。そのギフティのトップお二人に、リーダーシップや会社の存在意義についてお話を伺いました。
1984年生。慶應義塾大学総合政策学部卒業。2007年アクセンチュア株式会社にて公官庁の大規模開発業務に従事。2010年株式会社ギフティを設立、代表取締役に就任。
右:鈴木 達哉氏 / 株式会社ギフティ 代表取締役
1985年生。一橋大学経済学部卒業。2008年株式会社インスパイアにて大企業の新規事業支援やベンチャー支援業務に従事。2011年UXコンサルティング会社wacul社の取締役に就任。2012年ギフティ社の取締役に就任。2020年3月24日にギフティ社の代表取締役に就任。
代表者を二人置く
御社は代表者を二人置いていらっしゃいますが、二人の役割の違いは明確に決まっているのでしょうか?
太田 はい。ギフティは僕が2010年に起業した会社ですが、現在は僕と鈴木の二人が代表権を持つ形で経営しています。役割分担は明確で、僕が海外事業を中心に、鈴木が国内事業を管轄しています。
鈴木 もともと外からお手伝いしていたギフティに2012年に入社し、太田と共同代表という形で事業を進めることになったのは、僕の人生の中でも一つの大きなターニングポイントでした。今、太田は非常に多忙で、2018年にはマレーシアに現地法人を設立するなど、ギフティの海外向け事業を一手に引き受けてくれています。一方で、私がメインで国内事業を見て意思決定を進めているので、国内も海外もかなりスピーディに回せているように思います。それは二人体制を敷いていることの利点だと思います。
代表取締役として、お二人は今、何に一番時間を使っていらっしゃるのでしょうか。
太田 僕は家にいる時も、お風呂に入っている時も、ずっと事業のことを考えているんですよね。コロナ禍で日本から出られないから、一日の大半は経営関連のオンライン会議やマレーシアとのオンライン会議に参加しているし、打ち合わせの資料をつくったり、PRやIRに取り組んだりと、もう、自分の大半の時間は事業に向き合っています。それでも時間が足りない。
鈴木 僕の場合は、意識的に、自分の時間を、採用、M&A出資案件のソーシング、既存事業の管掌、そして新規事業の4つに割くようにしています。既存事業以外の3つにもっと時間をとりたいなとは思っていますが。
お二人が、代表取締役の仕事とは、要するに何をすることだと考えていらっしゃるか、教えていただいてもいいですか。
太田 上場会社ですから、株主・投資家の方とのコミュニケーションを取るといったように、いろいろな方との対話の機会があります。そうした時間は僕にとっても非常に大切ではありますが、役員としてということ以上に、創業のメンバーとして、創業に至った思いを発信し続け、その思いをどう具現化しているかを社員に対して示していくのも大事なことだと思っています。社員には皆それぞれ、仕事を通じて成長したいという思いがあります。そして、成長した先に追い求めているもの、中長期的に事業を通じて成し遂げたいことなど、それぞれにギフティに入社した動機があります。そんな中、僕は僕で、この事業のファウンダーとして、変わらず実現したいものがあるので、それが社員の向く方向と合致するといいなと思っています。
鈴木 僕の場合は、マーケットにおいて良いインパクトを長期的に最大化することが自分の仕事だと考えているので、最大化するための手段を選び続けたいと思います。僕が常々、社員に問いかけているのは「マーケットに向き合っているか?」ということ。
自社の利益に寄りすぎた見方をしてしまうと、長期的に見たときに長続きしないと思っています。「長期」とは、子どもの代や孫の代、100年くらいのスパンで見ていますが、そこまでの時間軸で見据えた上で、マーケットで一番ポテンシャルが発揮される形は何かということを意思決定の過程で問い直し、どこかの視点に偏りすぎないように意識しています。
太田 そこは僕も同じですね。海外事業においてはまだ日本ほど強固なネットワークが構築できていませんから、まさに最初の「0」から「1」をつくっているステージにあります。マーケットに向き合うこと、そしてそれぞれのクライアントから信頼を勝ち得ることができるよう、しっかりと実績を出して、関係を築くことに腐心しています。
リーダーシップのあり方
お二人は、どのようなリーダーシップを発揮されているとお考えになっていますか。
太田 リーダーシップと言えるのかはわかりませんが、僕は、みんなをぐいぐい引っ張っていくというよりは、自分の思いを行動に示し、それをトップダウンという形ではなく、各チームで試行錯誤してもらい形にしていくという感覚で事業を進めています。
自分の目指すところは創業時から変わらないので、旗振り役をするというよりは、そこに向けて進めていく上で起こるさまざまなチャレンジを、チームで一緒に乗り越えていく。そういうムード作りをするのが役割だとも思っています。
鈴木 確かに僕から見ても、太田は本当に「自然体であっていい」ということを、自ら一番体現しているタイプ。逆に言うと、他人からどう見えるかを意識した言動をとらないので、感じたことがすぐ顔に出たりもします。でも、そうした素直な感情表現が、社員が安心して働ける要素になっています。
また、僕から見ると太田には「とにかく結果は出るからついてこい」という感じがあります。周りにはしっかり任せるんだけれど、ちょっと不安な時やリスクが高いかなと迷ったら、太田は「自分が決めるから」という覚悟で見てくれる。そんな印象があります。
太田 いや、僕自身は、迷ったときには鈴木に相談します。相談がしやすい関係性ですし、相談をすると何かしら得るものがある。二人でやれば成し遂げられないことはない気がします。
鈴木 なかなか二人で、こうしてお互いの信念について話す機会はないけれど、普段からよく腹を割って話してはいたので、お互いの思いが変わらないというのをこうして確認できると安心します。いけるところまでいってやろうという気持ちになりますね。
創業から10年を経て、リーダーシップのあり方に変化を感じる部分はありますか?
太田 最近は社員の数が増えたので、特に入社初期の段階で、創業の思いを共有する場を設けるようにしています。コロナ禍で、対面でのコミュニケーションをとるのが難しくなっていますが、あえて仕事以外での場で会話をもちたいと、Slackでのコミュニケーションを取り入れて、意識するようにしています。
また、サービスラインアップの拡充に伴い事業部の数も増えてきたので、それぞれの事業部を横断して交流できるような場を作ることも大切にしたいと思っています。
鈴木 僕は、本来あまり積極的にプライベートなコミュニケーションをとりに行くタイプではないのですが、社員が増えたことで意識してコミュニケーションをとるようになりました。その際には、コンプライアンス的な意味で、相手の立場に立った発言を心掛けています。
太田 創業から10年やってきて社員が増えた分、最近はもっと丁寧なコミュニケーションが必要になってきたという意識の変化はあります。社員のバックグラウンドはそれぞれ異なるので、多様な視点から見ることを常に意識するようにしています。
とはいえ、コロナ禍でリモートワークが主体なので、コミュニケーションのあり方が本当に昔と大きく変わりました。でも、僕たちは変化に対する適応力がかなりあるので、常に最低でも70-80点出せる。これは強みだと思います。
ギフティのパーパス(存在意義)
提供: 株式会社ギフティ
会社として成し遂げたいことは何ですか?
太田 会社として成し遂げたいことは、創業当初から一貫しています。それは、eギフトを贈るという文化が定着すること。当社以外に、国内でここまでeギフトについて事業として向き合った会社は他にないと思うし、インパクトを与えうるレベルにまで成長できているのも当社だけだと自負しています。でも、まだまだ道半ば。国内だけでなく世界を見ても、まだこの文化が広く普及しているとはいえません。
人々が日常的に使うようになる、そんなeギフトの定着こそが目指す姿であり、実現したい世界観です。eギフトを軸として、人、企業、街の間にさまざまな縁を育むサービスを提供することで、温度感のあるつながりを増やし、キモチの循環を促進したい、と思っています。
鈴木 デジタルサービスはどうしても、「より安く」「より速く」「より便利に」といった効率性を求める方向に走りやすい特性があります。でも、ギフトと効率性は、相性が良くない。自分へのギフトが効率よく選ばれたと聞いて、嬉しく感じませんよね?
一方で、デジタルには「楽しい」「嬉しい」「驚きがある」といった、プラスアルファの感情を生み出すような使い方もあります。そういったポジティブなユーザーエクスペリエンスを創っていきたいと思います。eギフトは、気持ちを形にして伝える手段です。世の中には、ありとあらゆるモノが氾濫していますが、世の中で取り引きされていないようなモノやサービスが贈れるようになったら、もっと情緒豊かな社会になる。そう考えています。
会社のビジョン、ミッションの追求に向けて、ご自身に日々どのようなことを問いかけていらっしゃいますか。
太田 当社の行動指針の一つに「考え抜く、やりきる」を掲げていますが、自分の中で自分をしっかりと追い込めているかどうか、徹底的に思考できているかどうか、頭の中でもう一人の自分がそれを客観的にチェックしています。考え抜いておかないと、あとで必ずしわ寄せがくるということは、過去の経験からも強く感じているからです。難しいことですが自分にも、他のメンバーにもそれを求めています。
鈴木 僕の場合は、長期的な価値につながっているかどうか。日々さまざまな意思決定をしていく中で、どの時間軸で物事を見るかは、人によって違うと思いますが、代表の立場として、最終的な判断をするときに、長期的な価値につながるかどうかをチェックする。これを自分に問うように意識しています。
最後に、ギフティのもっているリソースにはどんなものがあるのかを教えてください。
鈴木 当社にとって、サービスをご利用くださっている個人・法人・自治体の皆様、さらには協力会社の皆様とのネットワークは大切な財産です。でも、当社の価値の源泉は、今140人にまで増えた社員です。当社には「営業」担当者はいません。一人ひとりが新しい開発・開拓をしていくという意識で働いているからです。
今あるものを世の中に広めていく社員、そして今はまだない隠れたニーズを掘り起こして具現化していく社員、そうした一人ひとりのメンバーによるところが大きいので、これからも人的リソースは拡充していきます。世の中がどう変わるか、どう変えていけるか。そういうことに誇りを感じる人に仲間になっていただきたいと思います。
お二人それぞれが、個性を活かしあって事業を前進させていることを強く感じます。本日はありがとうございました!
本記事は2020年10月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
表紙写真: 株式会社ギフティ提供
株式会社ギフティ
ギフティは、『eギフトを軸として、人、企業、街の間に、さまざまな縁を育むサービスを提供する』というコーポレート・ビジョンのもと、eギフトの発行から流通まで一気通貫で提供するeギフトプラットフォーム事業を国内外で展開しています。主力サービスは、カジュアルギフトサービス「giftee」、eギフトやチケットを発行し販売する「eGift System」、また、eギフトを活用した法人向けソリューション「giftee for Business」、の3サービスあり、個人、法人、自治体を対象に広くeギフトサービスを提供しております。
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